
大家族FP 横山光昭さん&関口博美さんに聞く「子どもの教育費」
雑誌やテレビなど、各方面で活躍する敏腕FP(ファイナンシャルプランナー)の横山光昭さん。
プライベートでは6人のお子さんを持ち、奥さまの関口博美さんも現役FP。お金のプロであるお二人に「子どもの教育費」についてお聞きしました。
公開 2021/03/03(最終更新 2021/03/12)

編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へ全員参加! 家族マネー会議
横山家のお子さんは、社会人から小学生までの6人。長女は、私立の中高一貫校から理系の大学へ、次女は公立校から文系の私大へ進学するなど、きょうだいそれぞれ違った進路を選んでいます。
「実はわが家は子どもの教育に関しては『雑』な方でして(笑)。全然教育熱心な家庭じゃないんですよ」と笑う横山さんご夫妻。
習い事でも進路でも、親があれこれ口を出すのではなく、すべてお子さんが自分で考え、選んでいるのだそう。
その背景には、月に1度開かれる「家族マネー会議」があります。
家族マネー会議とは、家の収入、支出を開示し、お金の使い方について家族全員で議論するというもの。
「長女が8歳くらいの時、夫婦で家計について話をしていたら、そばにいた長女に『保険ってなあに?』と質問されたんです。子どもにしてみたら、目に見えないものに1万も2万も払っていることが不思議だったんでしょうね。でも、そんな子どもならではの着眼点に感心して、ならば家族全員でオープンにお金の話をしていこう、となりました」
会議では家計をつまびらかに話すので、子どもたちもお金のありがたみを自然と実感するように。
そして、欲しいもの、やってみたい習い事があればこの場でプレゼンし、家族全員から承認をもらいます。
もちろん横山さんと関口さんも同様。一人でも納得しなければ、とことん話し合います。
「長女が私立中学への進学を希望した際、『なら私は公立に行くから塾に通わせて』という意見が次女から出ました。きょうだい平等にしよう、ということですね」
結果、学費がかかる分、塾は我慢するという条件で長女は私立へ。そんな姉たちに倣って、下のきょうだいたちも進路や習い事を真剣に考えるようになったそうです。
何より大事なのは本人のやる気
横山家が進路や習い事について、最も重視するのは「本人のやる気」。なので、習い事をサボり始めたら黄色信号。
続ける意思があるのかを確認し、ないのならすっぱり辞めてしまいます。
ちなみに、子ども1人当たりにかける金額の目安を聞いたところ、「上限を設けると、会社の予算と一緒で『めいっぱい使わなくては』となってしまい危険。それよりも、本人のやる気の度合いと家計の状況を見て、都度検討していくのがお勧めです」とのこと。
▲家族マネー会議の様子。昨年は特別定額給付金の使い道もテーマに。ステイホームでかかった光熱費を給付金から一部負担してくれた子もいたのだそう
子どもにはいろいろな経験をさせてあげたいという親心から、教育費は青天井というご家庭も多いかもしれません。
しかし、教育費で貯金を使い果たし、老後資金の蓄えがなければ、かえって子どもの負担になってしまいます。
「進路にしても習い事にしても、周囲の子どもたちがみんなそうだからという理由で気軽に決めるのは、家計にとっても子どもにとっても得策ではありません。ちょっと立ち止まって、実際どのくらいの支出が発生するのか、今は良くても将来無理が出てこないか、などをよく考えてみましょう。そして何より本人の意思。本当にやりたい事ならば、家計の無駄を見直して、万全の体制で応援してあげて!」
私立? 公立? 学費の心配に備えるには
最近では、中学受験をする家庭も増えてきました。ですが、私立の中高一貫校に通わせるとなると教育費は一気に膨れ上がるのでは?
「国による『高等学校等就学支援金制度』は、私立にも適用されるので、世帯年収910万円以下ならば授業料は実質無償となります。残念ながら中学校3年間の授業料についての支援金は現段階ではありませんが、その間は塾に通わないという選択も。例えば、公立中学に進学し、塾に通う場合と比較してみて、どの程度かかる費用に差があるのか、一度確認してみるといいかもしれませんね」
なお自治体によっては、高校の授業料について独自の支援をしているケースがあるので、住んでいる地域の内容を一度確認してみるのもひとつとのこと。
また、「私立校の学費は一律ではないので、学校によってさまざま。中には、年間100万円以下の学校もありますので、いろいろ調べてみるといいですよ」と続けます。
そして、教育費がピークを迎えるのが大学入学後。平成29年度文部科学省調査によると、4年間の学費平均は、国立大学で242万円、公立大学で254万円、私立文系で396万円、私立理系で539万円、私立医歯系で2337万円と驚くほど高額。
「大切なのは、進路を考えるときに、学費についてもきちんと子どもと話し合っておくことです。日本学生支援機構の奨学金もきちんと仕組みを理解して利用すれば、悪くない制度。わが家の場合は、奨学金を借りるのと、アルバイトで学費を一部負担するのと、どちらがいいかを本人に聞きました。長女も次女も後者を選び、頑張ってくれました。もちろん学業優先なので、できる範囲の金額でしたが、そうやって少しでも学費を自分で負担することで、大学生活の向き合い方も変わると思います」