北印旛沼にいつの間にかすみ着いたモモイロペリカンのガー君は、この30年ほど、優しい漁師たちから魚をもらって生きています。
公開 2024/05/29(最終更新 2024/05/27)

ガー君のおうちは漁師の舟
このモモイロペリカンは漁師たちから「ガー君」と呼ばれています。

ネットでは「カンタ君」という名も見受けられますが「カンタ君と呼んでも来ないよ」と漁師は言います。
北印旛沼を訪ねた日、ガー君は何度も水しぶきをあげながらパールオレンジの翼を広げて水浴びをしていました。
それが終わると、すいすいと泳いで岸辺の舟にひょいと乗りました。
ここがガー君のすまいです。

この舟の持ち主は、漁師の平山孟夫さん、芳夫さん、利一さんの3兄弟です。
ガー君はどこから来て、何歳なのか、雄か雌かも分かりません。
30年ほど前に印旛沼にやって来て、漁師たちが世話をしています。
最初は故須藤源治さんが、そして故松本光男さんが、その後は、平山さんたちが面倒を見ています。
ガー君は一年中、雪が降っても、水が凍ってもここで過ごします。
本来は暑い場所を好む鳥ですが、環境に適応したようです。
禁漁期間でも生きた魚をあげる
ガー君は生きた魚しか食べません。
漁がある時は一緒に舟に乗り、余った魚をもらいます。

印旛沼名物の雑魚の佃煮の原料になるモツゴが大好き。
でもモツゴが育つ5月・6月の禁漁期間は、モツゴを取れません。
そこで、ガー君のために特別に許可された定置網にかかった魚をあげています。
漁協も含めて地域全体でガー君を見守っています。
ペリカンとして長寿のガー君。その魅了は?
ある時、ガー君の足が腫れていることがありました。
平山さんたちは動物病院に連れて行きましたが、野鳥は診てくれません。
知り合いの看護師のアドバイスで抗生物質入りの軟膏を塗って治したことも。
ペリカンの寿命は飼育下で約30年。
三男の利一さんによると、「終末期を迎えたペリカンはピンク色が抜けて真っ白くなるけど、ガー君はまだまだ大丈夫」と話します。

ガー君がここまで人を引きつけるのは、ペリカンの人懐っこい性格だけでなく、見守る漁師たちとガー君の適切で心温まる関係によるものではないかと感じました。(取材・執筆/夕凪)
