創業当初からそのスタイルを変えない純喫茶が私たちの町にもあります。時を重ねて愛され続けるお店と魅力的なメニューの数々をご紹介します。
目次
食材とお客様に正直に。二代目マスターが守る純喫茶
【カフェテラス マウンテン(佐倉)】
京成佐倉駅北口を出て、北にまっすぐ伸びる緩やかな坂を上る途中に一軒の喫茶店が見えてきます。オレンジの瓦屋根に、「マウンテン」の文字のレトロな色合いが何ともかわいらしい。まさか、坂を上ってきたから「マウンテン」なのでは!!(マスター「違います(笑)」)
高い天井に、ステンドグラスのようなペンダントライトが印象的な店内。
(取材時は夕方だったため、日中もまた雰囲気がすてきに変わります)
人気メニューの一つであるナポリタンです。お皿の中央にうず高く盛られているのはまさか、店名「マウンテン」を意識してのことでしょうか!(マスター「私のフィーリングです!」)

※山を崩すと結構なボリュームです
パプリカ・玉ねぎ・ハム・しいたけが調和してやさしい甘さを醸し出しています。マッシュルームではなくしいたけを使用しているのは、日本人の口に合うからだとか。なるほど、歯ざわりよき食材の風味とシンプルなケチャップの酸味がたまりません。
創業42年のカフェテラス マウンテン。マスター(伊藤さん)、実は二代目とのこと。サラリーマンから転身してこの店を継いだのが4年前。先代の残したものを大切に、自身のこだわりも追求しながら店を回しています。昔からあるメニューはレシピに忠実に。そしておいしいものをおいしく出す、良い食材を正直に提供することが伊藤さんのモットーです。
続いては、つややかなビジュアルに引かれてオーダーの自家製プリン。

密度高くしっかりとした卵感にほろ苦いカラメルソースは黄金のタッグ。
おかげで次の一口が止まりません。
マスターが素材と向き合って仕上げる自家製プリンは、もっちり幸せな食感となり私たちを楽しませてくれます。添えられた生クリームとフルーツにちょこんと乗せられた「マカロンみたいなやつ」にも注目してくださいね。
「『これが名物メニューだ』!っていうものは特になくて(笑)、ピザトーストだったりクリームソーダだったり、お客様それぞれに好きなものを召し上がっていただいていますよ。コーヒーはサイフォンで入れていて、先代と変わらぬおいしさをお届けしています。どなたも思い思いにのんびり過ごしていただけたらいいなという思いで、私はここを『暇つぶし専門店』と名付けました(笑)」と、終始笑顔のマスター。そんな柔らかな空気が、この純喫茶の魅力の一つでもあるのでしょう。
カフェテラス マウンテン(創業42年)
住所/千葉県佐倉市宮前3-21-8
営業時間/9:00~17:00
休日/水・木曜
電話番号/043-486-0914
ママが丁寧に仕込むみつまめは絶品!成田山参道の純喫茶
【珈琲 チルチル(成田)】
成田山新勝寺の参道で歴史を刻んできた珈琲チルチルは、参道の坂を下って新勝寺を過ぎたところにあります。

こちらは創業50年を誇る純喫茶。店内に入るとアンティークな調度品たちが温かく迎え入れてくれます。

創業から店を守ってきた店主(ママ)がイチオシする喫茶メニューがこちら、ロイヤルミルクティー。色合いがすでに牛乳の濃さを物語っています。

少量の熱湯でしっかりと開かせた茶葉を牛乳で柔らかく煮出し、冷やしてから濾すという丁寧な工程を重ねた自慢の一杯。熱々をひとくちすすると、やさしい牛乳の甘さとともに茶葉のいい香りがふんわりと鼻を抜け、最後の一口まで甘い余韻が心をつかみます。
「暑い夏は涼しく、寒い冬は暖かく、店内でほっと肩の力を抜いて寛ぐひと時に一つお品をつけていただく、それが喫茶店の原点だと思うんです。だから私たちは長年この『空間』を大切にしてきました」とママは話します。
そんなママのおすすめ二品目は、自家製みつまめです。

