成田山新勝寺に続く表参道に店を構える藤倉商店は、1948(昭和23)年に創業し、現在は竹細工や木工品、籐(とう)製品を扱う専門店です。
店の歴史や大切にしていることについて、3代目の藤倉健さんに話を聞きました。
公開 2023/09/20(最終更新 2023/09/20)

閑(ひ ま)
編集&記者。佐倉市在住。閑と書いてひまです。休日は引きこもりの完全インドア派ですがロッキンは毎年全通します。運動は歩くのが限界です。★Twitter★@chiiki_hima
記事一覧へ一つ一つ丁寧に作られた商品を届ける
開業した戦後間もない頃は、コンビニはもちろん、スーパーマーケットのような生活に必要な物が何でもそろうような店はなく、ざるや熊手など生活雑貨を扱う荒物屋として、藤倉商店は始まりました。
今では竹細工、木工品、籐製品の専門店として愛されています。
海外製品も扱いますが、95%は国産で職人による手作り。
藤倉さんは「日本の職人は細かい所まで丁寧。質の高い物を長く使ってもらって、古き良き時代の文化を先の時代まで残していきたい」と話します。
特に人気商品は「竹製大根おろしダブル歯」。

栃木の伝統工芸品を参考に開発されました。
形や大きさ、歯の位置など、微調整も含め何度もバージョンアップしました。
また、店に立ち寄ったお客さんとの会話から商品のアイデアが生まれることも。
「東日本大震災の時には竹素材で抱き枕を製作しました。人間に近い丸みを出したりして、通気性も優れていたので喜んでいただけたみたいです」と藤倉さん。
繊細なニーズに答えられるのは、一つ一つを職人と直接相談し手作業で製作するからこそです。

今では誰よりも魅力を知る3代目
店を構えるのは成田山新勝寺に続く表参道。
波はあれど、参拝客や観光客で常ににぎわっていました。
そこに起きたコロナ禍はまさに未曽有の危機だったと言います。
商品によっては毎年12月から翌年3月にかけて1年分の商品を発注する藤倉商店。
「通りにまったく誰もいないなんて初めて見ました。新年のこれからって時にコロナ禍が重なって、大量の商品の在庫を抱えてしまう状況に。途方に暮れましたね」と藤倉さんは振り返ります。

それからは積極的に情報を発信しようとSNSを始め、外部の展示販売にも出店しました。
運動会の玉入れ用のかごがメディアに紹介されたことで、洗濯かごといった、これまでと違った活用法で注目されたことも。
今でこそSNSを活用するなど、職人の手作りの魅力を多くの人に伝える藤倉さんですが、店の手伝いを始めた頃は商品はもちろん、伝統技術についても全くの素人でした。
「商品の場所を聞かれても、それって何ですかってくらいからのスタートでした(笑)。材質の違いや、使い方、魅力をお客さんに伝えるには自分がまずは知らなくては、と」。
藤倉さんは仕入れ先に出向いたり、職人一人一人に会ったりと、自らの目で確かめて知識を深めていきました。
「知れば知るほど、扱っている商品の素晴らしさに気付いて。今では本当に大好きですし、ここでしか手に入らない物があるってことをもっと皆さんに知ってほしい」
職人が伝統的な工法で手作りする品々が手に入る場は、今では少なくなっています。
そのため全国でも「藤倉商店」の名は知られ、業界では「東の藤倉商店」と呼ばれることも。
藤倉さんが商品の良さを目の前にいる人へ実直に伝えることで、その魅力がより確かなものとなっています。
