「こんなおいしいモンブラン食べたことがない。ずっと食べていられる!」
目を丸くしながら中学生の娘が言いました。「それでは」と私も食べてみると、どっしり濃厚な舌触りの中に、ふわっとした軽やかな甘さで、部屋中に広がる幸せ気分。思い出したのは「甘い物を食べながらけんかする人はいない」という、グランドルチェ代表取締役の橋口友彦さんの言葉。ロングセラー商品のモンブランはさる事ながら、新商品の本八幡カステラも注目のグランドルチェに取材に行ってきました。
公開 2024/04/19(最終更新 2024/04/19)

編集部 ゆりか
編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。
記事一覧へ甘さすっきり40年以上愛される味

栗の形にも似た、かわいらしいフォルムのモンブラン。このモンブランは千葉県市川市を中心に7店舗展開する、グランドルチェの不動のロングセラー商品です。グランドルチェの前身、「ドルチア」は老舗ケーキ屋として、1970年から地元で愛されてきました。
店が閉店するときには、「ドルチアのモンブランが食べられなくなってしまう」とお客さんから惜しまれる声も多く、店の再開を望むお客さんと従業員の熱意に後押しされるように、2018年グランドルチェとして再スタート。ドルチア時代から働いているベテランスタッフを中心に、現在も変わらぬ味を守り続けています。


こだわり抜いたスポンジを土台に
グランドルチェのモンブランはプレーンとチョコレートの2種類。一番人気のプレーンのモンブランは濃厚なマロンペーストの中に、カスタードと生クリームを合わせた、すっきりとした甘さのクリームがたっぷり。クリームの下の土台はグレープシードオイルを使ったヘルシーで軽やかなスポンジのロールケーキです。
もう1種類のチョコモンブランはチョコマロンペーストの中に、ビター&ミルクのチョコクリーム、土台はチョコスポンジのロールケーキと、存分にチョコレートの風味を楽しめます。

そして、どこか懐かしさを感じる優しい味の決め手は、ペーストに含まれている「あんこ」。日本人の味覚になじませるための工夫がここにあります。
スポンジの焼き加減が「30秒遅い」と言われ

このモンブランは天才といわれたドルチアの初代オーナーパティシエ・木村修さんが考案。以後少しずつ改良を重ね、10年ほど前に今の原材料に落ち着きました。通常メレンゲが土台のモンブランが多い中、ロールケーキを土台に使っているのは木村さんがこだわり抜いたスポンジの味を大切にしているからです。
木村さんのスポンジへのこだわりは秒単位で焼き具合を指示するほど。ベテランパティシエの西野泰則さんは「『焼き加減が30秒遅い』と言われ、他店ではそのように言われたことがなかったので、衝撃を受けました」と話します。でもそれが大事な基礎の一つとなり、味の継承につながったそう。
「えっ!」笑顔で会話が始まるカステラ

そんなグランドルチェに昨秋より登場したのが「本八幡カステラ」。「笑顔になれる千葉の銘菓を作ろう」という橋口さんの思いを受けて誕生しました。開発した西野さんは千葉の特産品を加えようと試行錯誤する中で、「しょうゆ」をひらめきます。
創業者がこだわり抜いたスポンジを受け継ぐカステラに、「野田のしょうゆ」を隠し味として加えるという斬新な発想。香ばしい香りとしっとり感が病みつきになるおいしさで、和と洋の見事なコラボによって、誰もが驚く傑作が出来上がりました。
お土産に持って行けば「カステラにしょうゆ?」ときっと会話も弾むはず。試食の段階では評価がはっきりと二つに分かれましたが、そんな個性ある味にこそ多くの人を引きつける魅力があると、お店として商品化を決めたそうです。

お菓子作りは人を幸せにする仕事

今後は手軽なおやつの開発にも力を入れたいと話す橋口さん。「ケーキは人を喜ばせる、幸せの塊のような商品。ここで働く人は『人を喜ばせたい』という真心で仕事を選んだ人ばかりです」と職人さんへのあふれる愛と尊敬を語ってくれました。グランドルチェのお菓子を頬張ったときに湧き上がる幸福感…なるほど、そこに秘密があったのでしょう。
