お寿司の主役にはなれないけれど、子どもからお年寄りまでみんなになじみのある味、やさしい甘みのかんぴょう巻とお稲荷さん。栃木県産のかんぴょうや季節の具材を用いた手づくりの味は、SNSや口コミを通じて評判を呼んでいます。「福つぶや」齊藤夏江さんの、品格の中にも親しみやすさを感じる着物姿にも注目です。
※記事中の価格はすべて税込み
※内容や価格は取材時のものです。最新情報はSNSでご確認ください。
公開 2023/12/26(最終更新 2024/03/25)

お品書きは「かんぴょう巻」と「お稲荷さん」
いらっしゃいませ!「福つぶや」のかんぴょう巻はいかがですか?

船橋市を拠点に「福つぶや」としてかんぴょう巻やお稲荷さん、季節のおこわなどを携え、都内や千葉県内で出店している齊藤夏江さんです。
子育てが一段落し、これから何か自分にできることはないかな、と考えたときに真っ先に思いついたのが、ずっと好きで手をかけてきた料理だったと話します。
「共働きの家庭で育ったので、小さい頃から自分で料理をしていました。『おいしい』と言ってもらえるのがうれしくて」と、はにかんだ笑顔で振り返ります。
そしてもう一点、心の中にあったのが「人の役に立ちたい」という気持ち。
「人と人がつながる、その間においしい食べ物があるといいなと思っています。お客さま同士が話をするきっかけになったり、一緒に食べることでより豊かな交流ができたり。そんなお付き合いの仲立ちができたらうれしいですね」

こちらは、栃木県産のかんぴょうで齊藤さんがこしらえたかんぴょう巻です。
国産のかんぴょうの、実に9割以上が栃木県で生産・加工されています。
ご家族が栃木県出身だという齊藤さん、「主人が子どものころは、かごを背負った『かんぴょう売り』のおじさんが家々を回っていたそうですよ」とほほ笑みます。

「栃木県産のかんぴょうは、歯ごたえがある中にもやさしい風味が感じられ、栄養価も高く食物繊維も豊富。もっと注目してほしい、もっと広くみなさんに食べていただきたい、そんな思いからかんぴょう巻をつくろうと思い立ちました」
数あるお寿司の中でも、最も手間のかかる具材のひとつであり、「締め」にいただく巻物ながら「主役」にはなれないかんぴょう巻。
そこで齊藤さんは、ご自身が子どものころから大好きだったというお稲荷さんとセットで売り出すことにしました。

2022(令和4)年9月、福つぶやは始動します。
地域のカフェ、マルシェ、時に都内や横浜まで足を伸ばし出店する福つぶやは、SNSや口コミを通じて次第に評判を呼び、かんぴょう巻もお稲荷さんも毎回完売するほどに。
予約をして購入したというお客さまは「昨今は華やかな甘いお菓子なども人気がありますが、かんぴょう巻やお稲荷さんは『ここに戻ってきた』と感じる、ほっとする味ですよね」と、熱心に話してくださいました。
福つぶやのインスタグラムには「(今日はごはんを)作るのがしんどいけど、お家で食べたい。そんな時、いかがですか?」の文言。

ご自身を「普通のおばちゃん」と表現し、「たとえば一人暮らしの学生さんや、お勤めしている人、働くお母さんたち。一日がんばって、からだも心も疲れた日に『普通のおばちゃん』が作る、どこかで食べたことのある味、ほっとする味をおすそ分けできたらいいな、という気持ちで作っています」と朗らかに笑う齊藤さん。
「食べてくださった方が、おいしいね、と笑顔になる様子を思い浮かべながら、ひとつひとつ丁寧に手づくりします。自分が楽しい気持ちでいることが、おいしいものを作ることにつながると思っています」

かんぴょう巻とお稲荷さんに添える、紅しょうがと甘酢しょうがも齊藤さんの手づくり。
夏から秋にかけて、新しょうがが出回る季節にたくさん漬け込んでおくそうです。
「福つぶやを始めたころは市販の紅しょうがを使っていたのですが、やっぱり手づくりすることにしました」とほほ笑みます。
福つぶやならではの季節の味をご紹介します

こちらは初夏から秋の初めごろにかけて販売した「サラダ巻」。
「野菜たっぷり、ごはん少なめ」のサラダ巻なら、暑い日も食欲が湧きそうですね。

吹く風が冷たくなってきたころには「おこわ」が登場。
「七福おこわ」の「七」は、関東産の具材7種類を使用していることに由来します。
「しいたけ、こんにゃく、油揚げ、にんじん、ごぼう、鶏肉、そしてもちろん、かんぴょうも入っています。これで7種類。もち米も加えると8種類で、末広がり」と笑顔で話す齊藤さんに、こちらもなんだかわくわくしてきます。
七福おこわと、秋の「きのこのおこわ」をいただきましたが、どちらも素材の風味を感じられるやさしい味つけで、具だくさんのおみそ汁や豚汁といただくのが合うだろうなぁ、と感じました。
古き良き着物の、いまも息づく魅力を伝えたい

かんぴょう巻やお稲荷さんを並べて立つ齊藤さんの着物姿は、懐かしさと新しさをもって私たちの心をあたたかくするように思います。
着付け教室に通っていたころは正絹の着物を「特別な機会に、がんばって」身に付けていたという齊藤さんですが、5年ほど前に木綿の着物の魅力に出合ってからは、日常的に着物を楽しむようになったそうです。
「木綿だから洗えるし、着付けにかかる時間も15分くらい。帯留めの小物で季節感を取り入れるのもおもしろく、お客さまとの会話も弾みます。着物をもっと身近に感じていただくきっかけになればと思っています」

終始にこにことやわらかな笑みを絶やさない齊藤さんのもとには、インスタグラムで出店情報を見たというお客さまや、ご友人、お知り合いの方らが遠方からも続々と訪れ、話に花が咲いていました。
福つぶやを始めてから、印象に残っていることはありますか?とうかがうと、「地域のマルシェで出店したときに、お母さんと来ていた小学生の男の子がかんぴょう巻を『おいしい、おいしい』と何度もうなずきながら食べてくれたんです。その姿がとてもうれしかったですね」と顔をほころばせて話してくれました。
その男の子は、翌月のマルシェ開催時のかんぴょう巻を予約して帰って行ったそうです。
「私が福つぶやとして活動できるのは、まず、家族の理解があるからだと思います。それに、きっかけをくれた先輩、一緒に活動を始めてくれた友人、何かあればいつも手を差し伸べてくれる、そんな仲間たちがいるおかげで今の自分がいます。心からありがとうを伝えたいです」
大切な存在から受け取るエネルギーを、今度は自分自身が誰かに伝えていきたい、と話す齊藤さん。
「おいしい」という笑顔にしあわせをいただいています、とほほ笑む齊藤さんが心を込めて手づくりしたかんぴょう巻とお稲荷さんを、あなたも味わってみませんか。
福つぶや
ホームページ/https://fukutubuya-1.jimdosite.com/
インスタグラム/@fukutubuya