季節のマルシェやレッスンなど、多彩なお花仕事に携わってきた大島恵理さんが、船橋市習志野台に小さなお店を開きました。

幸運の象徴・宿り木を店名に冠するショップには、食器や古道具、アンティーク雑貨を始め、ハンドメイド作家作品やドライフラワーなど、「ここにしかない」上質な品物がそろいます。

月1~2回ほど仕入れる生花が店頭を華やかに彩り、レッスンやワークショップも充実、静かににぎわう「la gui.(ラ グイ)」。

大島さんと、集う人たちが織りなす風景を取材しました。

公開 2023/04/09(最終更新 2023/12/25)

雪道

雪道

高知県出身、船橋市在住。元英語講師。ロック好き。読書好き。月村了衛、笹沢左保、有栖川有栖が好きです。残りの人生の目標は、ピアノとドイツ語をならうこと。好きな言葉は「ご縁」。

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宿り木のもとで紡ぐ物語。さまざまな思いが、出会いをつないで

新京成線「北習志野駅」から10分ほど歩いた街角に、どこか古めかしく懐かしさを呼び覚ますような、小さなお店があります。

アトリエ&ショップ「la gui.」
ぼんやり歩いていると見落としてしまいそうな、つつましやかなお店構え。だからこそ宝物を見つけたような気持ちになるのかもしれません

アトリエ&ショップ「la gui.」。

「ラ グイ」と読みます。

グイはフランス語で「宿り木」の意。

「どうしても宿り木にちなんだ名前にしたかったのです」と、穏やかにほほ笑むのは、店主の大島恵理さん。

大島恵理さん ミモザ
取材に訪れたのは、月に1~2度ほどある生花販売の数日後。店内中央のテーブルには、春の花々がかれんに咲き、心を和ませてくれました

船橋市坪井町出身・在住の大島さん。

住宅メーカーや工務店で働く傍ら、自宅でフラワーアレンジメントのレッスンを行い、お花仕事を通じて知り合った仲間とマルシェを主宰するなど、10年以上前からお花や雑貨を扱う活動にも携わってきました。

転機が訪れたのは、2022(令和4)年2月。

それまで勤めていた工務店を退職したタイミングで、この小ぢんまりとした、年月を重ねた物件に出会います。

「家族のリモートワークが常態化する中では自宅レッスンもままならず、子育ても一段落し、自分のしたいことをしてみよう、と決断しました」

アトリエ&ショップ「la gui.」
作家仲間の協力のもと、壁をグレーに塗り、飾り棚やパーティションも手作り。大島さんの世界観を創り上げました

また、これまで自分が続けてきたこと、そして関わり合ってきた人たちがつながれる、そんな場所があるといいなと漠然と思い描いていた、とも。

何かに導かれるようにそれらの思いが重なり、この建物に出会って3カ月後の5月初旬、アトリエ&ショップ「la gui.」はオープンするのです。

店主が厳選した優品が並ぶ店内。一期一会を楽しんで

では、さっそく店内をご紹介していきましょう。

キャンドル
灯すと微かに香るそうです。眺めるだけで豊かな気持ちになる作品

ドアを開けてまず出迎えてくれるのは、繊細でやわらかな色彩の花々を閉じ込めたキャンドルたち。

お花作家仲間のおひとりが手がけるボタニカルキャンドルは「優しくて凛とした美しさにあふれています」と大島さんも目を細めます。

趣のある生活雑貨
趣のある生活雑貨が並び、目移りしてしまいます

味わいがあって好きと話す大島さんが選んだ、ブロカントと呼ばれる古道具。

ものを大切に長く使うという欧州文化を象徴する、時代を超えて愛される生活道具は、およそ6坪の店内のあちこちでひそやかに、しかし風格をまとってその存在感を主張しています。

