20年前から磁場逆転の地層を探してきた奥田さんの話を耳にし、一つの地層を追い求め一筋に歩んできた人生を思い描き千葉県立中央博物館を訪ねました。
しかし、予想は楽しく裏切られました。

公開 2022/05/06(最終更新 2022/07/28)

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東京生まれ。月の出ている日は必ず見つけて写真に撮りブログにアップする月大好き人間です。果物を食べながら、「この果物はどうやって生まれてきたのかな?」とすぐ考えるタイプ。ちなみにプロフィール写真は、以前記事作成のために撮影した栗の赤ちゃんです。
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チバニアンの申請者に名を連ねる奥田さん。
※チバニアン申請者とは市原市田淵の地層を「国際標準模式地」として登録するよう、国際地質科学連合に申請している22機関35名からなる共同研究グループ。
京都大学大学院生だった20年前に、ギリシャの露天掘り炭鉱に磁場逆転の地層を探しに行ったといいます。
崖の上から一人でロープにぶら下がり、地層のサンプルを採取。
しかし、苦労は報われず、「露天掘りの底がもう20m下まで届いていれば大発見だった!」と笑わせます。
京都大学の地学教室を選んだのは磁場逆転説の伝統があったからかと思いきや、「浪人中の成績で決めた」との意外な答え。
77万年前の最後の磁場逆転が地上露出した地層についても、専攻する花粉化石の世界では地質年代を知るための「時計」にすぎず、研究の本筋ではなかったと笑います。
就職も、磁場逆転の地層があるとにらんで千葉を選んだのではなく「偶然だった」との答えでした。
課題に取り組んでいたら開けた道
房総半島は太古の海底が50万年ほど前から陸化に転じた、古い地層以上に希少な世界有数の「新しい隆起地帯」。
最後の磁気逆転地層を含む地層が露出している可能性は確かにありました。
ただ、房総半島の地層は砂が多いので、自分が探す花粉化石は洗い流され残っていません。
チバニアンの地層が発見された10年前、すごいとは思いましたが花粉への期待は薄かったと振り返ります。
様子が一変したのは、チバニアンの地層が細かい泥と分かってから。
ないと思った花粉化石が奇跡的に含まれる可能性を知り、3年前からプロジェクトに参加しました。
花粉組成では77万年前と現在の森がさほど変わっていなかったと実証。
「次に磁場逆転が起きても、生命に与える影響は小さい」との未来への安心メッセージも、地層から読み解きました。
「夢を一筋に追い続け成功する人は、一握り。紆余曲折を経ながら成功に至るやり方もある」。
そう話す奥田さんの笑顔から、研究を楽しみつつ積み上げてきた遍歴の日々がしっかり伝わってきました。

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