10月は乳がんについての正しい知識を広め、乳がんの早期発見・早期治療の大切さを伝える「ピンクリボン月間」。
新型コロナウイルスの影響で乳がん検診の受診者数が例年より減っている今、どのように自分や家族の健康を守ればよいのでしょうか。
●お話を伺ったのは…
丹黒 章(たんごく あきら)理事長
公開 2021/10/06(最終更新 2021/11/05)

目次
検診での感染リスクは低いので安心を
最初の緊急事態宣言が発令されたのが2020年4月7日。
それによって対策型(※1)の乳がん検診が各地で中止になり、受けたくても受けられなかった状況でもあったわけですが、その年の秋の調査では検診実施率が例年の5〜6割という結果でした。
任意型(※2)の受診率はもっと下がったのではと推測しています。
※1・2 自治体など公共政策として行われるのが対策型。人間ドックなど個人の判断で行われるのが任意型
その緊急事態宣言解除前に厚生労働省から指針が発表されたのを受け、2020年7月、日本乳癌検診学会からもコロナ禍においても安全に乳がん検診を実施するための「乳がん検診にあたっての新型コロナウイルス感染症への対応の手引き」を発出。
以降随時更新し、学会ホームページでご案内しています。
検診施設では感染症対策を入念に行っており、検診での感染リスクは極めて低いとのこと。
安心して受診してください。
なお、コロナワクチンの接種は肩への筋肉注射なので、接種側の脇の下のリンパ節が腫れます。
この変化は乳がん再発時にも同様に起こるものなので、乳がん治療中の方は反対側の腕に接種する、乳がん検診を受ける方はワクチン接種から間隔を空け、検診時に接種を申告するなどしてください。
検診は命を守るもの 不要ではありません
コロナは確かに怖いですね。
しかし、手洗い・うがい、マスク着用、密を避けるなどの対策で「予防」が可能であり、現状わが国での死亡率は1%台です。
単純に数字だけで比較すれば、がんは今、2人に1人がかかるといわれ、死亡率は30%以上。
しかも、かからないようにする「1次予防」は極めて難しいものです。
なので「2次予防」=早期発見・早期治療、つまり検診を受けることは命を守る大切な行為です。
がん検診はコロナ禍で「不急」かもしれない、けれど決して「不要」ではないのです。
乳がんは女性がかかるがんの中で最も多く、罹患率も亡くなる方も増えている一方で、検診受診率は伸び悩んでいます。
何より、仕事や子育て真っ盛りの40〜50代が検診を受けにくい現状が懸念点です。
そこで、早期発見に重要なキーワードが「ブレスト・アウェアネス」。
これは、いわば「乳房を意識する新しい生活様式」です。
自分や大切な人をコロナの感染拡大から守るための「新しい生活様式」同様、ご自身はもちろん、乳がんで命を落とす人や悲しむ人を減らすために、自身の乳房の状態に日頃から関心を持ち、40歳前でも乳がんの家族歴がある方や変化に気付いたらすぐ医師に相談を。
そして40歳を過ぎたら必ず乳がん検診を受けましょう。
ブレスト・アウェアネス(Breast Awareness)とは
ブレスト・アウェアネスは「乳房を意識して生活する習慣」のこと。
女性が自分の乳房の状態に日頃から関心を持つことにより、乳房の変化を感じたら速やかに医師に相談するという、正しい受診行動を身に付けるためのキーワードです。
ブレスト・アウェアネスの普及が、女性の健康意識の熟成と乳がん検診を受診する動機付けとなり、社会全体として国民の乳がんの理解に発展することで、乳がん死亡率減少効果をもたらすと期待されています。
4つの基本行動
1.自分の乳房の状態を知ること(見て、触って、感じる「乳房チェック」)
2.早く乳房の変化に気付くこと(しこり、皮膚のへこみ、血性乳頭分泌など)
3.乳房の変化に気付いたらすぐ医師に相談すること
4.40歳になったら2年に1回、乳がん検診(マンモグラフィー検診)を受けること
自己触診(セルフチェック)との違い
乳房の自己触診(セルフチェック)は一般女性には荷が重く面倒に思われ、正確に実践できる女性も少ないと考えられます。
ブレスト・アウェアネスは自己触診ではなく、乳房を意識して、乳房の変化に気を付けて生活することです。
着替えや入浴、シャワーなどの際に、乳房を見て、触って、感じて「いつもと変わったところはないかな」という気持ちで気軽に「乳房チェック」をする生活習慣を身に付けましょう。
ブレスト・アウェアネスによってできること
1.自分の乳房への関心を高めること
2. 自分の乳がん発症リスクや乳房の状態を知ること(血縁者に乳がん・卵巣がんの人がいる、高濃度乳房(デンスブレスト)である、など)
3. 乳がん検診の大切さ、利益と不利益を理解すること