年末年始に我孫子市にて開催される竹灯籠のライトアップイベント「滝前不動新春竹宵(たきまえふどうしんしゅんたけよい)」。場所を変えながらも今回13回目を迎える恒例のイベントで、2022年12月17日(土)〜2023年1月9日(月・祝)まで開催されます。初日点灯式では地元アーティストによる音楽や舞踊の披露が行われ、最終の3日間には和太鼓演奏も。主催するNPO法人「住み良いまちづくり研究所」の代表・米澤外喜夫さんに、竹灯籠作りやイベントへの想い、見どころなどを伺いました。

公開 2022/12/02(最終更新 2023/12/31)

野中真規子

野中真規子

フリーライター歴20年。取手市出身。2021春に東京から我孫子市に移住し、手賀沼周辺の水辺や豊かな緑、遺跡、史跡、ユニークな個人商店などに囲まれた生活を満喫中。スパイスと魚影、日本語ROCK、RAP、民族的デザイン、音楽、祭り好き。https://makikononaka.com/

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地域の交流を深め、竹林からSDGsを考えるきっかけに

年末年始の24日間にわたり開催される「滝前不動新春竹宵」。地元で愛される不動堂「滝前不動」の境内や参道を、我孫子市で活動する「住み良いまちづくり研究所」のメンバーが制作した竹灯籠や、近隣幼稚園・保育園・こども園の年長児によるぬりえ竹灯籠など計500本以上の竹灯籠がカラフルに彩ります。

参道を彩る竹灯籠のライトアップ
参道を彩る竹灯籠のライトアップ

灯籠やオブジェに使われる竹は、手賀沼周辺で放置された竹林を整備し間伐したものを活用しています。米澤さんは「このイベントを地域の交流を深める場にしていただくとともに、竹林からSDGsを考えるきっかけにもしていただければ」と語ります。

NPO法人「住み良いまちづくり研究所」の代表・米澤外喜夫さん

もともとは貿易関係の会社を経営し、50歳でリタイアしたという米澤さん。「ゆっくり余生を過ごすつもりでしたが、暇が耐えられなくてボランティア登録し、さまざまな活動をしたのちに住み良いまちづくり研究所へ入って15年。8年前から代表になりました」

放置竹林による「竹害」防止と町おこしのために活動

住み良いまちづくり研究所は70名ほどのメンバーで構成され、今年で活動20年目になります。

工房で作業をする、住み良いまちづくり研究所の皆さん
工房で作業をする、住み良いまちづくり研究所の皆さん

「昭和30年代まで、竹は農機具、食器、かごなどを作る素材として活用されており、手賀沼周辺にもたくさんの竹林が残っています。しかし昭和40年代以降それらがプラスチックで代用されるようになり、今や竹の利用法といえば筍を食べるくらいになりました。地域の高齢化も進んだことから多くの竹林の管理が行き届かなくなり、放置されているのが現状です」

荒れた放置竹林
荒れた放置竹林。竹は5〜6年で成長が止まり枯れますが、地下茎からはどんどん新しい竹が生え続け、数年放置すればすぐにジャングル化し、他の樹木が生えなくなるそうです

竹は普通の樹木と比べて根を張る深さが30〜40センチ程度と浅いため、竹に侵食された土地は保水力がなくなり、根の下に水がたまって「竹なだれ」が起こる危険性も高いとか。昔は「地震のときは竹林に逃げろ」と言われましたが、今はそうともいえなくなってきているのです。

また現在、手賀沼周辺には240種類ほどの野鳥がいるといわれていますが、放置竹林では植物の光合成ができず、地面にカビが生え、虫がすめなくなります。食べる虫がいなくなれば野鳥も来なくなってしまいます。
「こうした「竹害」を防ぐために、私たちは放置竹林を伐採し、間伐した竹を使って作った竹灯籠をイベントで点灯しています。最初は手賀大橋で行われていたライオンズクラブの初日の出・炊き出しイベントに竹灯籠を貸し出したことがきっかけで、年末年始に竹灯籠イベントを始め、滝前不動での開催は4回目。毎年腕を上げるメンバーの美しい竹灯籠やオブジェは必見です!」

竹灯籠
竹灯籠つくりのきっかけは、米澤さんたちが大分県の臼杵市で開催されている竹灯籠イベントを視察したことだそう。年末に市内のお寺や神社14カ所やそれらをつなぐ古道に、企業や団体、町内会が提供した灯籠が飾られ、町おこしにもなっており、現在は熊本県や宮崎県など十数カ所の町に広がっています

多彩な舞踊や音楽、子どもたちによるぬりえ灯籠も見どころ!

