コロナ禍の中、医療従事者への感謝の念は尽きません。
その手元で活躍する医療機器。
改めてその歴史をたどることで見えてくるものがあります。

公開 2021/04/08(最終更新 2021/04/08)

世界的価値のある資料館が印西に
印旛医科器械歴史資料館は2007年、前身の青木記念医科器械史料館を印旛村が誘致して開館しました。
現在は印西市立の資料館として1000点を超える豊富な資料を所蔵する、世界的に価値ある資料館となっています。
展示スペースは分野(心臓関係など)や用途(レントゲンや手術台など)別に10のテーマに分類されています。
それぞれパネルの説明が付いていて、使用された年代や作製国の情報、使用状況などが分かります。
大きな器械は見る角度を変えて間近に見学でき、注射針など小さなものはガラスケース内に豊富に展示されています。

今回は現在のコロナ禍を反映して、感染症と医療機器発展の関連性について、そして同館の焦点の一つである日本医療関連の2つに注目。
監事兼資料館業務主任の山沢宣行さんの案内で見学しました。
感染症ポリオが人工呼吸器を発展させた

資料館には1952年スウェーデン製の器械が展示されており、人工呼吸器の開発にまつわる歴史的展開がパネルで紹介されています。
この展示によるとウイルス感染症であるポリオは1930年から20年以上にわたり世界的に大流行し、この疾患による呼吸不全を治療するために普及していったのが人工呼吸器でした。
当初は、応急処置のために手術室から持ち出して対応した旨が説明にあり、切迫感が伝わってきます。
感染症流行という危機が医療機器を改良させ発展させていったことが過去の事例から分かります。
展示が示す日本医療の進展

江戸時代、華岡青洲は世界に先駆けて全身麻酔による乳がんの手術をしました。
その手術道具のレプリカは生々しくその業績を伝えます。
また「人工心肺の歴史」というパネルによると、「日本は世界に劣らず1956年には人工心肺装置を使用して手術に成功している」とあり、山沢さんの説明によれば大阪大学での臨床実績であったようです。
パネル「人工腎臓の歴史」から医療機器の進歩と戦争との関係も学べます。

展示物である国産初の顕微鏡(大正時代)は、第一次世界大戦混乱後に実現し、パネル「第二次大戦後から現代への麻酔」や、レプリカ展示物国産第1号の麻酔器が示すように、医療機器は第二次世界大戦後に、急速に発展しました。
人の命と真摯に向き合って発展してきた医療機器の歴史から多くのことを学べる同資料館を訪問してみては。(取材・執筆/YY)
印西市立印旛医科器械歴史資料館
住所/印西市舞姫1-1-1(北総線印旛日本医大駅徒歩4分)
開館日/月・水・金曜日 午後10時~午後4時、毎月第1月曜日に説明員が駐在
入館料/無料
問い合わせ/ 03-3813-1062
一般財団法人 日本医科器械資料保存協会