ヴィンテージアクセサリー
リングやペンダントトップ、ブローチなど、身に着けると所作まで美しく見せてくれそうな上品なデザイン

こちらも、時代を経た、精緻な細工が施されたヴィンテージアクセサリー。

「現代にはない精巧なデザインが素敵で心ひかれます。年代物は一期一会。『ここにしかないものを置く』というこのお店のコンセプトとも合うので、今後も積極的に扱っていきたいお品物のひとつです」と大島さん。

ガラスの器とアクセサリー
心地よい光が射し込む窓辺に並ぶ、繊細なアクセサリー

ハンドメイド作家のアクセサリーも常設展示しています。

「訪れるお客さまに作品を見ていただき、知っていただく機会になればと思っています」

マルシェ
2022年10月に初開催されたマルシェ。初日は大雨の中、たくさんのお客さまが訪れにぎわったそう(写真提供・la gui.)

不定期に店内で開催するマルシェもそんな役割を担っており「焼き菓子なども販売する、特別な楽しい時間を提供できたらいいなと思います。多くの方にご紹介できる、発信基地のような場になれば」と笑顔を見せます。

リネン服
甘さを抑えた、大人の女性に似合うデザイン

大島さんが「一生ものになる」と絶賛するお洋服。

質の良い国産リネンを用いて丁寧に作られたワンピースやスカートは、美しく実用性にも優れています。

季節のお花
「ミモザが人気なのは、春を待ちわびる私たちにとって黄色い花色が特別に感じられるからかもしれませんね」という言葉が印象的でした(写真提供・la gui.)

大島さんは月に何度か自ら市場に足を運び、季節のお花や枝ものを仕入れています。

「旬を迎えるお花や植物には強い生命力を感じます。それをお届けしたい」と大島さん。

生花販売の日は、心待ちにしたお客さまが続々と来店します。

おしゃべりを楽しみながら生き生きとした表情でお花を囲む様子は、取材時は北風の吹く2月だったにもかかわらず、心をあたたかく、軽やかにしてくれるようでした。

誰かを、自分を、想う気持ち。そこに寄り添うお店でありたい

店内で開催する多彩なワークショップやレッスン。

「誰かに教えることで、自分も勉強になります」とほほ笑む大島さんは、la gui.店内で開いた講座の参加者が「楽しかった!」と笑顔になる様子を見て、自身のお店を始めた原点をあらためて感じることができたと振り返ります。

「手作りを楽しみ、その時間を共有できる空間をつくっていきたい。作家さんとお客さまを、そして、人とものをつなぐ場所でありたいです」

お花と大島恵理さん
店内を彩るドライフラワーは直接市場で仕入れた新鮮なものを自身でドライにするので、美しい発色に仕上がります

「la gui.にある品物は、生活必需品ではありません。だからこそ、日常のあわただしさから少し距離を置き、自分の暮らしを少し豊かにするような、日々の彩りになるものに出会ってほしいと思っています」

見る人の心を潤し、琴線に触れる「ここにしかないもの」の数々。

贈り物を選ぶために訪れるお客さまも多いというのもうなずけます。

ヤドリギ鉛筆画
友人でもあるアクセサリー作家さんが描いた鉛筆画をショップカードに

冬でも豊かに葉を茂らせる宿り木。

永遠を象徴する特別な存在は、幼い頃から親しんできた西洋の物語や歌を通して、大島さんの心に息づいているといいます。

「お気に入りを見つけに来てください」とほほ笑む大島さんの、透明感のある笑顔と穏やかなたたずまい、そして選び抜かれた雑貨やドライフラワーが生み出す美しい陰影が、la gui.という特別な空間の物語を紡いでいくのだと感じました。

la gui.

住所/千葉県船橋市習志野台2-32-1-104
営業時間/11時~17時
定休日/月・水・日・祝日
駐車場/なし
※近隣のコインパーキングをご利用ください。
電話番号/090-1242-9187
インスタグラム/@lagui.zakkaflower