実家の庭にあった梅の木。
その木から取れた梅の実で、母が作る梅干しが大好きでした。
子どもの頃は「おいしい」と思って食べていましたが、大人になって塩で漬けたものだけでなく、蜂蜜や砂糖で味付けした梅干しを知り、しょっぱいだけではない味わい深さに、一層梅干しの深みにはまっています。
そんな梅干し好きの記者もうならせた絶品梅干し「味姫」は笑顔のすてきなご夫婦が作っていました。
公開 2024/03/01(最終更新 2024/03/25)

編集部 ゆりか
編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。
記事一覧へ両親から梅干し作りを引き継いで

皮が薄く、とろけるような食感で、甘さと酸味を両方味わえる梅干し「味姫」。
生産・販売しているのは梅工房「すじもと」の2代目・筋本敏郎さんです。
40年前、柏市しいの木台で両親が商売を始めました。
敏郎さんが引き継いで15年。
千葉県内のお客さんはもとより、茨城県や都内からも買いに来る人がいるほどの隠れた銘店です。


15年の中で一番つらい記憶

もともとホテルマンだった敏郎さんですが、高齢の両親に「商売を手伝ってくれ」と言われ、家業を継ぐことになりました。
両親が紀州(和歌山県)の生まれだったこともあり、小さい頃から紀州に遊びに行っては梅干し作りを手伝っていたという敏郎さん。
その時から大変だけど面白い仕事という印象はあったそうです。
ホテルを辞めて作り方を習うこと1年、父親は病気のため、急逝してしまいます。
作業にも慣れず、商売の流れも分からない不安な日々でしたが、妻・祥子さんも自分の仕事を辞めて梅干し作りに専念、2人で力を合わせて商売を軌道に乗せました。
程よい酸っぱさ、後味すっきり

すじもとで販売するのは、昔ながらの塩で漬けた絶妙な酸っぱさの「白干梅(しらぼしうめ)」と、独自味付けでまろやかな優しさが癖になる「味姫」。
日本一の梅の生産量を誇る紀州で育った梅の木から、完熟し、自然落下した梅の実を使用。
塩だけで作る白干梅を熟成させ、マイルドな味わいになってから味姫を作り始めます。
白干梅から塩分を約半分に落として、三温糖とかつお節などで丁寧に味付けされた味姫は、ごはんのおかずにも、お茶請けにも合う味です。

重労働でも「おいしい」という言葉が聞きたくて

味姫の漬け込みは手間と体力がいる作業。
1回に漬け込む量は550~600kgで、2,000lのタンクに一気に漬け込みます。
作業場は冷暖房がなく、夏場は過酷な暑さの中、冬場は冷たい水で手がかじかみながら黙々と梅を漬け続けます。
梅干しの大きさや果肉のかたさにより、漬け具合を微調整するなど、味を安定させる工夫も欠かせません。
それでも「ホテルマンの時代より、こちらの仕事の方が性に合っている」という敏郎さん。
その隣で「お客さんの『おいしい』という言葉がすごくうれしい。その言葉で頑張れる」とチャーミングにほほ笑む妻の祥子さん。
「健康で長く続けて、もっと地域のお客さんに知ってもらい、お客さんに満足してもらえるようになりたい…」
そんな夫婦の願いが込められた梅干しです。



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