口の中に痛みなどの症状が出ると、まず歯科を受診する人は多いでしょう。しかし異変の原因が口の中にない場合は、続けて他の診療科の診察を受ける必要があります。
※この記事は船橋市立医療センター・船橋市西図書館共催による医療講座「歯科診療後、医科受診が必要となる疾患」(講師/同センター歯科口腔外科 村野彰行氏)を参考に作成しました。
公開 2024/07/30(最終更新 2024/12/19)

編集部 R
「ちいき新聞」編集部所属の編集。人生の大部分は千葉県在住(時々関西)。おとなしく穏やかに見られがちだが、プロ野球シーズンは黄色、Bリーグ開催中は赤に身を包み、一年中何かしらと戦い続けている。
記事一覧へ複数の診療科の受診が必要な症状もある
口の内外に現れる痛み、出血、ただれ、乾燥などの疾患は、必ずしも口腔内に原因があるとは限りません。
脳や血管、神経など、体の他の部分の異常によって引き起こされる場合もあります。
中にはストレスや不安が原因だったり、脳腫瘍や脳梗塞といった重病が隠れていたりするケースもあり、歯科や口腔外科の分野でないことも少なくありません。
天疱瘡やシェーグレン症候群といった自己免疫疾患による病気もあります。

歯科を受診して「歯科疾患ではない」と診断されたら、皮膚科や脳神経外科、精神科や心療内科など症状から疑われる疾患の該当科を受診し、原因を特定して治療しましょう。
本記事では比較的患者の多い「舌痛症」と「三叉神経痛」を取り上げました。
舌痛症

【症状】
診察や検査では異常が見られないのに、舌に慢性的な痛みやしびれ、違和感などの自覚症状を訴える病気です。
食事中や集中している時には痛みを忘れていることが多く、睡眠にもほぼ影響を及ぼしません。
歯科での治療がきっかけで発症することもあります。
患者の約8割は女性で、50代から70代に多く見られます。
【原因】
痛みを感じる原因は明確に特定できませんが、脳のトラブルによるものと言われています。
「舌がんでは?」という恐怖や心理的ストレスが関係することもあります。
【治療】
精神科や心療内科での薬物療法や心理療法が行われます。
三叉神経痛
【症状】
三叉神経(下図)が血管に圧迫され刺激されることで、顔面に電気が走るような激しい痛みを感じる病気。

洗顔、会話、食事、ひげそり、歯磨きなどの際に、ある特定の場所に触れると発作的に痛み、数秒から数十秒で治まります。
発作は時々起こりますが、発作と発作の間は全く痛みがありません。
【原因】
動脈硬化で蛇行した血管が三叉神経を圧迫することで起こります。
血管だけでなく、脳腫瘍や脳梗塞、動静脈奇形の可能性もあります。
【治療】
脳神経外科で対応。抗てんかん薬などが使われます。

日ごろから口の中の状態を観察することも大切です。
舌の上皮が厚くなることで白く見える「白板症」は、がん化する恐れがある状態ですが、痛みはありません。
下図のように舌の表面だけでなく裏側や唾液腺などもチェックして、異常を見つけたら口腔外科などに相談しましょう。
