タンポポの開花やツバメの初見など、身近な生物や自然の情報を観測・報告する「生物季節モニタリング」を知っていますか。
調査員の活動についてレポートします。
公開 2023/02/21(最終更新 2023/02/20)

生物季節モニタリングとは
2020年11月、気象庁は1953年から実施していた生物季節観測の項目と地点について、大幅な縮小・廃止を発表しました。
しかし生物季節観測は、気候変動対策や生物多様性保全に対して重要で貴重なデータを提供するものです。
そこで国立研究開発法人国立環境研究所が参画し、試行的な調査(生物季節モニタリング)を実施。
同研究所の委託を受けた全国の調査員により、動植物の開花や初見、初鳴の観測と報告が行われています。
同研究所 気候変動適応センター 気候変動影響観測研究室の辻本翔平さんによると、現在全国40の都道府県で約300人の調査員登録があり、2021年6月~22年11月末で2029件の報告があったとのことです。
調査員としての2022年活動実績
調査員の活動について、自身を例に紹介します。
2022年は埼玉県内の自宅から半径2kmほどの範囲で、ウオーキングを兼ねて観測を続けました。
2月にタンポポの開花とモンキチョウの初見、3月にモンシロチョウ・キアゲハ・ツバメの初見とヒバリの初鳴、4月にシロツメクサの開花、5月にシオカラトンボの初見、7月にアブラゼミとミンミンゼミ、8月にツクツクホウシの初鳴、9月にアキアカネの初見を観測して報告。

報告方法は、対象生物の種類と状態、観測対象の季節、生物の分類が記載されたシートに、観測者氏名、観測した月日、1週間の観測日数、観測地点の緯度・経度などを記入してメールで送付します。
生物種目の判定の難しさを実感
モンシロチョウやツバメの初見、ヒバリやセミの初鳴の確認は容易ですが、生物の種類と状態の判定が意外と難しいことが分かりました。
気象庁の「生物季節観測指針」によると、アキアカネは羽化して間もなく涼しい山地へ移動して夏を過ごし、赤くなって平地に戻ってくるとあります。
一方、ナツアカネも同じ赤いトンボですが種が異なり、観測の対象外。
ナツアカネは顔面から複眼まで真っ赤になるとのことで、飛んでいる姿で識別するのは難しいようです。
9月の初見は写真を添付して判定してもらいました。

柿や栗の開花も観測対象ですが、実のことは知っていても、どんな花が咲くかは知りませんでした。
次の季節の参考に柿の木と栗の木、ツバメの巣、シロツメクサの群生地などを書いたマップを作りました。
外来種アメリカオニアザミとは
観測を続けていると外来種と出合うこともあります。
ノアザミの開花を見つけ写真を添付したところ、外来種のアメリカオニアザミと判定。
アメリカオニアザミがノアザミと比べて特にとげとげしいことや、ノアザミの総苞(花の下部)は多少べたつきがあり、ほとんどとげとげしていないなどと写真が提供されました。
このように、間違った報告には、正しい情報がフィードバックされるので学びになります。
健康を目的に始めたウオーキングに、季節の移り変わりを感じられる楽しみが加わりました。
調査員の活動に興味がある人は、下記のURLから概要の確認を。
説明会の動画もあります。
HP/https://adaptation-platform.nies.go.jp/ccca/monitoring/phenology/index.html
(ライター・生物季節調査員・執筆/コラてつや)
※問い合わせ
メール/ccca_phenology@nies.go.jp
ホームページ/https://ccca.nies.go.jp/ja/index.html
国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動影響観測研究室(担当/辻本・西廣)