訪れた国や地域90以上、海外への旅は215回。
旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。

公開 2023/05/27(最終更新 2023/04/28)

国民が世界一裕福といわれる欧州の小国
ルクセンブルク大公国は立憲君主制で、世界唯一の大公国(大公を元首とする国)である。
国土の面積は沖縄県とほぼ同程度で、人口は53万人ほど。
ベルギー、フランス、ドイツに囲まれた、このヨーロッパの小さな国の国民が、実は「世界で最も所得が多い国民」ともいわれる。
ノートルダム大聖堂で、キリストを抱くマリアと東方三博士が描かれたステンドグラスを鑑賞。
その後、ノートルダム通りを右へ歩いていくと、左手に大公宮殿の建物が現れる。
正面から見て右側が国会議事堂だ。
大公宮殿前広場にある5本の円柱の上方に、金色をした人の顔が彫られている。
不思議なことに、どこから見ても、どの顔も、全てこちらを見つめているのだ。
狭い路地の奥へ進むと、古い建物が狭い空間にびっしり固まって建っている。

同名の侵略者に破壊されたアドルフ橋

サン・ミッシェル教会の東を城壁に沿って歩いていくと、その先にボックと呼ばれる断崖が現れる。
ここには急な岸壁に築かれた巨大な地下要塞と、ボックの砲台がある。
この断崖絶壁の上からの眺めはまさに絶景。
展望台に上ると、旧市街と新市街をつなぐパトリュス川に架かるアドルフ橋が見える。

かつての大公の名前にちなんで名付けられたこの橋は、皮肉にもアドルフ・ヒトラー率いるナチスによって1940年の激戦で破壊され、戦後再建されたという歴史を持つ。(文・写真/秋山秀一)
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