訪れた国や地域90以上、海外への旅は215回。
旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。

公開 2023/03/25(最終更新 2023/03/20)

ローマ皇帝の宮殿が市街地となった街
アドリア海に面したクロアチアのスプリット。
港の風景を眺めて振り返った時、海岸に沿う通りの向こうに高さ20mほどの壁がどっしりと構えていることに圧倒された。

この壁の向こうには住居があり、店もある。
しかし元々は、ローマ皇帝・ディオクレティアヌスの宮殿だった所なのである。
宮殿の南半分は皇帝の私邸に使われていた。
その宮殿の地下空間を、説明パネルを見ながら歩く。

宮殿の復元図を見ると、宮殿の南側は、すぐ海に面して建てられていたことが分かる。
皇帝ディオクレティアヌスの胸像も展示されている。

スフィンクスからロマネスクの鐘楼まで

旧市街の中心部、列柱広場・ペリスティル。
列柱の間にあるスフィンクス像はエジプトから運ばれたもの。

広場東側の大聖堂は、ディオクレティアヌスの霊廟(れいびょう)として建てられたものが、後にキリスト教の教会となった。

鐘楼は、中世に加えられたロマネスク様式の建築である。

北門(金の門)を出た所に、大きな青銅の人物像が立っている。

この司教グルグール・ニンスキ像の前に腰を下ろして、像の左足の親指に触れている女性がいた。「像の左足に触れると幸運が訪れる」との言い伝えがあるのだ。
スプリットは宮殿がそのまま旧市街になったというユニークな起源を持つ、アドリア海沿岸に残る最大のローマ遺跡なのである。(文・写真/秋山秀一)
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