訪れた国や地域90以上、海外への旅は215回。

旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。

秋山秀一さん

秋山秀一さん
旅行作家、元東京成徳大学教授、NHK文化センター講師。日本旅行作家協会顧問理事、日本エッセイスト・クラブ理事、日本外国特派員協会会員。ちばぎん総合研究所発行『マネジメントスクエア』の連載「旅の達人が見た 世界観光事情」他、多数の旅行エッセーを執筆。鎌ケ谷市在住。鎌ケ谷市国際交流協会(KIFA)会長、鎌ケ谷市都市計画審議会会長。

 

スプリット
観光客でにぎわう列柱広場。正面は皇帝居住域への正面入り口だった

公開 2023/03/25(最終更新 2023/03/20)

編集部

編集部

千葉・埼玉県在住の編集メンバーが、地域に密着して取材・執筆・編集しています。明日が楽しくなる“千葉・茨城情報”をお届けします!!

記事一覧へ

ローマ皇帝の宮殿が市街地となった街

スプリット
アドリア海沿岸最大の港町スプリットは観光リゾートの拠点でもある
スプリット
海岸通りに並ぶオープンカフェ

アドリア海に面したクロアチアのスプリット。

港の風景を眺めて振り返った時、海岸に沿う通りの向こうに高さ20mほどの壁がどっしりと構えていることに圧倒された。

スプリット
外側から見た銀の門(東門)

この壁の向こうには住居があり、店もある。

しかし元々は、ローマ皇帝・ディオクレティアヌスの宮殿だった所なのである。

宮殿の南半分は皇帝の私邸に使われていた。

その宮殿の地下空間を、説明パネルを見ながら歩く。

スプリット
地下の巨大な空間

宮殿の復元図を見ると、宮殿の南側は、すぐ海に面して建てられていたことが分かる。

皇帝ディオクレティアヌスの胸像も展示されている。

スプリット
ディオクレティアヌス帝の胸像

スフィンクスからロマネスクの鐘楼まで

スプリット
旧市街の案内図

旧市街の中心部、列柱広場・ペリスティル。

列柱の間にあるスフィンクス像はエジプトから運ばれたもの。

スプリット
列柱広場のスフィンクス(顔はトトメス三世のもの)

広場東側の大聖堂は、ディオクレティアヌスの霊廟(れいびょう)として建てられたものが、後にキリスト教の教会となった。

スプリット
宮殿内にそびえる大聖堂

鐘楼は、中世に加えられたロマネスク様式の建築である。

スプリット
宮殿の北の門、金の門

北門(金の門)を出た所に、大きな青銅の人物像が立っている。

スプリット
北門の前に立つグルグール・ニンスキ司教像

この司教グルグール・ニンスキ像の前に腰を下ろして、像の左足の親指に触れている女性がいた。「像の左足に触れると幸運が訪れる」との言い伝えがあるのだ。

スプリットは宮殿がそのまま旧市街になったというユニークな起源を持つ、アドリア海沿岸に残る最大のローマ遺跡なのである。(文・写真/秋山秀一)