廃材アート・ワークショップ 我孫子市

我孫子市内のめばえ幼稚園にて、去る7月29日に廃材を使った子ども向けのアート・ワークショップが行われました。

教えてくれたのは、アルゼンチンから独自の優れたテキスタイルを発表し、日本のファッション業界にも影響を与えてきたデザイナーのマルティン・チュルバさんと、そのパートナーであり建築家のマウロ・ベルナルディーニさん。

イベントの模様をルポし、お二人に子どもの創造性を伸ばすコツを伺うとともに、このイベントを企画した市内在住の大坪祐三子さんに、開催への想いを聞かせていただきました。

公開 2023/08/24(最終更新 2023/12/26)

野中真規子

野中真規子

フリーライター歴20年。取手市出身。2021春に東京から我孫子市に移住し、手賀沼周辺の水辺や豊かな緑、遺跡、史跡、ユニークな個人商店などに囲まれた生活を満喫中。スパイスと魚影、日本語ROCK、RAP、民族的デザイン、音楽、祭り好き。https://makikononaka.com/

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テキスタイルなどのアートを通じてアルゼンチンと日本の架け橋に

マルティン・チュルバさん 廃材アート

テキスタイルデザイナーのマルティンさんが布を好きなのは子どもの頃からで、こっそりシャワーカーテンなどを使って工作していたそうです。人は生後すぐに産着に包まれ、防寒や自己表現のために洋服を着て、亡くなっても死装束を身につけてあの世へ行くことから、マルティンさんは布を「第二の肌」かつ「ソーシャルスキン(社会での表現)」ととらえながら、布の性質や人の体の仕組みに沿う形で革新的なファッションアイテムを次々と発案。アルゼンチンのファッション業界の拡大と成長に大きく貢献してきました。創設したブランド「トラマンド」は、日本でもシシド・カフカさんらアーティストをはじめ感度の高い人たちに愛用され、アパレルの他にも店舗やホテルの内装を手がけるなど多彩な活動を行っています。

2023年7月には日本・アルゼンチン外交関係樹立125周年に際し、両国の架け橋となる活動をしているアーティストとして活動が認められ、駐日アルゼンチン大使館でのイベントに作品を展示するため来日。市内在住の大坪さんとはビジネスパートナーであり親友である関係から、我孫子でのワークショップが実現しました。

いらないものに魔法をかけて、欲しいものに変えていこう!

ワークショップは大坪さんを中心に、地域のママや中高生ら総勢14名のボランティアによって運営され、参加したのは幼稚園生から中学生までの子どもたちとその保護者32組です。

マルティンさんも、13歳の息子を持つ保護者でもあります。我孫子を訪れたことは何度もあり、我孫子が大好きだと語ってくれました。子どもたちに「あなたたちは宝物です。一緒に作る過程を楽しみましょう!」と誘い、制作がスタート。

子どもたちは家庭から持ち寄った「いらないもの」を出し、全員の分が集まったら、今度はそこから自分が気に入ったものを素材として選びます。

マルティンさんはパルプ製の卵ケースを持って、こう説明してくれました。

「僕が小さい頃、これを見るのが好きでした。軽いし独特の質感があり、踏むと気持ちいい(笑)。でもこれをどうしたら良いのかわからず、『もったいない』という気持ちがありながらも、結局いつもゴミ箱へ入れていました。でも、こうしたいらなくなったものも、とても素敵なものに変えられるというミラクルがあります。まずは皆さんも、目の前のいらなくなったものを、生まれて初めて見るように見たり、匂いを嗅いだり、音を聞いたり、触ったりふんだりして感じてみてください。そして、クレヨンで素敵な色をつけてみましょう」

子どもたちは、いつもは何気なく捨ててしまっているお菓子やおもちゃの空き箱や、トイレットペーパーの芯、牛乳パックにペットボトルなどを手にし、まじまじと眺めたり、触ったりして、その感触や形とあらためて向き合い、真剣に色塗りを始めました。

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

色を塗ったら、ノリをつけて…。

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

洋服用の銀箔の転写フィルムを載せてプレス機にかけて、マルティンたちと一緒に魔法をかけます。

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

するとさっきまでいらなかったものが、キラキラしたアート作品に生まれ変わりました!

