「ターシャの庭だ…」
千葉県香取市の自然に囲まれ、よく手入れされた庭に臨む1軒の古民家を初めて訪れた時、心が躍りました。ここで藤﨑美希さんが手作りするスコーンもまた、彼女が憧れる絵本作家でガーデナーの「ターシャ・テューダー」が築き上げた庭のごとく丁寧な仕上がりで、多くの人から愛されています。
公開 2024/08/07(最終更新 2024/11/01)

西日差す原風景が浮かぶ焼き菓子

「水郷菓子工房 花押(KAO)」を営む藤﨑美希さんは、四国出身。
「60歳になったら喫茶店をやりたい」というのが、昔からの夢でした。
しかし、香取市でとある古民家物件に出合った瞬間に、その夢は一気に加速。
障子に施された美しい組子細工に懐かしさを覚えた美希さんは、即購入を決めたと言います。
「寄り道をせずに、今本当にやりたいことをやろう」と、古民家をDIYし、そこでお菓子作りを始めました。
美希さんは、「四国の実家と祖母の家を足して2で割ったような雰囲気だったんです。日の当たり方もよく似ていて」と話します。
イチゴ好きな美希さんのためにイチゴの苗を植えてくれ、アルミはくに包まれたバターケーキをいつも用意してくれていた祖母。
そんな「おいしい記憶」と共にある原風景が、お店づくりにも、お菓子たちにも反映されています。

香取市で古民家カフェをオープン

料理を学びながら喫茶店を開く資金をためようと、地元・四国で修業先を探したものの、当時女性を弟子入りさせてくれる飲食店はなかなか見つからず、なんと自ら居酒屋を始めたという美希さん。
結婚を機に千葉県に移り住んでからも、ホテル内のカフェなどで働きながら経験を積みました。
そんな持ち前の行動力と、古民家との出合いが美希さんの運命を動かしましたが、古民家購入の矢先にコロナ禍に見舞われたこともあり、まずはシフォンケーキのネット販売からスタート。シフォンケーキを買ってくれた人へサービスでスコーンを付けたところこれが大好評で、お客さまからの熱烈な要望を受け、スコーンも商品化されました。
そして2024年5月、念願のカフェをオープン。
カフェでは、季節ごとに生き生きと輝く庭を眺めながら、美希さんが作るスイーツやランチを楽しむことができます(金・土・日・祝の午前10時~午後5時まで営業)。


「絶対に4回以上畳まない」からこそのホロホロ感

美希さんのスコーンは小さめの四角で、多少不ぞろいなのが特徴。
そこにおいしさの秘密があります。
四角いのは、エッジがあった方がより食感を楽しめるから。そして、最後まで飽きずに食べ切れる絶妙なサイズになっています。
スコーンは生地を折り畳むことで層を作りますが、美希さんが折り畳む回数は必ず4回まで。それがベストなホロホロ感を生み出すため、形を均一に整えることよりも、忠実に「4回」を守ることを大切にしているのです。
また、付け合わせとの相性にも並々ならぬこだわりが。
ジャムと合わせる用の「ぷれえん」、オリジナルブレンドのメープルベースシロップと合わせる用の「きび糖」と、わざわざ作り分けています。その違いが織りなす甘みや香りの見事なバランスは、ぜひ食べ比べてみてください。
手作りのジャムは、季節によってイチゴとブルーベリーの2種類が登場。共に香取市産のものを使用しており、イチゴはしっかりと酸味がある「アイベリー」一択。あえて果肉を残しているので、リッチ感のある味わいです。濃厚なブルーベリーは、美希さんが農園に足を運び、自ら手摘みしています。
自宅でいただく場合は、そのままでも十分おいしいのですが、オーブントースターで香りが立つまで(2分半程度)リベイクするのがおすすめ。冷凍保存も可能です。
美希さんのスコーンを味わった時、皆さんの目にはどんな風景が浮かぶでしょうか。

お庭から古民家内に配置されている調度品まで、美希さんのセンスが随所に散りばめられたすてきな空間。そこから生み出されるスコーンは、素朴さと繊細さを兼ね備えていて、誰もが心の中に持っている「懐かしさ」を呼び起こすような気がします。
水郷菓子工房 花押(KAO)
住所/千葉県香取市堀之内1681
電話番号/090-3789-0025

