成田に生まれ育ち、昭和から平成、そして令和の時代を、「日記」という形で残してきた日暮えむさん。
幼少期から創作の夢を追い続けた女性はいま、自身の記録にストーリーという命を吹き込み、エッセイ漫画家デビューに続き、出版という夢を実現させました。

公開 2022/04/04(最終更新 2022/04/01)

会社員から突然 開けた漫画家への道
「会社の昼休みに、受賞者発表の中に自分を発見して、信じられなくて!」。
3年前、インターネット上で行われたコミックエッセイの投稿コンテストで、入賞を果たした日暮さんは、当時を振り返り興奮気味に語りました。

小学3年生の時、担任の先生に日記を勧められてから現在に至るまで、絶えず日々の記録をつづっています。
成田市は利根川沿いの田園風景が広がる美しい地域で生まれ育ち、イラストを描くことが好きだった日暮さん。
漫画家という淡い夢を抱きつつも、一般企業に就職し結婚。
忙しい日々の中でも、ずっとイラストは描き続けていました。
日暮さんに刺激を与えたのは、美大卒でイラストレーターの息子・どん太さんでした。
「4年前、息子のタブレットで描いてみたら楽しくて! 話を構成するのと人物を描くのが好きな私、そこに背景を描き加えるのが好きな息子。一緒に作品を作ってみようとなりました」

原風景を鮮やかに、人物は生き生きと
SNSでハッシュタグを付けるだけという気軽さからコンテストに応募。
入賞で注目を浴びたことが出版との縁を結んだ「ひぐらし日記」は、自身の記録と記憶を基に描かれているだけあり、「えむ」をはじめとした実在の登場人物が生き生きとページを進めていきます。

日記以前の部分は、漫画のキャストでもある古い友人たちや両親、歴史に詳しい知人などに話を聞いて記憶をたどりました。
中でも今回、抜粋・再編集を行い出版となった曽祖母「としょさん」の話について日暮さんは、「この年になってとしょさんという一人の女性を見つめ振り返った時に、その愛の深さに圧倒され、彼女の一生を私なりに描いてみようと思いました」と話します。
そして、どん太さんが描く背景は懐かしく温かいです。
現地に赴いてインスピレーションを働かせながら想像を巡らし、今はなき風景をよみがえらせます。
古い電柱や建物を描き起こす工程は、箱庭を作る感覚だといいます。
「今はチャンスの間口が広がっています。一生は1回きり、年を気にせず夢を持ち続けることを大切にしてほしい」。
そう話す日暮さんの瞳は、少女時代のままのようにキラキラと輝いていました。
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