2023年4月29日「しかにく」の日、千葉県君津市の片倉ダム記念館内に「猟師工房ドライブイン」がオープンしました。
農業被害の大きな原因の一つである鳥獣被害対策をテーマにしたテーマパークと聞き興味津々!
気になる店内や食べ放題というジビエ料理を取材し、人間と自然との関わり合い方を模索する「猟師工房」の取り組みと熱い思いを伺いました。
公開 2023/07/24(最終更新 2023/12/26)

花
48歳で普通自動二輪免許を取得したへっぽこアラフィフ主婦ライダー。千葉は魅力的なライディングスポットがたくさん!取材と称してソロツーを楽しんでいます。【ブログ】https://ameblo.jp/ohana-hann/
記事一覧へ物販エリアはジビエ肉や加工品・毛皮や小物類を販売
2019年から猟師工房が君津市香木原で営業していた「猟師工房ランド」。
猟師工房ドライブインは、猟師工房ランドが片倉ダム記念館内に一部移転し、新たにオープンした施設です。

入り口には猪のはく製!
その迫力に圧倒されつつも意を決して入店。すると……
あらら?意外や意外。アウトドアテイストのおしゃれな店内。
気軽に見て回れる雰囲気でいい感じです!

迎えてくださった猟師工房代表の原田祐介さんに、まずは物販エリアでの気になる商品のあれこれをお尋ねしました。

毛皮はファーとして活用されていて、中でもタヌキの毛皮は神楽の衣装や山伏の法衣(ほうえ)に使うなどの需要があり、遠方から購入しに来る人もいるほどなのだとか。
猟師工房ではいただいた命を最後まで見届けたいと、皮や骨までを再生率100パーセントで活用しているそうです。
こちらの鹿の角はアクセサリーに加工されたり、DIYの材料としてドアや家具の取っ手などに使われたりすることが多いとのこと。またワンちゃんのおやつとしても人気なんだとか。

骨や角、毛皮など最初のインパクトこそ強かったですが、お話を伺ってから改めて店内を見ると、置かれているものがアイデア次第で無限に活用できる宝の山に見えてきました。
他にも冒頭のマダニTシャツ(人気商品)などのオリジナル商品を販売。
特に私が気に入ったのは種類も豊富なオリジナルマッチです。

イラストを描いたのは京都に住む猟師さん。伊豆大島で販売しているキョンのマッチのデザインも手掛けており、それを見た原田さんがほれ込んで、猟師工房デザインのイラストを依頼したのだとか。

また物販スペースには「バターキョンカレー」「猪フランクフルト」といった加工品から、鹿、猪をはじめとするジビエ肉も販売しています。
「いきなり塊肉を買うのはハードルが高いでしょうから、まずはハンバーグやウインナーなどの加工品から食べてみることをおすすめします。クセや臭みは全くなく、そのおいしさにびっくりされると思いますよ」
と原田さんからアドバイスをいただきました。

店内に飾られた存在感抜群のはく製は、原田さんの私物で非売品。
はく製職人には猟師を兼任する人が多く、原田さんにははく製職人の知り合いも多いのだとか。廃業する職人さんの、行き場をなくしたはく製たちを引き取って展示しているのです。
猟師工房のシンボル、巨大なヘラジカのはく製も、猟師でもあるはく製職人さんが約50年前に自ら仕留め、はく製にしたもの。
ヘラジカの平均体重は700キロだそうですが、このヘラジカは1,000キロもある大物だったのだそう。実際に見るとその大きさは圧巻で、一見の価値ありですよ。

