船橋市習志野台にお店を構える「こーひー豆のゆら」。メニュー表には深煎り「ほろ苦」タイプから浅煎り「爽やか」までが豊富にそろい、きっとあなたのお気に入りが見つかります。広告代理店勤務、ペンションオーナーを経てコーヒー豆の世界へ参入した松浦一人(かずと)さんにお話をうかがいました。
※記事中の価格はすべて税込み
公開 2023/08/26(最終更新 2023/12/26)

目次
店名は、古語の「響(ゆら)」から。焙煎時にコーヒー豆が奏でる音をなぞらえて
新京成線「習志野駅」から徒歩10分ほど。
薬円台公園グラウンド近くの住宅街に「こーひー豆のゆら」はあります。

開業は2004(平成16)年。
以来、約20年にわたって近隣住民を中心に支持を集め、地域の飲食店でも広く提供されるなど「ゆら」のコーヒーは根強い人気を誇ります。
その「ゆら」というやわらかな語調の名前は、どこから来たのでしょう。

古代、宝石として用いた勾玉が首元で揺れ、触れ合う微かな音を「玉響(玉が響く)」と書き、その揺れる様子から「たまゆら」と読みました。
転じて古語では「ほんのかすかな音」という意味合いで使われた「響(ゆら)」という言葉。
「豆を焙煎する時に、パチ、パチとはぜる音がします。その音をなぞらえ、妻が命名しました」
店主の松浦一人さんは、にこやかにそう話してくれました。
80年代に欧州へ移住、帰国後は福島へ。店主の「異色の経歴」を紐解く
岐阜県ご出身の松浦さんは、1985(昭和60)年、都内の広告代理店を退職し、当時2歳だった長男の雄太さんを連れ家族3人でヨーロッパへ旅立ちます。
折しも日本社会はバブル景気の兆しが見え始める頃。22時より前に退社することが稀な「がむしゃらな働き方を要求される時代」だったと振り返ります。
そんな中、日本を離れ、スイスを拠点に過ごした1年間、現地に住まう人々の暮らしや働き方、考え方を見聞きし「成長を経て、成熟した社会であると実感した」と話します。

帰国後は都内で再就職し、その後1993(平成5)年、福島県に移住。県南部に位置する西白河郡でペンション経営に乗り出します。
「妻とふたりでできる仕事を」と、探し続けて実現した事業でしたが、創業から5年目の夏、豪雨による土砂災害でペンション全壊の被害に見舞われた松浦さん一家は、奥さまの実家がある船橋へ移り住むことに。
その後、一人さんの闘病や学習塾経営を経て、2004(平成16)年、「以前から好きだった」というコーヒーの世界に参入、自家焙煎豆専門店「こーひー豆のゆら」が、習志野台の地に誕生するのです。
言葉で味わうコーヒーの魅力。人気の季節ブレンドもおすすめ
学生時代は、新聞社や出版社への就職を志望し、厳しい文章訓練に勤しんだ松浦さん。
そのころに培った文章力や言葉の感性は、「ゆら」においても活かされています。

「ゆら」の人気商品のひとつ、季節ブレンド。
「春色カフェ」「ハミングバード」「真夏の夜の夢」「こもれび」など、香りや味わいのイメージが豊かにふくらむ秀逸なネーミングも、人気を集める秘密でしょう。
取材に訪れた7月、季節ブレンド「星に願いを」を購入しました。
メニューには「夏の近づきを感じさせるブレンド」「すっきりした苦味と心地よい甘さの余韻は、ホットにもアイスにも向いています」とあります。
いかがですか?飲んでみたくなりませんか?

こちらは手軽に楽しめるコーヒーバッグ。
「ラルゴ」はイタリア語で「ゆるやかに」を意味し、また、「ゆったりと」という意味の音楽用語でもあります。
「優しいほろ苦さと香ばしさ」を「ゆったりと」味わってほしい、そんな店主の思いが込められたコーヒーバッグ。
贈り物にもおすすめです。

こちらは毎年暑い時期に好評を博すという、水出しアイスコーヒー。
凛として潔く、迷いのない口当たりは素晴らしいおいしさ!
「ゆら」で豆を購入すると、持ち帰り用のコーヒーが1杯サービスされ、アイスを選ぶこともできるのでぜひその機会にも味わってみてほしいです。
店頭にあるメニュー表を参考に選ぶこともできますが、一人さん、雄太さんと会話を楽しみながら、お気に入りに出合うお客さまも多いそうですよ。
お客さまの満足のために「ゆら」が守り続けること。カッピング評価80点以上のものを店頭へ
スーパーマーケットなどで低価格のコーヒーを手軽に購入できる今日、「ゆら」のコーヒー豆が選ばれ支持され続ける理由について、一人さんのお話をもとに考えてみました。
1970年代にアメリカで初めて提唱された「スペシャルティコーヒー」という概念をご存じでしょうか。
高品質なコーヒー豆を持続的に供給するために、生産者の利益を確保し、自然環境に配慮しながら安定した生産体制を維持すること、つまり消費者と生産者の双方に恩恵をもたらす供給スタイルを目指すムーブメントから生まれたコンセプトです。

「ゆら」が買い付けるのは、品質管理が徹底された農園産の「スペシャルティコーヒー」です。
さらに、「香りや風味を総合的に判断する『カッピング審査』において80点以上の高評価を得た豆を仕入れることで、たとえ好みと違う豆を購入したとしても、コーヒー自体のおいしさは保証されます。お客さまに満足していただくために、守り続けたい基準です」と一人さんは力強く語ります。
つまり、生産環境と、豆の特徴や品質、その両方において客観的に高く評価されたコーヒーのみを扱う「ゆら」だからこそ、お客さまとの信頼関係はより厚いものとなり、永く続いていくのだと感じました。

感染症対策として渡航制限が課された時代を過ぎ、再びコーヒー農園へ赴いて現地で買い付けを行う日も近いでしょう。
コーヒーを通して出会う人々と、その背景に脈々とつながるさまざまな物語。
深緑色に茂る葉と深紅の実、南国の濃密な雨とまっすぐな陽射し。
農園を吹き渡る風までも感じさせるような一人さんの話に魅了される「ゆら」でのひとときを、上質なコーヒーとともにぜひ味わってください。
こーひー豆のゆら
住所/千葉県船橋市習志野台4-69-11
営業時間/10時30分~18時
定休日/月曜・火曜
※祝日にあたる月曜・火曜もお休み
駐車場/3台
電話番号/047-461-7273
HP/https://www.yuracoffee.com/
インスタグラム/@yura_coffee