文部科学省の学校基本調査によると、通信制高校に在籍する生徒は5年連続で増加しており、ここ2年は連続で過去最多を更新しています。

新型コロナウイルスの影響で学習環境が変化する中、多様な学び方を望む生徒の選択肢として広がりを見せている通信制高校。そんな通信制高校を3年間で卒業するための支援を行う「通信制サポート校」をご存じでしょうか。

千葉県初の「eスポーツ科」を開設するなど、新しい形の教育に取り組む通信制サポート校・成美学園を取材しました。

成美学園eスポーツ科の先生と生徒

お話を聞いたのは…
成美学園代表取締役社長の酒井一光さん
■株式会社成美学園 代表取締役 社長 酒井一光さん

千葉県を中心に20校の通信制高校のサポート校を運営。
HP  https://seibi.net/

公開 2022/03/02(最終更新 2022/03/01)

広田 みずほ

広田 みずほ

埼玉県生まれの千葉県民。地域新聞社で広告の企画営業、編集部を経て現在広報担当。好きなものは東南アジアとハイボール。勝田台駅周辺の酒場放浪記を書きたい。★X(旧Twitter)★@tahirom2

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通信制サポート校とは?通信制高校との違い

通信制高校は、毎日登校する必要はなく、主に自宅などで個別に学習して高卒資格を取得します。

「自分のペースで学べる」「時間を有効に使える」といった理由から近年需要が高まっていますが、自学自習が基本となる通信制高校では、途中で挫折してしまう人がいるのも事実。

そこで、通信制高校に通う生徒を支援する場として、通信制サポート校が設けられています。

千葉県を中心に20校のキャンパスがある成美学園グループの通信制サポート校は、学校法人私立翔洋学園高等学校と提携しており、3年間で高卒資格を取得できるよう、学習面・生活面のサポートを行っています。

週5日登校するコースから1日だけ通うコース、個別指導コースなど、自分に合った学習スタイルを選べることが通信制サポート校の大きなメリットです。

自分のスタイルで高校卒業資格を取る

成美学園は、人間関係のトラブル、不登校や健康上の問題などを抱える生徒の居場所を作るために開校されましたが、最近は「自分のスタイルで高卒資格を取りたい」という生徒も増えているといいます。

代表取締役社長の酒井さんは「当学園では午前中に通信制高校のカリキュラムに沿った授業を行い、午後はeスポーツ・音楽・イラストなどのコース活動を行いますが、中には塾やアルバイトに行く生徒も。今はインターネットやSNSの普及で情報収集能力が上がり、自分で『どう生きていくか』を模索できる環境があるので、子どもたち自身の考え方が変わってきています」と話します。

多彩なコースがある理由

「中学時代に学校になじめなかったなど、さまざまな事情がある生徒には、寄り添うことから始めます。朝遅刻してきたら『よく来たね』と言い、来なければ電話をする。細かいケアをするため、クラスは25人以下の少人数制です」と酒井さん。

eスポーツや音楽のコースがあるのも、好きなことが学校に行くきっかけになればという思いから。

「これからは何かスキルを身に付けることが大切なので、時代に合ったコンテンツを柔軟に取り入れて、楽しく提供しています。卒業後の進路は進学が6割、就職が4割ですが、今後はフリーで活躍できる術も教えていく必要がありますね」

卒業後も世の中の変化に対応していけるよう、新しいことはどんどん導入していくという成美学園。

「将来的にはアバターで授業をしているかもしれませんね。既存のルールや固定観念にとらわれていると、その中でしか生きられなくなってしまう。『常に変化するのが当たり前』という感覚を持つことが重要です」

eスポーツ科ってどんなところ?

2021年度から成美学園に誕生した千葉県初のeスポーツ科。プロゲーマーの指導の下、ゲームの技術の他、世界で活躍するプロeスポーツ選手に必要なメンタルトレーニングや英会話なども学びます。

実際に蘇我校(千葉市中央区)でeスポーツ科のコース活動を見学させてもらうと、意外にもチームプレー。黙々とパソコンに向かうのかと思いきや、仲間同士で声をかけ合いながら練習していました。

教員の野口和樹さんに、どのような指導を行っているのかうかがいました。

――どうやってゲームの技術を上げるのですか?

スポーツと同じで、個人のトレーニングとチーム練習が基本です。

チーム練習では対戦ゲームの実戦を繰り返しながら、攻めや守りなど、役割の異なるキャラクターを試します。

そうすることで各自の得意不得意を知り、適材適所でチームワークを高めるんです。

野球のポジションのようなものですね。当然ポジション争いも起きるわけですが、健全なライバル関係というものも経験してほしいと考えています。

全国の高校生が参加する大会にも積極的に出場して、切磋琢磨し合っています。

――eスポーツ科の生徒は、全員プロeスポーツ選手を目指すのですか?

プロeスポーツ選手の他にも、ゲーム実況者や配信者になる道、ゲーム関係の専門学校へ進む道、大学に進学する道などもあるので、じっくり面談をしながら、3年かけて進路を考えていきます。

中には入学当初、人が大勢いる教室に入ることすら怖いという生徒もいたので、まずはゲームを理由に学校に来てもらい、ゲームを通して友達とコミュニケーションを取ることを大切にしてきました。

ゲームが好きな同世代の仲間と楽しみながら、それぞれのペースで将来の目標を見つけられるようサポートしていきます。

成美学園eスポーツ科の授業風景
共通の好きなものを介してコミュニケーションが円滑になるのだそう

親世代は全日制高校がスタンダードだと考えている方も多いかもしれませんが、今は通信制にもさまざまタイプがあり、人間教育に力を入れる学校も増えています。

一度学校見学や説明会に行ってみると、イメージが変わるかもしれません。

 

成美学園グループ

HP https://seibi.net/