
社交ダンスの競技会で千葉県出身の鈴木佑哉・原田彩華ペアが準優勝の快挙
新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、競技会が相次いで中止となった2020年のダンス界。
プロ日本一を決める国内最高峰のプロ社交ダンス競技会「バルカーカップ統一全日本ダンス選手権」は、11月3日に無観客で行われ、ラテンアメリカン部門で千葉県在住の鈴木佑哉・原田彩華ペアが初の準優勝を果たしました。
コロナ禍に負けず、ダンスを追求し続けた2人に話をお聞きしました。
▼ バルカーカップ統一全日本ダンス選手権で準優勝!鈴木佑哉・原田彩華ペア
▼ 鈴木佑哉・原田彩華ペアのダンスへの想い
▼ ダンス歴20年!ジュニア時代からカップル誕生までの秘話
▼ ふたりの今後の目標は?
公開 2021/01/26(最終更新 2021/01/25)

橋本いくら
編集/記者。愛媛県出身。千葉の食べ物で一番好きなのはさんが焼き。完全に文化系のサブカル脳で生きてきましたが『リングフィットアドベンチャー』によって最近は筋トレに少しだけハマり中。でもツイッターが一番性に合います。★Twitter★@chiiki_ikura
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バルカーカップとは、国内のプロ選手(400組/800人)が、「プロダンサー日本一」を競う、国内最高峰のプロ社交ダンス競技会です。
昨年11月3日にグランドプリンスホテル新高輪「飛天」で21回目が開催されました。しかし、社交ダンス界にも新型コロナウイルスは大きく影響を及ぼしていました。
「試合は無観客で行われました。普段は観客の人たちからの声援があるのですが、それが全くない中での試合だったので集中しづらい面がありました。お客さんとの一体感や声援の大きさも、普段なら評価されるポイントのひとつでしたし」と話すのは鈴木佑哉さん。
この社交ダンスの業界全体での試合もしばらくストップしており、半年以上あいての久しぶりの試合だったそうで、その緊張感は普段以上だったのではないでしょうか。
また、例年は400組が出場するバルカーカップですが、今回は各部門で12組の選抜戦。それも昨年の12位までが出場できるというものだったと話します。
また、いつもは5回踊っていたのが2回しかなかったことも今回特有だったとか。
ほかにも「マスク着用」が義務付けられたのも、今年ならではだったそうです。
「普段、表情全体で表現するのですが、マスクをしていると口が隠れてしまいます。なので、必死で目を意識して演技しました。ほかにも、踊っているうちにマスクが上がってくるなどのアクシデントもありました」。
例年にはない、今年だけの特別な対策によって、思わぬストレスもかかってくることもあったようですが、鈴木さんと原田さんは、みごとに準優勝を勝ち取りました。
「スロヴェニアと韓国のコーチに主に見てもらっているのですが、そのコーチたちともオンラインでやりとりしました。準優勝をとり、「よくやった」とは言ってくれましたが、やっぱり優勝を目指してほしいと思っているだろうし、僕たちも目指したいと思っています」と鈴木さん。
とはいえ、「決勝戦に残って成績を残すことができ、子どもたちにも結果を知ってもらって次世代につながることがうれしい」とも話します。
社交ダンスという競技を続ける選手にとって、昨年春の自粛期間も大変な思いがあったのでは、と聞いてみると、「試合や教室がなかったので、基礎を反復練習し、積み重ねる機会となってすごくよかったです。いつもは海外に行ったり、ゲストで踊ったりなど結構忙しいのですが、そういったことがなかったので、アイデアもまとめることができて有意義な期間となりました。さっきも言ったように海外のコーチからもオンラインでアドバイスももらえましたし」と、あの時期すら好機ととらえ、ふたりで真剣にひとつずつ基礎を見直し積み上げていった様子がうかがえ、結果が実を結びました。
▲ラテン種目チャチャチャを踊る鈴木・原田ペア(写真提供/おどりびより)
鈴木佑哉・原田彩華ペアのダンスへの想い
「私が社交ダンスに感じている魅力は、カップルふたりでひとつの芸術を作ることです。社交ダンスはアドリブも結構あるので、カップルの密なコミュニケーションが大事だし、そこが楽しいところです」と原田さん。
鈴木さんは、「社交ダンスは僕にとってはコミュニケーションのツール。言葉がなくても、英語が話せなくても、国境を超えて分かり合うことができます。競技や演技でいえば、カップルダンスとしての魅力や美しさは、シングルとはまた違う魅力があります」と社交ダンスの魅力を語ります。
普段、プロの活動をしながら八千代市ほかさまざまな自治体で市民サークルなどに社交ダンスを教えており、社交ダンスは生涯スポーツだと原田さんはいいます。
