世界でもごみの分別が細かい日本。でも分別したことで満足して、環境にいいことをした気になっていませんか?
お笑いコンビ「マシンガンズ」として活動しながら都内でごみ清掃員としても勤務する滝沢秀一さんに、「目的意識ある分別」を教えてもらいました。
※必ず各自治体の分別方法に従ってください
\清掃員の日常をつづったツイートが人気!/
マシンガンズ滝沢(@takizawa0914)
公開 2023/03/22(最終更新 2023/12/25)

目次
寿命が迫る最終処分場 目的意識持った分別を
「日本はそのうちごみが捨てられなくなる」…清掃員の先輩からそう聞いた時は怖くなりましたね。最終処分場残余年数の全国平均としては22.4年(令和2年度末現在。環境省HPより)。早くて二十数年後にはごみを捨てる場所がなくなるという現状が迫っています。
ごみの分別方法をまとめた分厚いパンフレットをよく目にしますが、実は分別って日本独特のものなんですよ。世界中でもこれだけちゃんと分別している国はない。なぜなら、再生できないものは埋めるしかないわけですが(燃えるごみも灰となって埋め立てられます)、日本にはそれだけの国土がないからです。僕たちは再生できるものは「分別」で生かし、極力埋めるごみを減らさなければならない。
何のために分別をするのか、みなさんはそこまで考えてごみを出しているでしょうか?「分別は地域によって違うから」と漠然と地域任せにされがちですが、それだと日本全体での環境に対する意識が上がらない。環境についての「共通認識」を作らないと、日本の未来は暗い方向へ行ってしまうと思います。
その分別、正しいですか? 今一度、見直してみて
基本的にリサイクルにはきれいなものを出してください。汚れが取れないものが混ざると他のきれいな回収物も汚してしまうため、資源に回さず可燃ごみか不燃ごみへ。プラスチックの分別が一番難しいかもしれません。必ず各自治体の分別パンフレットに従ってくださいね。パンフレットもなかなか面白いので、よく読んでみることをお勧めします。ここで僕が清掃員として実感している、気を付けていただきたい分別をお伝えしましょう!
シャンプー容器
ペットボトルに混ざっていることが多いのですが、可燃ごみです! 地域によってはプラスチック回収へ。基本的に液体は回収できませんので、使いかけの中身は必ず処分(布にしみこませて可燃ごみにするなど)してから出してくださいね。
金色・銀色の紙
日本酒の箱や折り紙、カレーの箱の印刷などによく見られる金銀の素材。こちらも古紙で出される方が多いのですが、残念ながら再生されませんので可燃ごみへ。
汚れや匂いの付いた紙や瓶
油やチーズなどで汚れている宅配ピザの箱や、絵の具やクレヨン、墨汁で書かれた紙や段ボール、紙香水といった匂いが付いているものは再生できません! そのまま可燃ごみへお願いします。また、油などで汚れが取り切れない調味料などの瓶は不燃ごみへ。
靴やかばんに詰められた緩衝材
靴や鞄を買うとよく中に詰められているカサカサした紙! これらにはインクが含まれ、熱を加えると広がり他の紙類まで、トン単位でダメにしてしまうんです。専門的には昇華転写紙(アイロンプリント紙)と呼ばれるものなのですが、こちらは必ず可燃ごみで出してください。
その他、熱を加えると黒くなるレシート(感熱紙)や繊維が細かいシュレッダーされた紙たちもリサイクルできませんので気を付けてくださいね。
危険! 絶対気を付けて! 身近なデジタルごみ
携帯扇風機、モバイルバッテリー、ワイヤレスイヤホン、電子タバコなどに使用されるリチウムイオン電池は、圧迫すると爆発の恐れがあります。家庭ごみに混じって出されることもしばしば。気付かずに清掃車に積んでしまい、仲間の車両から発火する惨状を目の当たりにしてきました。これらは自治体の指示に従って正確に処分をしてください。
このように、リサイクルには純度が大切です。例えば、回収したペットボトルに残るラベルやキャップは僕らが手作業で取り、次の工程に回しています。清掃員はリサイクルのつなぎ手だと思ってくれたらうれしいですね。
そして、ワンポイントアドバイス! 生ごみはぎゅっと絞ってから出すことを意識して。水分は焼却炉の温度を下げるため、より多くの燃料(税金)を使うことになります。「ごみを手放したらもうひとごと」ではなく、その後こそが私たちの暮らしに影響を与えます。ひと手間を惜しまず、良い習慣を身に付けられるといいですよね。
集積所には地域の品格が見える! 引っ越しもマナーを守って
ごみを見ると住民が分かる、というくらい集積所には地域の品格が見えるなって思います。それは防犯にも通じるところがあります。整備された場所には健全なコミュニティーの存在を感じ、コミュニティーの目があるということは高い防犯意識の表れでもあるわけです。逆に荒れた集積所からは、住民が地域に無関心ということが分かってしまいます。犯罪は、「起こしやすい(人目のない)地域かどうか」で発生するもの。「私の町は大丈夫?」と住民同士が日常的に意識することも大切ですね。
この時季3月に集積所で多く見られるのが、スプレー缶やバッテリーといった危険物が混じる引っ越しごみ。先ほどお話ししたように、発火して清掃車火災につながる恐れもあるので、ルールを守った分別をお願いします。「立つ鳥跡を濁さず」、引っ越し日が決まったら、不用品は数カ月前から計画的に処分できたら理想的ですね。
これからも地域の清掃員として 滝沢さんの抱く目標とは
「日本のごみを減らしたい」が目標であり、僕の人生のテーマです! そのためには「地域のごみを減らしたい」、さらにそのためには「一人一人のごみを減らしたい」。清掃員になってから、芸人の仲間たちがごみのことをよく僕に聞いてきます。これって、誰もごみのことを学校などで教わってこなかったからではないかと思うのです。なので、ベースの教育が必要だなとも感じています。そうすれば、分別が当たり前の大人になるはずです。
滝沢さんから読者の皆さんへ
物を買う時に、「これってどうやって捨てるんだろう?」と、その処分法や分別法を意識するだけでも不要な買い物とごみは減ります。1人で100歩進むより100人で1歩進む方が環境にはプラス。皆さんができることを、今日からぜひ実践してみてください!
みんなのマインドが変わってくれたらいいなという思いで、一緒にごみを減らすプロジェクト「滝沢ごみクラブ(https://community.camp-fire.jp/projects/view/515426)」というオンラインコミュニティーを展開しています。誰でも参加できますので、ぜひのぞいてみてください! ごみの先生を全国につくりたいですね!