鎌ケ谷産業フェスティバルに行くと、有名テーマパーク並みの行列ができているブースがありました。なにごとか?と思って先を覗いてみると冷凍箱詰め中華まんの販売中。毎年2時間待ちの行列ができるほどの人気っぷりです。鎌ヶ谷産業フェスティバルは年1回なので、普段は工場にわざわざ買いに来る人がいるほど地元では愛されている中華まん。その秘密を取材しました。
公開 2024/07/16(最終更新 2024/07/16)

編集部 ゆりか
編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。
記事一覧へ鎌ケ谷市が拠点の中華まん専門メーカー

大きくて具沢山、フワフワジューシーな中華まん「華豚包(はなとんぽう)」を製造するのは鎌ヶ谷市を拠点とする東葛食品です。
中華街で売られているようなどっしりとした大きさで、食べたときにジュワッとあふれ出てくる肉汁、決して濃くはないのに肉のうまみと玉ねぎの甘みがダイレクトに感じられる優しい味付け。
この商品は1997年に東葛食品の自社ブランド商品として開発されました。

「期待を越える中華まんを」という思いで開発

東葛食品は1966年に田澤進二郎さんが創業、スーパーなどの他社ブランドの中華まん製造(OEM)を請け負ってきました。
華豚包を開発した1990年代、中華まんは秋冬限定商品で、OEMでは価格の安さを求められて製造することが多く、経営も厳しい状況に追い込まれていました。
そこで「年間を通して販売してもらえるような、おいしくて魅力的な商品」の開発を目指し、「大きさでもおいしさでも期待を越えたい」という思いを念頭に、自社の中華まん製造に乗り出します。
開発当初は大きい中華まんを製造できる機械が無く、リスク承知で自分たちで機械の改造や改良を重ね、生産にこぎ着けました。

安さよりもおいしさにこだわり、具となる荒挽き肉はカナダ産の肩ロース肉と腕肉を使用、そこに臭みがなくコクがある背脂も足し、肉のうま味が凝縮した味わいに仕上げました。
外側の皮は強力粉と中力粉の2種類を配合、ドライイーストではなく、風味の良い生イーストを使い、ふんわりとした食感を実現しました。

父親の事業を引き継ぎ急成長、工場も増設へ

華豚包は「おいしい」と評価され、売り上げを順調に伸ばすものの、機械が1台しかなく供給不足に陥る時期も。
成型機を追加購入したり、営業に奔走したりと努力の甲斐あって、その後全国に販売開始。
そんな中で創業者の息子・理一郎さんが事業を引き継ぎます。
理一郎さんの代になってからはお客さんやお得意さんの「こういう中華まんが店に並んでいたらうれしい」というニーズをつかんで、まんじゅうの形状を変えたり、新しい商品の開発にチャレンジしたり、従業員数を増やしたりと改革を進め、出荷個数を増やすために白井工場も増設しました。

ニーズをくみ取り、地元でも愛され

食生活の変化や企業努力もあり、季節商品だった中華まんは年間を通して販売してもらえる商品へと成長。
個包装で手軽に温められ、肉や野菜、炭水化物を含んだ栄養バランスの良い食品として、子どもから高齢者まで幅広く食べられるようになりました。
最近では鎌ヶ谷市の梨の果肉入り肉まんをふるさと産品として製造。
また華豚包は鎌ケ谷市のふるさと納税返礼品としても人気の品になっています。
2017年には千葉県が地域貢献する中小企業を表彰する「千葉のちから」中小企業表彰を受賞しました。

「できない理由は考えません。できる方法を考えます」というモットーの通り、有言実行を守った一品。
期待を越える幸福感に心も体も温まることでしょう。

★この記事で紹介した商品は地域新聞社が運営する通販サイト「ちいきの逸品」で購入できます