その土地の魅力あふれるおいしいものをお届けする通販サイト「ちいきの逸品」、商品に込められた想いを取材しました。
公開 2023/06/16(最終更新 2025/09/03)

編集部 ゆりか
編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。
記事一覧へ10代目当主はアイデアマン

千葉県の北東に位置する香取市佐原。
この地は「江戸優(まさ)り」といわれるほど栄え、小野川沿いには今も風情あふれる町並みが並んでいます。
その中でも老舗のつくだ煮屋「いかだ焼本舗正上」は、1800年から商売を始め、この地で約200年、しょうゆ、つくだ煮、加工品などを丁寧に手作りしてきました。
現在の10代目当主、加瀬幸一郎さんはいろんな物からアイデアを拾って、しょうゆ、つくだ煮の枠を飛び出しユニークな商品を生み出すアイデアマンです。

中でも好評なのは「九十九里浜蛤(はまぐり)酒蒸し」。
もともと小さいハマグリの酒蒸しを作っていましたが、九十九里浜の大きいハマグリを使おうと思い立った幸一郎さん。
驚くことに大きさが違うだけで製法も全然違い、小さいハマグリなら1回殺菌すれば3~4カ月は日持ちしますが、九十九里浜の大きいハマグリは1週間で駄目になってしまいます。
なんとか製法の問題を解決した後も全てのハマグリの口が開くように貝の後ろにスリットを入れたり、味わい深くなるようにまだ生きているうちに九十九里の銘酒で風味付けしたり、と細かい工夫を重ねました。
そうした努力が実り作りだしたこの商品は「食のちばの逸品を発掘2015」で銀賞を受賞します。

でも苦労した末、自信を持って送り出した商品。
幸一郎さんはうれしさと同時に悔しさもかみしめながら、金賞を取ったメロンのジェラートを食べてみました。
「…おいしい!」
気持ちを新たにし、金賞受賞に向けた試行錯誤が始まります。
リベンジを果たした「房総真鯛(まだい)春子(かすご)焼鯛めし・鯛茶漬」
2年の時を経て、悔しさをばねに開発を進めたのが「房総真鯛春子焼鯛めし・鯛茶漬」でした。
タイは柔らかく丸ごと骨まで食べられ、別添えの特製だししょうゆを加えて炊飯するだけで豪華な「鯛めし」が出来上がる本格派です。
この商品で見事「食のちばの逸品を発掘2017」の金賞を受賞。
審査員は「タイはたくさん食べてきたのに、これは私の人生の中でも、タイへの考え方を一変させてくれた」と絶賛。
この言葉を聞き、幸一郎さんは一緒に行った従業員と共に号泣したそうです。


ユニークな商品が続々 ラー油を使った斬新な切り口
商品のことを話すと1時間でも2時間でも語れる、という幸一郎さん。
他にもユニークな商品を開発・販売しています。
どんな料理にかけても癖がなく、手軽にうま味と辛味を足せる、エビぎっしりの「えびラー油」。
ニンニクと落花生を漬け込み、歯ごたえとうま味がたまらない「カリっとラー油」。
野菜などにディップとして付けるも良し、肉を漬け込んで焼いても良し、ふくよかな香りと甘みが絶妙な「にんにく醤油麹(しょうゆこうじ)」などがあります。


また、大のウナギ好きの知人から「おいしいウナギのしぐれ煮を作ってほしい」と言われ開発を始めた、さんしょうの風味香る「うなぎしぐれ煮」。
捨ててしまうのはもったいないとウナギの頭を煮た「うなぎ兜煮」もあります。
しぐれ煮に使ったさんしょうは採取時期わずか1週間という生ざんしょうを使用。
知り合いのツテをたどって、生ざんしょうを分けてもらい、商品化に至ったと言います。

つながった縁を大切にしつつ、周りの人からも頼られる10代目。
伝統の味を守りながら新しい技術を駆使し、より良い商品作りに労を惜しまない老舗の姿がそこにはありました。

★この記事で紹介した商品は地域新聞社が運営する通販サイト「ちいきの逸品」で購入できます