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

出来上がった作品は、園庭のテラスに飾って鑑賞しました。

集中して楽しく取り組め、お気に入りの作品もできてみんな大満足!

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

夢中になったら手放し、子どもたちの創造性を自由に解放する

これまでもたくさんの子どもたちに向けてワークショップを開いてきたマルティンさんとマウロさん。

マウロさんが、子どもたちの創造性を伸ばすためのポイントについて、アドバイスしてくれました。

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

子どもたちが創造する時には『始まり』と『終わり』を必ず一緒に迎えてください。子どもたちが手を動かすのにはエンジンがかかるので、最初は一緒に取り組んであげ、子どもが夢中になってきたらいったん手放して、彼らを自由に解放してあげること。そして一番大事なのは『クロージング』。子どもたちの一番の喜びは大好きなお父さんお母さんが喜んでくれることなので、出来上がったものを一緒に味わい、感想を言ってあげましょう。この時間が、かけがえのない素晴らしいひとときとなるはずです」

マルティンさんも、廃材アートの取り組み方について提案してくれました。

「ぜひ日常的に廃材を使って遊んでみてください。自由で喜びに満ちた創造の時間を過ごし、大好きなお父さんお母さんたちとその喜びを分かち合う時間を楽しみ、作ったモノに家族みんなで『新たな価値』を吹き込んであげてください。そしてその作品が、皆さんの『楽しみ』と『創造』の象徴となるよう、お部屋のどこかに素敵に飾ってあげてください」

みんながワクワクしながら街の課題に取り組んでいくきっかけに

主催者の大坪さんは我孫子市内在住。ジュエリーデザイナーやアパレル企業でのマーケティングを経て、現在はfor next group の幹部として教育事業に携わりながら、地域企業や組織のイノベーションに関わる仕事をしています。またお住まいの学区で地域教育活動推進員としても活動し、その一環でマルティンさんたちと我孫子市立並木小学校を訪問、子どもたちに国際交流の機会を届けてもいます。20年前、アパレル時代にライフスタイル事業の開発ヒントを求めてリサーチに渡った南米でマルティンさんと出会い、彼のブランド「トラマンド」のブランドディレクターとして二人三脚で活動をともにして以来のご縁なのだそうです。

廃材アート・ワークショップ 我孫子市 

「地球の裏側からきたアーティストと一緒に、これまで『いらない!』と捨ててしまっていたゴミへの発想を変えて手を動かし、価値あるものに変えることができたクリエイティブな時間が、これからのグローバルで豊かな発想力が求められる時代に活躍していく子どもたちの体験の一つとなればうれしいです。経済産業省が推奨するこれからの時代に必要な思考力を養う学習スタイルの1つ、STEAM教育(Science=科学、Technology=技術、Engineering=工学・ものづくり、Art=芸術・リベラルアーツ、Mathematics=数学)でも、アートは重要な学びの一つとされています。これを機に、お子様との学びを日常の中で楽しみながらつないでいっていただきたいですね。2023年9月には、次世代型STEAM教室『zunOw』我孫子校をプレオープンする予定で、8月25日・30日には実際のプログラムを体験できるイベントも実施します。ぜひお越しいただければ!」

さらにこの秋には、我孫子駅前にマルティンさんによる廃材を使ったアートベンチを設置する予定もあるとか。

「我孫子周辺の象徴であり、私たちが大好きな手賀沼では、まだまだ不法に廃棄されるゴミが絶えず、その除去作業が続いています。我孫子駅前の、手賀沼に向かう道の起点にベンチを設置することで、みんながゴミの問題に気づき、解決に向けて主体的に取り組んだり、廃材を生かすような発想ができるようにと考えました。このベンチが後にアイコンとして手賀沼一帯に点在し、皆がワクワクしながら街の課題に取り組んでいく。そんなクリエイティブな街に発展していくきっかけとなることを願っています」

廃材アート・ワークショップ 我孫子市

次世代型STEAM教室 zunOw(ズノー)
我孫子校プレOPENイベント
2023年8月25日(金)/30日(水) 各回『先着10組』
詳細・申込
https://fn-zunow.com/school/abiko/
問い合わせ/大坪 info@for-next.jp