今回の「房総低名山」は、大黒山(だいこくやま)。

安房郡鋸南町にある標高75mの山です。

鋸南町の南に位置する勝山地区は、江戸時代から明治時代初期にかけて捕鯨(主にツチクジラ)で大変栄え、大黒山は手旗信号で鯨の様子を伝える鯨見の山でした。

房総捕鯨の祖・初代醍醐新兵衛(だいご しんべえ)の墓所も、少し登ったところにあります。

JR安房勝山駅からのピストン(往復)で、約1.2km、大体40分の道のりでした。

今回は低山…「超」低山ですが、しっかりしたハイキングの格好で行きましょう!

公開 2025/07/27(最終更新 2025/07/30)

晴山ノコ

晴山ノコ

千葉県出身・在住。仕事の休みに低山を登る、初心者ハイカー。学生時代の体育の成績は「2」。X(旧Twitter)アカウント/@mt_chiba

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スタートはJR安房勝山駅から

JR内房線で安房勝山駅に到着。

2024年7月に、日本郵便による業務委託駅(=郵便局員が、運転以外の駅員業務を行う駅)としてリニュアールオープンしました。

安房勝山駅

とてもきれいな駅舎!

どんなに短時間のハイキングでも、トイレは事前にしっかり済ませておきたいところ。

ただし、多目的トイレしかないので、譲り合ってお使いください。

安房勝山駅
観光案内所

駅舎を出ると、右手前に観光案内所があります。

周辺の地図やパンフレットが置いてあるので、ぜひ立ち寄ってみてください。

駅チカ超低山、大黒山登場!

駅を出たら最初の横断歩道を渡り、2分ほど左方向に歩いていくと、すぐに右手側にお椀を伏せたようなぽっこりした山の姿が見えてきます。

大黒山

今回はGWということもあり、グループで行きました。

ちなみに、二人のお目当ては内房の海沿いでのビーチコーミングと道の駅巡りです。

そのまままっすぐ橋を渡り、右に曲がります。

案内

案内が分かりやすくてとてもありがたいです。

案内に従って進んでいくと

登山口

あっという間に登山口に到着。

緑生い茂る登山道へ

いよいよここから登っていくのですが

階段そして草

山頂にある展望台まで階段が整備されていますが、序盤からかなりの急登です。

それよりも、房総の山あるある(低山あるある)ですが、初夏から夏にかけて草が生い茂っています!

以前、なぜか夏の真っただ中に登ってしまった富山(とみさん)もそうでした。

房総の山のベストシーズンは、冬~春、と思っている私。

夏場は熱中症の危険もありますので、体力に不安がある方は無理せず冬~春に登ってください!!

※初夏から秋の初めにかけての房総の山々は草木が元気に育っているため、切り傷や虫刺され(特にハチ、マダニ)を避けるため、真夏でも長袖・長ズボン、帽子と手袋の着用をお勧めします。

房総捕鯨の祖・醍醐新兵衛の墓所

登り始めると、すぐに醍醐新兵衛の墓所があります。

墓所
墓所

大黒山を登るまで千葉の捕鯨は外房・和田浦の認識しかなかったため、勝山で捕鯨が行われていたことは今回初めて知りました。

醍醐家は房総の海で沿岸捕鯨を行っていた船団を組織化して大きくし、それにより勝山は江戸時代を通じて捕鯨の里として大変栄えたということです。

さらに、醍醐家の8代定緝(さだつぐ)、9代定固(さだかた)は藩命により蝦夷、樺太に渡り、その知識を持って北洋の漁場開拓に貢献し、10代徳太郎(とくたろう)は伊豆大島に洋式捕鯨を展開しました。

(参考:醍醐新兵衛 – Wikipedia

地元勝山の発展だけでなく、日本の漁業発展に力を尽くした郷里の偉人たちに思いを馳せながら、私たちも気合を入れ直して登って行きます。

ゆっくり歩こう階段道

登山道

標高は75mしかありませんが、それだけに結構な急勾配です。

普段山を登らない、同行者に合わせてゆっくり登ります。
(むしろ、2~4月の仕事の繁忙期が堪えて運動不足だったため、ちょうどよかったくらいでした)

登山道
登山道

新緑がまぶしい。

そして暑いです。

この日の最高気温は25℃でしたが、5月5日にして初夏を感じました。

登山道

最後の階段を登りきると

展望台

展望台に到着。

お疲れ様でした、山頂です!!

写真の後姿は同行者です(普段まったく運動しないそうですが、急な階段を涼しい顔でスタスタ登っていました)。

20分で絶景!! 房総の海と山々

さらに展望台の階段を上ります。

展望台は360°ビュー!!

ぐるぐる歩くと、海側も山側も見渡せます。

まずは海側の眺めから。

山頂からの眺め

駅から20分でこの景色!!

展望台からは、鯨漁で合図を送り合った場所がよく見えます。

勝山城跡(のろし山)、大房(たいぶさ)岬、洲崎(すのさき)。

視線を右に向けると、浮島、大ボッケ・小ボッケが。

山頂からの眺め

浮島の近くは急激に深度が増しており、ツチクジラの回遊路「鯨道」と呼ばれていたそうです。
こういうことも、大黒山を登らなければ調べなかったなあ。

続いて山側。

山頂からの眺め

左から、房総の武甲山(※)ともいわれる津辺野山(つべのやま)。

その隣に、どこからでも一目でそれと分かる、房総が誇る美しい双耳峰(そうじほう)の富山(とみさん)。

また、津辺野山と富山(とみさん)の間をよ~~く見ると、ほんの少しだけ伊予ヶ岳の「先」が見えます。

※武甲山(ぶこうさん)…秩父盆地の南にある、標高1,304mの名峰。北側が石灰岩質のため採石が盛んに行われており、地元にとっては産業の山でもある。採石により旧山頂は既に失われており、年々その姿は著しく変化しています。

海もいいけど、私はやっぱり山が好きだなあ~~

ベンチ

やや狭いですがベンチもあるので、房総の海と山をゆっくり眺めていきましょう。

大黒様

海と山の眺めを満喫したら、そろそろ下山。

元来た道を戻りますが、登山中の怪我は上りより下りのほうが圧倒的に多いと聞きます。

超低山だから、階段だから、といって駆け降りたりせず、慎重に歩きましょう。

階段も登山道も幅が狭いので、すれ違い時の譲り合い、大事です!!

大黒山は、ぜひ「セット散策」で

登山口まで戻ってきて時間を確認すると、出発してからまだ30分しか経っていません。

私たちはビーチコーミングや道の駅巡りをしながら、JR保田駅に行きました。

途中、道の駅で食べたソフトクリームがおいしくて、同行者もほっこり。

大黒山は、「山」として紹介するには少々ボリューム不足かもしれませんが、地元の方々の生活や産業と深い関わりのある山があること、また、地元の発展に力を尽くした人たちがいたことを知っていただきたいと思い、紹介させていただきました。
夏は海遊び、春と秋は海沿いハイキング、冬は水仙めぐりと併せての散策がおすすめです。
季節に合わせたプランで、ぜひ大黒山に足を運んでみてくださいね!