1993年にスタートした「稲川淳二の怪談ナイト」は今年で30年目。
そんな稲川さんに怪談の魅力と自身の原動力をお聞きしました。
公開 2022/07/16(最終更新 2024/02/29)

編集部 モティ
編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB
記事一覧へいつの時代も、輪の中心にあるのは怪談
うちのおふくろ、怪談を話すのがうまくて。夏の夜、友達が泊まりに来るとよく怪談を聞かせてくれましたよ。落語や講談と違って、誰でも一つは話せるのも怪談の魅力。林間学校で先生が語る怪談、放課後の教室で誰ともなく始まる怪談…、人が集まればとにかく怪談です。だから私にとって怪談は、子ども時代の楽しい思い出とつながっているんですね。
夏だけじゃない、実は雪深い北国にもたくさんの怪談が残っています。昔は雪が降ると外に出られなかったから、じいちゃん、ばあちゃん、子どもたちが一つの部屋に集まって過ごす。そこで語られるのが怪談。「あー、おっかねえ」って言いつつもきっと何度も聞いている話で、怖いけどその時間が楽しい。どの時代も人の輪の中心にあるのが怪談なんでしょう。
年に1度の「怪談ナイト」ではこれまで480話もの怪談を語ってきました。全国の友人が「淳ちゃん、こんな話あったよ」って教えてくれるのですが、それだけでは怪談にならない。推理をする必要があるんです。「心霊探訪」なんて言ってるんですが、実際に現地に行って調べる。「これってこういうことじゃないか」って分かると、ゾーッとしませんか? 怖さの中に驚きや優しさ、懐かしさがあるのが「稲川怪談」の特色。単に出来事を話すだけでは面白くも怖くもありませんから。
さまざまな感情を呼び起こす稲川怪談
「怪談ナイト」の会場は、浴衣姿や仮装をしている方もいて本当ににぎやかで、お祭りさながら。誰かが驚いたら誰かがゲラゲラ笑う。怪談を通じて知らない人同士が仲良くなるんです。ワーッと歓声で迎えてくれるから、終演が名残惜しいんですよねえ。皆さんにまた会いたいなあという思いが、30年間続けてこられた原動力です。
怪談って、時代や文化を反映して変化するから廃れないんです。私も今年8月でいよいよ後期「交霊者(こうれいしゃ)」となりますが、若い時と75歳の今とでは語れる怪談はやはり違う。どちらが正解とかではないんです。年を取ると進化が止まるなんて言う人がいますけど、それは嘘。年齢が教えてくれることはたくさんありますよ。だからこそ、「今」を大事に、怪談を追求したいですね。
こちらの記事もおすすめ