市原・米沢の森にある築200年を超える古民家を「イドクボンガ」と名付け、再生。
文化や芸術を発信するギャラリーとして活用したいと奮闘する「上総アートミッション」の石橋則夫さんと白井忠俊さんに話を伺いました。

公開 2022/11/06(最終更新 2022/11/04)

米沢の森とイドクボンガとの出合い
白井忠俊さんは、「米沢の森で出合った蛇」をモチーフに絵画作品を制作するアーティスト。

米沢の森との出合いは、趣味のマウンテンバイクで走っていた時に偶然見つけたのがきっかけです。
この場所の保護・保全活動をしている「米沢の森を考える会」のことを知り、会の理念や代表の鶴岡清治さんの活動に感銘を受け、白井さんも同会に参加するようになりました。
その後、森の中にある1軒の古民家の存在を知った白井さん。
ここで野点を行ったらすてきでは…と、恩師であり茶道の流派・裏千家に精通している石橋さんに声を掛けます。
そうして、石橋さんが代表となり、古民家再生プロジェクトに取り組む団体「上総アートミッション」が発足しました。
古民家の名称「イドクボンガ」とは、「いどくぼさんち」という意味。
この古民家の元の主の屋号の「井戸久保」に由来します。
ちなみに「んが」とは、「●●さんち」を表す千葉の方言です。
日本文化のギャラリーと茶室の制作
「日本古来の文化というのは現代の明るい照明で見るようには作られていないのですよ」と話す白井さん。
障子を全て閉めると暗くなりますが、目が慣れてくるとぼんやりと明るくなります。

昼間ならこの明かりで、夜ならろうそくの明かりで屏風や襖を「座って」見るのが本来の鑑賞方法だと言います。
ギャラリーとして活用する際には、その様式を採用することもあるそう。
「襖や屏風の絵がろうそくの明かりにたゆたう様は、わずかだがそこに動きを見ることができるはず」と話す白井さんには、既にその様子が見えているようでした。
自宅にも茶室を持つ石橋さんはイドクボンガの奥座敷に茶室を作るため、壁を壊したり、専用の畳を職人に作ってもらったりしています。
細部にまでこだわる半面、多くの人にお茶を楽しんでもらいたいという思いから、客人には正座ではなく椅子に腰掛けてもらうスタイルにするそうです。

米沢の森の景観は素晴らしく、森の小径は風情があり、イドクボンガを一望できる古墳や、なぜか金毘羅様もあるなど魅力がいっぱい。
一般の人も参加できるイベントも数多く開催しているので、これから多くの人がその魅力を知ることでしょう。
(取材・執筆/案山子)