「どうしてここまでできるのだろうか」

それが取材時の率直な感想でした。そのまま疑問を投げかけると、「おいしいと言ってもらえるのが一番うれしいから」という至極シンプルな答え。

最初は信じられないような気持ちでしたが、作り手の「イッちゃんとキミエ」こと齋藤一郎さん・キミエさん夫妻は本当にその一心でした。

夫婦二人三脚。真面目過ぎるほど丁寧に、手間暇かけて作られた無添加玄米カステラが千葉県香取市にあります。

公開 2023/10/27(最終更新 2024/02/29)

広田 みずほ

広田 みずほ

埼玉県生まれの千葉県民。地域新聞社で広告の企画営業、編集部を経て現在広報担当。好きなものは東南アジアとハイボール。勝田台駅周辺の酒場放浪記を書きたい。★X(旧Twitter)★@tahirom2

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グルテンフリー・無添加の手作り玄米カステラ

香取市の四季が届ける特産品を生かした「イッちゃんとキミエの田舎のケーキ」(こめ工房稲穂)
「こめ工房 稲穂」の齋藤一郎さんとキミエさん

春先にはご近所さんの庭にたわわに実る夏みかんを収穫し、銅鍋でジャム作り。

初夏になると自家製梅酒を漬け込み、夏が終わるころ、香取市特産の完熟イチジクを煮込んでジャムにします。

秋にはニンジン、そして霜が降りる前に柚子を採りに行き、またジャム作り。

一郎さんとキミエさんは、香取の四季と共に、休みなく玄米カステラに使う材料を仕込みます。

ベースとなるのは、やはり香取市にある「香取農園」のコシヒカリ玄米と「キウチファーム」の卵。

玄米は都度使う分だけを洗い、天日干ししてから自家製粉しています。ひきたての米粉を使うことで、風味豊かな玄米カステラが出来上がるのだそう。

卵は、「玄米粉との相性がいいから」と、国産飼料米を10%混ぜた飼料を食べて育った鶏の卵にこだわり、往復1時間かけて市内の養鶏場まで取りに行っています。

「地元のいいものを使えば、添加物はいらない」と一郎さん。

食品表示ラベルを見れば、素材のシンプルさに驚かされます。

膨張剤や保存料などの食品添加物はもちろん、バターやマーガリンなどの油脂類も使用していません。

それなのに食感は不思議なほどにしっとりふわっふわ。しつこさや重たさが一切なく、つい手が伸びてしまう素朴な味です。

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紫米あずきシフォン+にんじんセット
こめ工房稲穂

小豆のおいしさの秘密は香取神宮の御神水

香取市の四季が届ける特産品を生かした「イッちゃんとキミエの田舎のケーキ」(こめ工房稲穂)
「紫米あずきシフォン」

「紫米あずきシフォン」には、ポリフェノールが豊富な古代紫黒米を使用しています。

ふっくらとした小豆は、香取神宮で頂いた御神水で炊く自家製です。

「小豆がもっとおいしくなる水があるはずだ」と、あらゆるミネラルウオーターを試していた一郎さんは、ある日友人から「香取神宮で飲んだお茶がすごくおいしかった」という話を聞きます。

どうやらそれは御神水のおかげらしいと知り、早速くみに行って小豆を炊いてみると、明らかに味に違いが出たのだそうです。

以来、小豆を仕込む日は早朝から夫婦2人で香取神宮へ足を運び、リュックサックいっぱいに御神水を背負って帰ってくると言います。

「重たいけどね、少しでもおいしくなればと思って」と、全く苦労をいとわない様子のキミエさん。

小豆に限らず、「とにかくいいものを」という追求はとどまるところを知らず、どの商品にもこれ以上かけられないほどの手間をかけているため、一日に2人で焼けるのは30本程度が限度です。

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紫米あずきシフォン+柚子セット
こめ工房稲穂

まだ誰も食べたことのないものを作りたい

香取市の四季が届ける特産品を生かした「イッちゃんとキミエの田舎のケーキ」(こめ工房稲穂)
田舎のケーキ「梅酒」に使う自家製梅酒

「とことんやらないと気が済まない」と話す一郎さん。

キミエさんは、「こんな人がいてもいいでしょ」と笑います。

香取市の四季が届ける特産品を生かした「イッちゃんとキミエの田舎のケーキ」(こめ工房稲穂)
濃厚な梅の香り広がる田舎のケーキ「梅酒」は食べ切りサイズ

香取市生まれ香取市育ちの一郎さんは、以前は食品加工会社に原材料を納める仕事をしており、食品添加物も扱っていました。

しかし、自分の子どもや孫に安心して食べさせられるものを作ろうと、添加物を一切使わないお菓子作りを始めます。

米の消費量が減っている中で地元農家の一助になれればという思いもあり、米を生かしてまだ誰も作っていないお菓子を作ろうと考えた結果、たどり着いたのが玄米カステラでした。

他に比べるものもなく、ゼロから手探り。自分自身が納得できる仕上がりになるまでの道のりは長かったと言います。

「自分でどこまで作り上げられるかやりたかった。それを今も続けているんだよね」と一郎さん。

四季折々の地元食材を使うのは、地域のみんなで特産品を作りたいという思いから。

こめ工房 稲穂の玄米カステラを食べれば、香取市の農産物を知ることができます。

新作として、「根本農園 熟成焼き芋」も加わりました。じっくり追熟した根本農園のサツマイモを、キミエさんが付きっきりで石焼きし、それを一郎さんが丁寧にこして作り上げる自信作です。

一郎さんは、「おいしいと思ってもらって、香取市が目的地の一つに選ばれるようになればうれしいですね」と話してくれました。

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紫米あずきシフォン+焼き芋+梅酒セット
こめ工房稲穂

取材担当おすすめポイント
工房に伺うと、「これも食べて」「あれも食べて」と次々に試食をさせてくれました。まるで実家に帰って来たかのような温かいおもてなし。「田舎のケーキ」のふんわり優しい甘さは、まさに一郎さんとキミエさんのお人柄そのものです。

こめ工房 稲穂
住所/千葉県香取市岩ケ崎台22-8
電話番号/0478-54-0277
Twitter/@saitow_i

 

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