「片歯の梅」は、成田市近隣に古くから伝わる昔話の一つです。
公開 2023/03/11(最終更新 2023/03/07)

代々語られてきた物語
識字率が今ほど高くない時代、多くの昔話は言い伝え、つまり親世代から子孫への口伝えであったことから、同じ話でも途中のくだりや結末が複数に派生していることも一般的。
片歯の梅にも結末や詳細が少しずつ違ったものがありますが、それはこの話がそれだけ多くの人々に大切に伝えられてきた証しでもあるのでしょう。
片歯の梅のお話は成田市や栄町を中心に伝えられてきました。

少し物悲しい物語 片歯の梅
昔、坂田ヶ池のほとりには雄の大蛇が住んでいた。
その大蛇が向こう岸に住む妻の大蛇に会うたび行き来をするので、池の土手は何度直しても壊れてしまう。
皆の衆がほとほと困り果てた時、梅の実をかじる幼子をおぶった女が現れて「夢に池の神様が出て、この土手はオラたちが人柱にならねばだめだと言った」と申し出た。
その後に土手崩れはおさまり、人柱の跡からは梅の木が生えてきた。
その梅に実がついたので村人が見てみると、実の片方に小さく歯形がついている。
これはあの幼子がかじっていた梅の実から生えたに違いないと村人は二人を思って手を合わせ、この梅の木を大切に守っていくことにしたという。(出典成田市史、他)

坂田ヶ池に現存する梅の木
人柱という風習は今の感覚で捉えると理不尽に感じます。
しかし人柱は「人身御供」とも呼ばれ、昔は神様の供物になる名誉だと感じている人も多かったといいます。
片歯の梅は今もなお大切に守られて坂田ヶ池のほとりで静かに枝を揺らしています。(取材・執筆/こたけ雫)
坂田ヶ池
住所/千葉県成田市大竹1450
(坂田ヶ池総合公園内)