1943(昭和18)年創業、千葉県船橋市馬込町で養鶏園を営む「奈良たまご」。
生食できる新鮮でおいしい卵を提供し、地元に愛され続けて80年を迎えます。
自家配合する栄養たっぷりの飼料、農林水産省が定めるHACCPシステムを導入した衛生管理、交流を育む地域に根差した直売所や販売活動など、安心安全を貫き地域活性に貢献する、こだわりの生産体制をご紹介します。
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公開 2023/01/26(最終更新 2023/12/26)

目次
生で食べておいしい!自家配合の飼料が育てる、自慢の卵
千葉県道8号船橋我孫子線(通称「船取線」)から住宅街へと入り、少し進むと「奈良たまご」が見えてきます。

1943(昭和18)年、船橋市馬込町にて創業した「奈良養鶏園」は、同市唯一の採卵養鶏場として畜産経営に携わり、その歩みは2023(令和5)年に80周年を迎えます。
3代目社長の奈良富士男さんと二人三脚で運営にあたる、奈良育子さんにお話をうかがいました。

「奈良たまご」のこだわりは、「生で食べておいしい本物の味」。
殻を割って現れる、いかにも力強く盛り上がったまん丸の黄身と、それを支える弾力ある白身!

素材そのものの味が自慢の卵、それを産むのは健康で元気いっぱいの鶏たちです。
奈良養鶏園では、富士男さんと先代の五十八(いそはち)さんが自家配合する飼料を鶏たちに与えています。
「季節に応じて、また、鶏さんたちの体調や産卵状況を見ながら毎週内容を変えてブレンドします」と育子さん。
主な原料はトウモロコシ、大豆、昆布、ガーリック、塩、酵素などの植物性素材。
抗生物質や人工着色料などを一切使用しない高品質の飼料は、50年以上前から奈良養鶏園が研究を重ねて作り続けてきたもの。
「ぜひ、卵かけごはんにして生で味わってほしい」と育子さんも笑顔を見せます。
「船橋たまご」に込めた思い。地域も、鶏も「元気」に!
2021(令和3)年5月に販売を開始した「船橋たまご」。

船橋産のニンジン、小松菜を飼料に配合しています。
市場に出せず廃棄処分となるB級品などを買い取って飼料に取り入れることで、鶏たちの野菜摂取量を増やし、地域の農家を支援する手立ての一つになれば、との思いが商品開発につながったといいます。
「この地域で長く畜産を続けさせていただいているので、なるべく地産地消に取り組み、何らかの形で地域に貢献できることをしていきたいと常に考えています」と育子さん。
ニンジンと小松菜は細かく刻んで乾燥・粉砕したものを飼料に混ぜ込むそう。
「鶏さんたちも好き嫌いをするので分からないように配合して、まんべんなく栄養を取ってもらうよう工夫しています」と笑う育子さんは、わが子について語るようにあたたかな表情です。

船橋たまごの黄身の色をご覧ください。比べるとよく分かる、鮮やかな濃い色合いです。
(左はアロウカナの卵。後ほど登場します)
見た目だけでなく味も香りも他種の卵を上回り、黄身は濃厚、白身は臭みが少なくスッキリとしているのが特長。(味香り戦略研究所調べ)
「鶏さんたちも元気が増し、産卵率は7割くらいから9割になりました」と育子さんはうれしそうに話します。
赤みがかった色合いは菓子製造にも適しているそうで、お菓子屋さんからの問い合わせも増えているといいます。
船橋市のふるさと納税返礼品としても人気の高い「船橋たまご」。
地域も鶏も元気に、という奈良養鶏園の思いは着実に実を結んでいます。
幸せの青い卵「アロウカナ」、お楽しみの「双子(かも)」
奈良養鶏園で育てるのは、大半が純国産の「もみじ」という品種の鶏卵で、こちらは赤玉。
もう一種類、その美しい殻の色から「幸せの青い卵」と呼ばれる「アロウカナ」をご紹介します。

南米チリ原産のこの品種は、エサに関係なく青色の卵を産むのだそう。
やや小ぶりですが、黄身は甘くコクがあり、白身はぷるんと清らかな味わい。生食がおすすめです。
店頭には「双子(かも)」という商品も!
奈良養鶏園では、毎日産み落とされる卵をひとつひとつ手作業で大切に集めています。
経験を積んだスタッフが手に取ると分かる、という「双子」。
私も購入したことがあります!

