新年1月7日、木更津市中島の海岸で、若者たちが海に梵天(ぼんでん)を立てる「梵天立(ぼんでんだ)て」が行われます。

江戸時代から続くこの貴重な伝統行事を紹介します。

公開 2023/12/28(最終更新 2024/03/25)

花

48歳で普通自動二輪免許を取得したへっぽこアラフィフ主婦ライダー。千葉は魅力的なライディングスポットがたくさん!取材と称してソロツーを楽しんでいます。【ブログ】https://ameblo.jp/ohana-hann/

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災いをはらった神に感謝を表す伝統行事

木更津市 梵天
梵天は沖へ沖へと刺していきます(写真提供:木更津市観光協会)

梵天立てが行われるようになったのは300年以上前。

江戸幕府の船が中島の海に停泊した時にいかりが紛失し、地元漁師たちに盗難の疑いがかけられます。

漁師たちが身の潔白を証明するため、出羽三山の行人(ぎょうにん)に祈禱を頼むと、土砂に埋まっていたいかりが浮き上がりました。

このことから出羽三山の神に感謝を表すため、梵天を海中に立てるようになったといわれています。

下帯姿で新年の海へ 神聖で過酷な行事

木更津市 梵天立ての様子
海岸で般若心経を唱える行人たち

まだ薄闇に包まれる早朝、行人が鳴らす法螺貝(ほらがい)の音から梵天立ては始まります。

出羽三山で修業した地域の人たちが行人となり、海へは中島地区の6町内から集まった若衆(わかしゅう)と呼ばれる男子が入ります。

行人が海岸で豊漁・五穀豊穣(ほうじょう)・村内安全を祈って般若心経を唱える中、町内ごとに組を作った若衆が、下帯、たすき掛けの鉢巻き姿で梵天を順番に海中へ突き立てていきます。

木更津市 梵天立ての様子
祈禱(きとう)と声援を背に海に入る若衆(写真提供:木更津市観光協会)

梵天は浜からより遠い所に立てるのが良いとされ、後の組は前の組より沖に立てるのが習わし。

沖に梵天を立てる組になると肩まで海に漬かることも。

行事を守る中島区文化財保存会の篠田さんは「海から上がった体は冷え過ぎているためお湯に漬かれません。水から少しずつ温めていくんです」と、その過酷さを教えてくれました。

木更津市 小梵天を持つ篠田さん
小梵天を持つ篠田さん

刺した梵天は倒れるまでその場に置かれ、夏時分まで見られることもあるのだとか。

梵天には海中に立てる「梵天」の他に「大梵天(おおぼんてん)」「小梵天(こぼんてん)」があります。

儀式が終わると、大梵天は各地区にある「宿」と呼ばれる集会所に運ばれ、宿や辻々(つじつじ)魔除けのような形で1年間置かれるとのこと。

小梵天は各戸に配られ、1年間玄関先に飾られます。

かつては地元漁師の成人の証しだった梵天立て。

現在は地域の若者が若衆となって伝統を守っています。

近年では七草近くの土日に行われていますが、2024年は1月7日(日)の開催。

当日は甘酒の振る舞いもあるそう。

災いをはらった先人にあやかりに新年の海岸を訪れてみては。

梵天立て
日時/2024年1月7日(日)雨天決行 朝7時~
会場/金田漁業協同組合事務所裏
住所/千葉県木更津市中島4412

問い合わせ
電話番号/0438-22-7711
木更津市観光案内所