「みんなが一緒に食べられる商品を作ろう」と発起して株式会社八十八研究所代表の駿河かおりさんが開発した米粉のラーメン「あかり」。食事の大切さを痛感している駿河さんがメッセージを込めて作り上げた逸品を取材しました。

公開 2024/08/21(最終更新 2024/12/23)

編集部 ゆりか

編集部 ゆりか

編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。

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インスタントラーメンと同じように調理できる

八十八研究所 専用工場で調理、麺もスープもグルテンフリー
専用工場で調理、麺もスープもグルテンフリー

スープを全部飲み干しても塩分が2g程度という米粉のラーメン「あかり」。

「慢性腎臓病の人や小麦アレルギーの人も一緒に食べられるラーメン」をコンセプトに、株式会社八十八研究所代表の駿河かおりさんが開発しました。

5分半麺をゆでて、付属のスープをお湯で溶かすだけで、インスタントラーメンと同じように簡単に食べることができます。

スープはしょうゆ、みそ、とんこつ風の3種類があり、塩分控えめとは思えないコクのある味わいで、つるつるの麺にもよく味が絡みます。

駿河さんは10年ほど前にグルテン不耐症を発症、小麦粉を含む食品を食べられなくなりました。

自身の体の要求に合わせて、米粉に興味を持った駿河さんはさまざまな米粉レシピを考案、同じ悩みを抱えた人向けに米粉の料理教室OrangeSpoon(八千代市)を開催するようになります。

その中で米粉の研究や製粉会社との付き合いは徐々に深まっていき、「あかり」を開発する礎となりました。

慢性腎臓病の夫を支え 塩分制限して作り続けた食事

八十八研究所 八千代市産の米で米粉を製造
八千代市産の米で米粉を製造

また駿河さんの夫は子どもの頃から慢性腎臓病で、塩分摂取量は1日3~4gと制限されていました。

一般的な成人男性の塩分摂取量は一日10g以上というデータがあり、インスタントラーメンの塩分量は1杯約5~6gが平均的。

ラーメンを食べるのは夢のまた夢でした。

夫には塩分制限をしたお弁当、食べ盛りの2人の子どもにはボリューム満点のお弁当を作るなど、家族全員で同じ物を食べられない状況が長く続いたそうです。

2018年には深刻な腎不全を患った夫に腎臓を移植。

食事を準備する負担が大きかった自身の経験から「わが家でもみんなが一緒に食べられる商品を作ろう」と思い立ったそうです。

身をもって体感した「食は生きること」を伝えたい

麺の原料には地元八千代市のコシヒカリを使用し、太さ、食感、ゆで上がるまでの時間など、納得いくものになるまで何度も試作を繰り返しました。

つるっとした食感で喉越しが良く、麺がべたつかないのでラーメンとしてだけでなく、ゆでた後に炒めてパスタや焼きそばなどにして食べることもできます。

八十八研究所 ナポリタン風に調理
ナポリタン風に調理
八十八研究所 焼きそばでもOK
焼きそばでもOK

パッケージに描かれた絵は国籍を超えた子どもたちや、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、お父さんなどいろんな人が食卓を囲んでにこやかに食べている絵。

「作る側にとっても幸せで、みんなで食べられることがもっと幸せになるように」という駿河さんの思いを受けて、地元八千代市の油彩画家・林美蘭(りんみらん)さんが描きました。

「夫と結婚して20年以上、『食は生きること』と感じ続けてきました。慢性腎臓病の患者さんは予備軍も含めると8人に1人いるといわれているので、『あかり』を通じて健康の大切さ、食事の大切さを伝えていきたい」

「あかり」は食事の大切さを痛感している駿河さんがメッセージを込めて作り上げた逸品です。

必要な人に届きますように。

八十八研究所
みんなが一緒に食べられることをイメージしたイラスト