博物館成立の100年前。
江戸時代後期にも、古から伝来する文化財を熱心に楽しむ人たちがいました。
カメラもSNSもない時代の古マニアの情熱を今に伝える展示が国立歴史民俗博物館(以下歴博)で始まります。
公開 2023/03/08(最終更新 2023/03/06)

「好古」の世界へようこそ
マニアの「好きっ!」への熱狂ぶりはいつの世も変わらぬもの。
江戸時代後期、有力者たちの間でいにしえから伝わる伝統的なものを好む「好古(こうこ)」趣味が盛り上がりました。
好古家たちは、「好きっ!」と感じるモノと出合うと蒐集(しゅうしゅう)、それが難しい時には模写したり、拓本を取ったり、模造品(レプリカ)を作るなどして手元に置いておき、さらにコレクションから抜粋した私家版(しかばん)の小冊子を同好の人たちに配り楽しんだといいます。

歴博の三上教授が出合った「聆涛閣集古帖(れいとうかくしゅうこちょう)」は、神戸・灘の豪商吉田道可に始まる三代による当時の好古家仲間垂涎(すいぜん)のコレクション。
鏡や刀剣など正倉院や法隆寺の宝物に描かれた繊細な模様や、偉人の名筆、王朝様式の御輿や模様の珍しい瓦など、道可が「好きっ!」と感じた多分野のものがページをめくるたびにあらわれ、三上教授も心ときめいたそうです。
古マニアの古マニアによる展示
本展示は「聆涛閣集古帖」について館内外の第一級の研究者19人による共同研究と展示方法などに関する検討プロジェクトを経て実現。
「この好古図録と描かれた実物とを可能な限り再会させて会場に展示したい」という三上教授に応じた研究者たちが、描かれた品の来歴を調査し所蔵者を探し出し借用、もしくは模造品を借用。
それも駄目なら写真をと、こちらもマニアックな熱量で調査・蒐集。
国内60カ所以上の博物館・美術館・寺社の協力を得て国宝2点・重要文化財8点を含む約270件を展示します。
今回の展示に向け好古図録にある天皇の輿を縮尺5分の1で模型制作した物も注目です。
「いにしへの奈良の都の八重桜…」
古来日本人が愛した桜が歴博でも見頃を迎えます。
古マニア吉田家の別邸に招かれた客人となり「この品の一体どこに引かれたの?」と、彼(か)の人の情熱と対話してみてはいかがでしょうか。
企画展示「いにしえが、好きっ!-近世好古図録の文化誌-」
会期/~2023年5月7日(日) 毎週月曜休館(5月1日は開館)
時間/9:30~17:00(最終入館 16:30)
場所/国立歴史民俗博物館
住所/千葉県佐倉市城内町117
料金/一般1,000円、大学生500円、高校生以下無料(高校生および大学生は要学生証)。
総合展示・くらしの植物苑も閲覧可
問い合わせ
電話番号/050-5541-8600 ハローダイヤル
ホームページ/https://www.rekihaku.ac.jp