
ワクチン情報サイト「こびナビ」~千葉大医学部卒の医師らが立ち上げ運営
COVID19ワクチンの接種が医療従事者から始まっています。
コロナ終息へ期待がかかる半面、ワクチンへの不安から接種をためらう人もいます。
そこで千葉大医学部出身の医師らが中心となって、専門的なワクチン情報を分かりやすく伝えるサイト「こびナビ」を立ち上げました。
公開 2021/04/19(最終更新 2021/04/22)

編集部 R
「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。
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▲吉村健佑医師
代表の吉村健佑医師(千葉大学病院次世代医療構想センター・センター長)はコロナ禍以降、千葉県の新型コロナウイルス感染症対策本部で重症患者の入院調整に携わる他、成田空港で海外からの渡航者の検疫など、水際対策にも従事しています。
▲コロナ流行以来、最前線でCOVID19の猛威と向き合ってきた吉村医師
2020年末から年明け1月、感染の第3波が到来します。
1日あたりの感染者数が500人を超え、県内の病床は次々に埋まっていき、入院調整や水際対策だけではもう限界…という状況にまで追い詰められました。
そんな中、海外から、医療従事者のワクチン接種が始まったというニュースが飛び込んできます。
「コロナ終息に向けて希望が見えてきた」と喜んだ吉村医師でしたが、周囲に話してみると、ワクチンに対する考え方に温度差を感じました。
「よく分からないワクチンを体内に入れるのは怖い」という人が予想以上に多かったのです。
メディアによる否定的な報道の影響もあり、医療従事者ですら接種をためらうほどでした。
吉村医師は、この状況に危機感を抱きます。
不安の根拠がsns上の噂レベルのものであっても、分かりやすく刺激的な説ほど簡単に広まってしまうからです。
ただ、その情報が不正確かどうかを一般の人が簡単に判断できないのも事実。
英語で配信される最新情報や新しい学術論文などを読解し、正誤の判断をすることは、かなりハードルの高い作業といえるでしょう。
そこで「専門知識を持つ人間が、正確な情報を分かりやすい形で発信しなくては」と考え、医療関係の仲間や後輩に相談しました。
すると、「それは絶対に必要ですよ」「吉村先生がやるなら一緒にやります」と協力者が集まり、千葉大学医学部卒業生などを中心に7人の運営メンバーでワクチン情報サイト「こびナビ」を立ち上げることが決まりました。
1月末に打ち合わせをし、2月7日からスタートしています。
「こび」はCOVID(コビッド)(コロナ感染症)から、「ナビ」はナビゲーションの意味。
「コロナワクチンの正しい情報を分かりやすく伝えたい」という思いを込めました。
運営メンバーの他に、20人以上の協力メンバーもいます。
医師だけでなく看護師、弁護士、IT関係者、学生なども加わり、それぞれの立場から運営をサポート。
サイトの開設や更新もメンバー間で行っています。
2月初旬に開設した「こびナビ」は、3月23日時点で既に38万回以上閲覧されています。
接種しない場合のリスクも想定し判断を
こびナビでは、ワクチンの仕組みを易しく解説した動画や、海外で既に接種を済ませた人の体験記、Q&Aなどを見ることができます。
▲Q&Aのページ。「+」をクリックすると…
▲分かりやすい説明や図解が現れる
実は、こうした解説ページは厚生労働省のHPにもあります。
ただし、大きな組織になると内容の承認などに時間がかかったり、表現に制限がかかってメッセージが伝わりにくくなるなどの難点が。
そこをカバーするため、日々飛び込んでくる新しい情報に即対応できる専門家「個人」がサイトを作って発信しよう…という考えから生まれたのが「こびナビ」なのです。
あくまで個人としての活動なので、吉村医師をはじめ各メンバーは、それぞれの所属組織とは無関係の立ち位置で参加。
海外在住のメンバーもおり、オンライン会議がメインで、一度も全員で直接顔を合わせたことがないのだとか。
最新情報の共有や意見交換はスラックというSNSツールを使って行い、サイトへの反映がスピーディーに行われています。
「こびナビ」の今後の方向性
現在サイトには、日本に入荷予定であるファイザー社とモデルナ社製のワクチンを基にした動画がアップされています。
▲運営メンバーの岡田玲緒奈医師による解説
今後はこの二つとは少し形式の違うアストラゼネカ社のワクチンも入ってくる可能性があるので、こちらに対応した動画も作っていきたいとのこと。
また、「100歳超えの人にワクチン接種は必要ですか」といった質問も寄せられているので、高齢者に向けたコンテンツも掲載予定。加えて、「自分はいつ頃どこで接種ができるのか」「接種にあたってどんな準備をしたらいいのか」といった実用的な情報も充実させていきたいそうです。
解説のページとは別に、こびナビでは接種体験記のコーナーも重視しています。
現在は海外の医療従事者の体験記がほとんどですが、国内での接種が始まり、2回接種を終えた人が増えてきたら、どんどん追加していきたいとのことでした。
▲新型コロナウイルスワクチンを海外で接種された方々の想いをポスターで表現
一部の人を除き、ワクチン接種は努力義務となりますが、実際に打つかどうかの判断は各個人に委ねられます。
「いざ自分が接種対象になったときの判断材料としてこびナビを活用し、納得した上で接種してほしい」と吉村医師は言います。
目標は、と尋ねると、「接種が進み、一つの目安ですが人口の7割が接種し、集団免疫を獲得することは重要かと思います」と話してくれました。
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