「教えている人の最高年齢は70代。パーティでは90代の人もいるんですよ。「私はもう年を取っているから」とかいわずにぜひ飛び込んでみてください。社交ダンス界の中では50代なんてまだまだ赤ちゃん扱いです(笑)。70才からでも若いほう。別にヒールを履く必要もないし、ジャージでもいい。異性と踊るのが恥ずかしければ同性同士でもいいしシングルでもいい。ハードルを高く設定せず、気軽に始めてみるのをおすすめします」。
2011年から連載されているマンガ『ボールルームへようこそ』の影響で、30代で始めた人も多いそうですが、まず手始めには「ぜひ試合を見に来てほしい」と鈴木さんはいいます。「試合会場の雰囲気は非日常。不思議な世界に迷い込んだような魅力があり、絶対にハマると思います。そして一度自分が飛び込んだら、のめりこんでしまうはずですよ(笑)」。
「社交ダンスのステップさえ踏めればもうそれがダンス」と楽しそうに笑うふたり。それくらい気軽な気持ちで始めてみるのも、いいかもしれませんね。
社交ダンスのもうひとつの魅力は「全身が鍛えられる」こと。ほかのスポーツであれば筋肉がどこかの部位だけ発達するなどがありますが、社交ダンスはまんべんなく前進が鍛えられ、バランスのよい体作りができるそうです。
ダンス歴20年!ジュニア時代からカップル誕生までの秘話
船橋市大穴出身の鈴木さんと、福岡出身の原田さん。ふたりとも、社交ダンスとの出会いは7才だったそうです。
「僕はおばあちゃんのすすめで始めました。おばあちゃんたちの世代は社交ダンスブームだったので、祖父母が孫に社交ダンスを習わせるのは結構あった話です。小さい頃野球もやっていたので、本格的に始めたのは9才のころ。最初は姉(鈴木加奈さん)と踊っていました。今も姉も活躍していますし、弟(鈴木奨太さん)はアマチュア団体のラテンダンサーです」と鈴木さん。鈴木家の3兄弟は社交ダンス界の有名兄弟として知られています。
鈴木さんは小さい頃、人とコミュニケーションをとるのが苦手だったそうです。「今だからこそいえますが、そんなときの居場所がダンス教室でした。そのときにダンスは言葉がなくてもコミュニケーションができるものとして、僕にとっては心強い味方でした。「僕が誰か」なんて関係ない。ステップを踏めば誰とでもコミュニケーションがとれるツールでした」と鈴木さんは当時を思い出し、いかに社交ダンスが自分に寄り添ってくれたかを話してくれました。
「私は両親が北九州でスタジオ経営をしていて、ふたりともプロの選手だった流れで、社交ダンスは日常の一部でした。おばあちゃんもダンス愛好家でしたし。それで社交ダンスをもっと究めるために、高校から上京しました」と原田さん。
そんなふたりは、約8年前にカップルを結成します。「ダンスの先生の勧めで出会いました。グループレッスンを一緒に受けている仲間でしたが、お互いに当時のカップルを解消するタイミングだったこともあり、組みました」とその結成時を思い返します。
今はもう阿吽の呼吸ですが、たまには派手にケンカすることもあるそう。「競技バランスが難しいので、妥協にならないように言いたいことは言ってケンカしています。そうすることでクオリティが高まりますが、そのケンカを見た人があまりに激しくてドン引きすることも(笑)。でもそうすることで私たちはわかりあっているし、本心でのコミュニケーションを取ることが演技にも表れるので、しっかり話すようにしています」。
そしてふたりはやはりダンサーらしく、「そうはいっても言葉で話すより、踊ってみたほうがお互いのことがわかることがあります。踊ってみると、「言っていることと違う」ということもありますし」と、言葉とダンスで距離を縮め、しっかりコミュニケーションをとって演技を高みに押し上げています。
そんなふたりの気分転換方法は「愛犬の散歩」。「ケンカしていても、散歩には行かなきゃいけません(笑)。無言で散歩に出かけていても、歩きながらポツポツと話をして、帰ったら仲直りしていることもあります」と教えてくれました。
ふたりの今後の目標は?
「やはり日本一になりたいです」と鈴木さん。そして、海外でも上を目指して活躍したいと抱負を語ります。また、そのほかにも「子どもたちにも社交ダンスを楽しんでおらいたい」という夢も。「社交ダンスはアマチュアも魅力的ですが、プロの魅力も伝えていきたいと思っています。ぜひ今のジュニアたちにはプロになって活躍してほしい。いい選手が出てくるとダンス界も盛り上がります」。そんな気持ちもあり、今でも公民館などで熱心に指導している鈴木・原田ペア。
自分たちの長所である「派手なパフォーマンスではなく、シンプルでありながら、存在感のある社交ダンス」を突き詰めつつ、次世代の社交ダンサーの育成にも打ち込んでいくふたりの、今後の活躍にも大注目です。
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