2022年12月17日(土)に行われるオープニングの点灯式では、市内の日本舞踊家・若月仙之助氏による歌舞伎舞踊や、新田知栄さんらによる箏の演奏、アンサンブル・ルミエールによる合唱、B-Chordsによる演奏などが行われます。

また後半の2023年1月7、8、9日には、市内の和太鼓グループである我孫子河童太鼓、湖北台河童太鼓、つくし野麒麟太鼓の3団体が日替わりで演奏します。

アンサンブル・ルミエールによる合唱
昨年の新春竹宵にて、アンサンブル・ルミエールによる合唱

「今年から新企画として、フォトコンテストも行います。オンライン上で応募・展示ができ、金銀賞を受賞した方には長さ90センチの大型竹灯籠をプレゼント。先着30名の参加者には干支の竹灯籠をプレゼントします。

また市内の幼稚園・保育園の年長さんたちに描いてもらったぬりえ竹灯籠を、大きな竹のツリーにレイアウトして飾ります。子ども向けには「かぐやひめをさがせ!」というスタンプラリーも用意。竹林を楽しくめぐりながら、3カ所の竹の穴をのぞくことでかぐやひめの世界観をリアルで堪能でき、スタンプを集めるとお菓子がもらえますよ」

「かぐやひめをさがせ!」
「かぐやひめをさがせ!」の演出をちらっとご紹介。竹の穴をのぞくとこんなかわいいかぐやひめと出会えます。こうした工作も住み良いまちづくり研究所メンバーの方々の手作り。本物の竹林でかぐやひめの世界を体感できる、貴重な機会です!

竹を利用したグッズの販売や、地域教育の活動も

現在、住み良いまちづくり研究所では、放置竹林の伐採をはじめ、こうしたイベントの開催や、竹を利用したグッズの販売なども行い、豊かな竹林作りを目指して活動しています。

また地域の小学生を対象とした体験学習プログラム「手賀沼スクールヤード」にも協力。柏市、松戸市、流山市の小学生に対して、放置竹林の整備や竹灯籠作りなどの体験を提供しています。

手賀沼スクールヤード

手賀沼スクールヤード
11月に我孫子市の根戸城址で行われた「手賀沼スクールヤード」。柏市の小学6年生たちが放置竹林を見学し、竹の切断や竹灯籠作りを体験。ボランティアスタッフのサポートを受けながら電動工具も使い、いきいきと取り組む姿が印象的でした

竹林の放置が深刻な問題となっている今だからこそ、竹林や竹と楽しくふれあいながら、これからの環境について考えたり、未来に役立つ体験をしたりして、よりよい循環型社会をみんなで実現していけたらよいと感じました。

「いずれは滝前不動をはじめ、北柏ふるさと公園、根戸城址、船戸の森など手賀沼周辺のさまざまな場所で同時に竹灯籠を灯すイベントを開催するのが夢。全国的なイベントであるジャパンバードフェスティバルの日にできれば理想的ですね。今後もイベントを通して多くの方に竹の魅力を知っていただき、日本全国に竹林整備を通したSDGsの取り組みが広がっていくことを願っています」

「滝前不動新春竹宵」 https://www2.chiicomi.com/event/1974700/
会場/滝前不動(千葉県我孫子市岡発戸1271)
点灯期間・時間/2022年12月17日(土)〜2023年1月9日(月・祝) 16時30分~22時00分
点灯イベント/2022年12月17日(土) 16時30分〜18時(荒天中止)
和太鼓演奏/2023年1月7日(土)、8日(日)、9日(月・祝)16時〜(荒天中止)
料金/無料
駐車場/道が細く、駐車場も少ないので駅からの徒歩をお勧めしています。
アクセス/電車の場合:JR成田線東我孫子駅より徒歩約16分
問い合わせ/090-6503-2084(米澤)