明治28年の創業以来、千葉県香取市にある香取神宮の参道で120年以上にわたり参拝客に親しまれている老舗和菓子屋「岩立本店」。
現在は7代目に当たる岩立大輔さんが伝統的な和菓子作りを受け継ぎながら、新たな香取名物を生み出しています。
公開 2023/11/15(最終更新 2024/03/21)

クチコミで大人気「香取神宮御神水仕立てわらび餅」

かつては店舗兼自宅だったこの場所で生まれ育った大輔さん。父親の働く姿をそばで見てきて、物心ついた時からいずれは和菓子職人となり店を継ぐことを意識していたと言います。
24歳で東京の和菓子店に就職。そこで約5年間修業を積み、30歳の時に岩立本店に戻りました。
「やるからには何か変化をもたらしたい」と考えていた大輔さんは、すぐに新商品の開発に取りかかります。
それが香取神宮の御神水を使用したわらび餅です。
和菓子作りにおいて、水はベースとなるもの。特にわらび餅は、水とわらび粉、砂糖、でんぷんというシンプルな材料から作られるため、非常に大事な要素といえます。
香取神宮の御神水が味に良い影響を与えることを体感していた大輔さんは、「こんなに近くに良い水があるのだから、地元の恵みを生かすべきだ」と考え、もっちりやわらかな食感を生み出す配合を追求。コシがありつつも、とろけるようなわらび餅に合わせるきな粉は、香り高い国産のものを厳選しました。

こうして誕生したわらび餅はテレビなどでも取り上げられ、一時は生産が追いつかなくなるほど大人気に。岩立本店の新たな看板商品となりました。

ふわふわ生地が自慢のどら焼き「香取焼」

香取神宮の鳥居の形をした持ち手がなんともかわいい、遊び心あふれるパッケージ。
中に詰められているのは、ふわふわの生地が特徴のどら焼き「香取焼」。こしあんと芋あんの2種類あります。
こちらもわらび餅に続いて大輔さんが開発した商品です。
どちらかというと粒あんの方が一般的などら焼きですが、「やわらかさにこだわった生地との相性を考え、あえてこしあんを選んだ」と大輔さん。確かに滑らかなこしあんが生地と絶妙にマッチして、口の中で溶け合います。
完成まで2年以上の月日を費やしたという芋あんは黄色と紫の2色あり、香取市の農家から仕入れるサツマイモを使用。断面の彩りが美しく、食べ比べる楽しさもあるのがうれしいところです。
そのおいしさもさることながら、思わず写真を撮りたくなるようなデザインも幅広い世代に好評で、お土産としても喜ばれています。
香取焼はこれからバリエーションを増やしていく予定とのこと。今後の展開にも期待が高まります。

香取市から和菓子の魅力を全国、そして世界へ

これまではお団子や草餅が主力商品だった岩立本店。
しかし、参道で育ってきた大輔さんは、「お客さまはお団子を買いに来ているのか、お団子しかないから買っているのか?」という疑問をずっと抱いていたと言います。
新商品開発は、そこに一石を投じる挑戦でした。
今では岩立本店の和菓子を目的に、千葉県内のみならず県外からも多くの人が訪れます。
「作る商品全部を主役にしたい」と、一つ一つの商品作りに誠実に向き合う大輔さん。
「ある日親子でいらっしゃったお客さまがいて、お母さんは『岩立本店といったらわらび餅だ』、息子さんは『いや香取焼だ』と、真剣に言い合っていたんです。あわやけんかになりそうなくらいだったのですが、私はすごくうれしかったですね。結局どちらも買ってくださいました(笑)」
大輔さんの思いは着実に届き始めていますが、「もっといろんな人に食べてもらいたい」と話します。
「地元では認知度があっても、香取市を一歩出れば千葉県内でもまだまだ知られていません。軸足は香取市に置きながら、全国、ひいては海外の方にも、岩立本店の和菓子のおいしさを知っていただきたい」
「地に足を着けて、目の前のことを大切にしながら前に進んでいきたい」と、あくまで謙虚な姿勢ながら、その視線はさらなる高みを見つめています。


まず鳥居の持ち手が付いた香取焼のかわいい箱に一目ぼれ。そして一口食べればもうがっちり心をつかまれます。香取神宮の御利益と一緒に、贈りたい人の顔が浮かぶお菓子です。
岩立本店
住所/千葉県香取市香取1896
電話番号/0478-57-3048
ホームページ/https://iwatatehonten.com/
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