透き通る寒天に乗せられた豆のつやつや感、たまりません!
(ちなみに私は撮影せずに食いついてしまったため、こちらはテイク2でございます・笑)
房州産の天草で作る、ほんのり海の香りをまとう寒天は独特な歯ごたえ。それぞれの特性ごとにじっくり時間をかけて炊き上げた白花豆・紫花豆・小豆・金時の4種の豆をたっぷりと寒天に添えていただきます。特製のみつはきび砂糖を使用。さらりとした甘さが全体を引き立てます。「白花豆は最後に食べてね」の意味深なママの言葉に従い口に含むと、甘さで緩んだ口の中を適度な塩気がきゅっと引き締めてくれます。しょっぱい豆!…なるほど。食感と味のバランスで、最後まで夢中になっていただきました。「注文したお客さん、みんな残すのはさくらんぼの種だけよ」と笑顔のママ。
「ここは、成田山新勝寺とともに歩んできました。参拝客の皆さんが立ち寄ってくださるのが本当にうれしい。だから私たちもダブルの喜びを与え続けられるように、この場所を守って行かなくちゃって思いますね」
珈琲 チルチル(創業50年)
住所/千葉県成田市本町333
営業時間/9:30~16:30
休日/不定休
電話番号/0476-23-1435
銀皿ランチが心をつかむ、地域に愛される純喫茶
【喫茶店カペー(印西)】
JR木下駅で下車し、北口ロータリーを出るとビルの1階に店を構える純喫茶の佇まいが見えます。

丸みがかったレトロないすで統一された店内。オレンジのぷっくりとしたペンダントライトもかわいらしい。外からは見えませんが、扉の向こうにはとても趣のある空間が広がっています。こうして、創業当初から変わらぬスタイルでお客様をお迎えしてきました。
創業54年という歴史を持つこの純喫茶は、クラシックを愛した創業者が当時好きだった「カペー弦楽四重奏団」にちなみ名付けたそうです。また、「いなかっぺ」の「カペー」もかけているのよとほほ笑むのは、先代からこの店を継いで切り盛りしている現在の店主。同じくクラシックが好きという店主の好みで、店内には心地よいピアノの旋律が流れます。
そんなカペーは、喫茶店というものの食事のメニューも豊富!
「食堂みたいだねってよく言われます」と笑う店主。このラインナップは納得です。

昔からの常連客が多いので、これこそが「人気メニュー」ということではなく、それぞれを固定のファンが支えているそうです。「だいたいみなさん2種類くらいのお気に入りをお持ちで、それを交互に召し上がるといった印象でしょうか」。
そんな目移りするメニューの中から、
私はずっと食べてみたかった喫茶店の生姜焼きをチョイス!

すり下ろしたたっぷりの生姜が自家製のたれを含んで柔らかい肩ロースに絡みつく、ご飯が止まらない一品。お肉は地元の精肉店から仕入れているとのことで、味の決め手となるたれととても相性のいい柔らかさ。一口で頬張れるサイズ感もいい。小松菜のみそ汁(具材は日替わり)がほっこりとした合いの手を入れてくれます。ん~!幸せ!!
「ロータリーができるまではこの辺は商店街でね、学校帰りの高校生がよく来てくれたものです」と、懐かしく当時を振り返ります。お昼時になると出前の注文も入るので、店主は大忙しで料理を仕上げ、おかもちを持って出かけていきます。
カツカレー(ミニサラダ付)850円
※実はどうしても食べたくて別日に再訪しました(笑)
食後のお楽しみ、喫茶メニューからは響きも懐かしいミルクセーキを注文。

カウンターの奥からカタカタと軽快な音が聞こえてきます。店主がシェイカーを振って提供してくれる、素朴な甘さのミルクセーキ。甘さの調節にガムシロップが添えられます。材料は牛乳・バニラアイスに卵黄と、シンプルだからこそ口に残るやさしいミルクの余韻。満腹の最終楽章に、至福の時間をもたらしてくれました。

喫茶店 カペー(創業54年)
住所/千葉県印西市木下1689 1階
営業時間/9:30~17:30
定休日/日曜・月曜・祝・年末年始
電話/0476-42-2005
HP/https://parquevista.com/tearoomcapet/