ジビエ料理の食べ放題に挑戦
なんと猟師工房ドライブインでは、自社工場で加工したジビエ肉を使った料理が2,728円で食べ放題。
自分で調理するにはハードル高めのジビエ料理。この機会にレッツジビエ!
私がチョイスしたのは、ジビエのポテトサラダ、鹿のボロネーゼパスタ、鹿の麻婆豆腐、猪ミートローフ、ジビエおでん、猪カレーなどの12種類。
ではいよいよいただきます。
あっ、どの料理もおいしい。
肉に獣臭さなどは全くありません。よく言われるように猪は豚肉に、鹿は牛肉に似ているものの、それらとは明らかに違う濃いうまみがあります。
猪はジューシー、鹿は赤身の味わいで、私はかなり気に入りました。
料理長の田代さんによると
「ジビエ用の下ごしらえや臭み消しは特にしていません。
ジビエ用の肉は、命をいただく時からきちんとした工程をとれば、臭みは全くないんです」とのこと。
トマトソースの煮込みには店内でも販売している鹿のハンバーグを使用し、鹿のチョリソー、コロッケなども店内で販売しているもの。
猟師工房のジビエ肉は手順を踏んで加工しているので、店内で販売されているものも含め、全ておいしく食べられるのだそう。

原田さんは
「野生動物だけにジビエ肉は天候や季節で味が変わります。
猟師の会話を聞いていると面白いんですよ。例えば『今年は栗の花がたくさん咲いているから来年はいい猪がたくさん捕れるね』って。秋には栗が豊作だからそれを食べた獣たちも栄養を蓄えていい体になる、という意味です。獣だけではなく自然全体を見てるんです。
敬遠する人も少なくないと思いますが、いただいた食材に向き合うのがジビエ肉の醍醐味ですね」とジビエ肉の魅力を教えてくれました。
「命の授業」を通し猟師工房が問いかける自然と人間との関係

原田さんの前職は会社員。長らく趣味で狩猟をしていて、会社を退職後に埼玉県飯能市で林業に従事。その後キョンの生態調査を手伝ったことで千葉県の鳥獣被害がひどいと知り、千葉県君津市に移住します。
2019年に猟師工房ランドを立ち上げ、廃校になった君津市立香木原小学校をリノベーションした猟師工房ランドを拠点に、ジビエ肉やジビエ加工品の販売や流通の仕組みづくり、小中高校生を対象にした「命の授業」プロジェクトなどに取り組んできました。

また獣害について
「昔は地域で野生動物の駆除を定期的に行い、適正な数に抑えていました。しかし近年はそういった習慣もなくなった上、捕獲しても処理に困り、山に放置するケースも増えています。放置された肉は他の獣が食べてしまう。肉には栄養があるため繁殖力が増し、獣害が悪化してしまうんです。捕獲や駆除された獣は適切に処理しないといけないんです」と、問題の深さを教えてくれました。
猟師工房では、これからの獣害対策は狩猟をビジネスとして成立させる必要があると考え、捕獲した獣の解体処理までを自分たちで行う食肉処理施設を作ったり、ジビエ肉を流通させる仕組みを作ったりするなどの活動を行っています。
また若い人が仕事として猟師を選べる環境を作ることが、猟師の高齢化問題の解決にもつながると期待しているのだそう。

時に学生と一緒に猪を解体することもある「命の授業」。子どもたちに伝えたいのは自然と人間との関わり合いについてです。
「授業では獣害に悩む農家さんの現状や、獣害が起こるシステムや駆除について話します。私たちから『正解』は言いません。農家、猟師、獣。それぞれの立場からこの問題について考えて欲しいんです。命を取るのは大変なこと。正解を考える途中で猟師になるという選択肢が見えてくれたらうれしいですね」(原田さん)
命の授業は今後も猟師工房ランドを拠点に続けていくとのことです。

命をいただくからこそ、その尊さを実感している猟師の皆さん。
人間もまた自然の中の一つ、「命を奪う」という考えも実はおこがましく、自然の営みの中の一つなのかも……。そんなことを感じさせてくれる取材でした。
あなたなりの「正解」を、猟師工房で見つけてみてはいかがでしょうか。
猟師工房ドライブイン
住所/千葉県君津市笹1765-9
営業時間/10時~18時
ジビエビュッフェレストラン 11時~15時(L.O.14時)
休館日/水曜
料金/ジビエビュッフェ 大人1人 2,728円
駐車場/無料10台 道の駅きみつふれあいパーク駐車場・笹パーキングも利用可能
アクセス/JR久留里線 上総亀山駅 車11分
車の場合:館山自動車道君津ICから房総スカイライン経由で約30分
問い合わせ/0439-27-1337
Facebook/猟師工房ドライブイン
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