このときは、10個中8個が双子でした。
子どもたちは大喜び、私もわくわく楽しい経験ができました。
「実際に割ってみるまで分からないので、あくまで『かも』ですが…」とのことですが、いつもの料理の作業の中に、ひとつお楽しみが加わります。
店頭で「双子(かも)」に出合ったときは、ぜひ購入してわくわくを味わってみてくださいね。
全国初・農場HACCP認証農場に(個人養鶏部門)
生でおいしい、安全で新鮮な奈良養鶏園の卵の品質を実現している生産体制についてもご紹介します。
同園は船橋市馬込町の住宅街にあるため、臭い対策やハエの発生を抑えるなど、徹底した衛生管理に取り組んでいます。
鶏舎のこまめな掃除はもちろん、鶏ふんの除去作業は数カ月に一度ほどという養鶏場が多い中、奈良養鶏園では週に2回。
千葉県中央家畜保健所による衛生検査も定期的に行います。
また、同園では鮮度が長持ちする「無洗卵」を提供するため、ケージ飼い方式を採用。

「平飼い農場では、鶏さんたちが自由に運動できるメリットはありますが、ふんを踏んで足も卵も汚れるため衛生面では劣ります。当園ではゆったりしたケージの中、ある程度の運動も可能にしながら衛生面を保っています」と育子さん。
また、2017(平成29)年8月、奈良養鶏園は個人養鶏部門では全国初となる「農場HACCP(ハサップ)認証農場」に認定されました。
これは、農林水産省が定める衛生管理方法に適合する畜産農場に認証されるもの。
生産環境を整備し、従業員の衛生規範の順守と情報共有を徹底して図ります。
「通常業務をしながら、HACCP取得に向けて書類作りに取り組むのがとっても大変でした」と明かす育子さん。
「前年に農場HACCPの承認を受けた皆川牧場(船橋市鈴身町84の2)の皆川香理さんにいろいろと教えていただきました」と振り返ります。
地産地消を目指し、地域のつながりを大切にする直売所
農業に携わる女性たちの集まりで顔を合わせて以来の付き合いだという皆川さんとは現在も親交があり、奈良養鶏園の敷地内にある直売所では皆川牧場のチーズ製品を販売しています。

他にも、農家の食材を用いたお菓子を製造・販売する「8memoire(はちめもわーる)」の生菓子や焼き菓子も店頭を華やかに彩ります。

船橋市内で収穫される新鮮な野菜、果物、米や生花が並ぶ農産物直売所。
日替わりでキッチンカーも登場します。
そば粉のガレット、カレー、クレープ、ハンバーガー、コーヒーなど、船橋市内を拠点に出店する人気のキッチンカーは、直売所を訪れる地域住民の楽しみのひとつであり、憩いの場であるといいます。
長い歴史を誇る「ふなばし朝市」(一般社団法人船橋市観光協会主催)や、さまざまなイベントにも積極的に出店し、地域交流を図り、つながりを築きながら歩む奈良養鶏園。
完全栄養食品と呼ばれるほど滋養がある卵を、ぜひ奈良養鶏園の朝採れで味わってみませんか。
奈良養鶏園
住所/千葉県船橋市馬込町1161
営業時間/9時~18時
※日祝のみ9時~17時
定休日/水曜日
※敷地前に卵の自動販売機あり。24時間365日稼働中
駐車場/6台
電話番号/047-438-5489
HP/http://www.naratamago.com/
インスタグラム/@nara_tamago