
先端がん医療の中核施設、千葉県がんセンター新棟オープン!
日本で3番目のがん専門病院として、1972年の開設以来、千葉県のがん医療の中心となってきた県がんセンター(千葉市中央区仁戸名町)。
このたび施設の老朽化に伴い、機能や利便性を強化した新棟を建設。
10月26日から稼働しています。
公開 2020/11/11(最終更新 2020/11/10)

編集部 R
「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。
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新棟建設によるリニューアルのポイント
10月10日、完成した新棟1階で竣工記念式典が開催されました。
森田健作知事や医療関係者など多くの来賓が駆け付け、祝いの言葉を述べました。
▲森田知事らによるテープカット
新棟の特徴
①医療・療養環境の充実
病床数を341床から450床に、手術室数や外来診察室数も増やしたことで、快適に治療を受けやすくなりました。
②先端的で高度ながん医療に対応
手術支援ロボットを追加し、先端医療に対応する機器・設備を新規導入しました。
③患者ファーストの施設やスタッフ
院内に点在していた相談窓口を患者総合支援センターにまとめ、患者サロンも新設しました。
▲患者総合支援センター
患者総合支援センターには10の面談スペースと6の個室があります。
看護師、医療ソーシャルワーカー、薬剤師などの専門職が患者やその家族に向き合って、ワンストップでサポート。
入院手続きから退院後のことまで、患者のさまざまな不安や要望に対応します。
先端的ながん治療・検査機器たち
もっと詳しく見ていきましょう。
館内を案内していただきました。
リニアック室
放射線治療を行う部屋です。
▲新規導入されたリニアック(放射線照射機)
▲機器が360度回転し、あらゆる方向から放射線を照射します
患者は約10分間、横たわっているだけ。
乳がんなど広範囲への照射が必要ながんにも対応します。
患者の位置がずれると高解像度カメラでリアルタイムに検出し、修正する性能も。
▲主に前立腺がんに運用予定の1台
新規導入された、これら2台に既存の1台を加えて、3台体制になりました。
アンギオCT室
これはエックス線を使って身体の断面を撮影するコンピューター断層撮影(CT)装置です。
▲写真右側の扉の向こうに血管造影室があります。
▲血管造影室に移動してきたCT
血管造影検査では、血管にエックス線が透過しない造影剤を入れて、血管や臓器の異常を調べます。
▲血管造影室
こちらの部屋では血管造影検査とCTが同時にできます。
CT装置を2つの部屋で行き来させることで、効率的に使えるようになりました。
稼働率が上がれば検査数も増やせるので、検査が必要な患者にとって朗報です。
核医学検査室
核医学検査とは、放射性医薬品という微量な放射線が出る薬を投与して、薬の動きを撮影する検査です。
▲新規導入されたSPECT-CT
▲PET-CT
従来の機種よりも画像の精度がアップし、撮像時間も短縮。
呼吸による画像のずれを減少させる機能も導入されています。
▲隣接する部屋で画像を解析
ハイパーサーミア室
ハイパーサーミアは「がん温熱療法」。
電磁波でがん組織を加温して治療するもので、放射線や抗がん剤の効果を高める治療法です。
▲ハイパーサーミア
公共の医療機関で設置している所は限られていますが、県民からの要望が高かったため、導入されることになりました。
過去には導入していた施設もありましたが、取材時点では県内唯一とのことです。
手術室
7室から10室に増えた手術室。部屋全体に映像システムが入っているので、手術をしている部位を映し出し、映像で共有できます。
スタッフステーションではカメラの切り替えにより、全手術室の様子を把握可能。
映像は一定期間保管し、生体モニター画像も保存されます。
▲窓が付いているのも特徴的
良質な療養環境を目指し新しくなったフロア
がん薬物療法センター
薬物療法は、以前は化学療法と言われていました。
それに免疫療法なども加えた総称のことです。
通院しながら、ここで薬物投与の治療を受けることができます。
新棟建設に伴い、30のベッド・19のリクライニングチェア・3つの個室の体制に。
点滴を5~6時間受ける患者が、リクライニングチェアで少しでも楽に過ごせるように配慮されています。
ハンディのある方やアレルギーのある方が主に使うことを想定した個室も3部屋あり、万が一急変などあったときは集中治療室(ICU)にすぐ移動できる作りになっています。
さらに特筆すべきは個室の中にあるシャワー台と洗面台。
これは「ぜひ作ってほしい」という衛生看護師からの要望で設置が決まったもの。
患者は退院後の日常生活に備えて、ここで洗髪などをすることができ、看護師は必要に応じてアドバイスをすることができます。
調剤室
調剤室は密閉された空間。金庫のような扉に閉ざされています。
室内にはカメラを設置。
事故が起こったときに検証できる体制になっています。
患者サロン・にとな文庫
薬物療法センターのすぐそばには患者サロン・にとな文庫があります。
※撮影時はオープン前だったので本はありません
待ち合わせや休憩に便利です。
病棟
病棟は5~9階にあります。
将来のがん患者増加に対応するため、病床数を341床から450床(緩和ケア病棟を含む)へ大幅に増やし、1床当たりの広さも1.2倍になりました。
A棟・B棟と2つの棟に分かれており、その間にあるラウンジが共通部分となっています。
▲ガラス張りの窓からの眺め
▲旧棟も見えます
旧棟のうち増築した比較的新しい部分は研究所や会議室に、それ以外は解体され駐車場になる予定。
続いて病室へ。
▲大部屋
検温などの記録は、ベッド脇に設置されたモニターに保存されます。
換気扇がベッド1台につき一つあり、おむつ交換時の臭いなどが広がらないよう配慮されています。
▲2部屋しかない1泊19,800円の特別個室
特別個室はシャワールームとトイレが別になっているのがポイント。
そのトイレのドアは、押しても引いても簡単に開く造りになっています。
▲衛生面に配慮してセンサーで水を流します
1階に戻り、この日の内覧は終了です。
患者ファーストで考え抜かれた設備や空間、そして最新鋭の医療機器を備えた新生がんセンター。
これから長きにわたって県民のがん医療の希望を支える存在であり続けることでしょう。