毎年、地元の小学生が社会科見学に訪れる老舗「豆処生形(まめどころうぶかた)」。ころんとした形がかわいらしいカラフルな「バラエティーピーナッツ」は、さや付き落花生と並ぶ大人気商品です。

公開 2025/08/21(最終更新 2025/08/05)

編集部 ゆりか
編集部所属の取材記者。白井市出身、船橋市在住。コンテンポラリーダンス、ヨガ、ズンバ、バレエなどとにかく踊るのが好き。取材執筆も好きだが、地図が読めないため取材前はいつも軽く迷う。食べ盛りの夫と3人の子育てに奮闘中。
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開拓民だった先祖が始めた落花生栽培
千葉県八街市の落花生店豆処生形の始まりは、戦前にさかのぼります。
当時は、お茶の製造・加工が中心でした。
「先祖は、明治の初めに東京の清瀬から八街に開拓に入ったんです。ご存じのとおり八街は風が強いから、風よけとしてお茶の栽培をする家が多くてね。戦後になると、砂地を生かして落花生栽培が盛んになりました」と、3代目社長の生形健一さんは話します。
豆処生形も、35年ほど前まではお茶と落花生加工の二本柱だったそうです。
特約農家から厳選した落花生を買い付け

落花生屋の繁忙期は、11月からお歳暮のシーズンにかけて。
豆処生形では、10軒ほどの特約農家などから厳選した落花生を買い付け、選別、焙煎(ばいせん)、加工を行います。
「社長と10月に結婚してすぐ、家族そろって夜なべする忙しさで、びっくりしました」と、妻の淑子さん。
さや付きは、風味とコクのバランスの取れた千葉半立(はんだち)、さっぱりした甘みが人気のナカテユタカ、約20年を費やして誕生した新種のQなっつ、そして大粒でゆで落花生に適したおおまさりの4種類を扱っています。
豆の選別は、熟練の技が不可欠。80代の女性などベテランが多く活躍しているそうです。

世間をあっと言わせたバラエティーピーナッツ

さや付きと並ぶ豆処生形の看板商品が、色とりどりのバラエティーピーナッツ。
その名のとおりピーナツにさまざまなフレーバーを付けたもので、そのカラフルさはフランス菓子ドラジェのよう。
およそ30年前から取り組む商品で、「さや付き、味付き、バタピーがほとんどの時代に、画期的な商品でした」と、健一さんは胸を張ります。
その看板商品が、健一さんが店舗の片隅に機械を持ち込んで、出入りの油問屋の人にコーティングの技術を相談しながら、ひっそり開発されたというから、驚きです。
第1号は、チーズピーナツ。
淡いオフホワイトの粒を一つつまんでみると、チーズの香りと甘さと塩味をピーナツがまとい、口の中でほどけます。
これは、お茶にもコーヒーにも、ビールにも合いそう!

味にこだわった本格的なフレーバーは原料選びから

続いて誕生した抹茶は、製菓用ではなくて茶道でも使われるグレードのものを当初から使用。
根強い人気のいちごは、開発当時、日本にはイチゴパウダーが見当たらず、フランス産のものを使っていたそうです。
現在は、常時15のフレーバーが並び、冬になると八街の高級チョコレート工場「グランプラス」味が加わります。
うまくいかなかったフレーバーを尋ねると、「ホウレンソウやカボチャなどの野菜、それからヒジキなどの海産物ですね」と健一さんは答えてくれました。
「4代目」が女性目線の「かわいい」を提案

健一さん、淑子さん夫妻を支えるのが、「4代目」となる長女・信子さんの存在です。
大学卒業後、レジャー関係の仕事をしていた信子さんですが、10年前に次女・友理さんと共に入社、現在はネットショップの運営や看板猫のこまめちゃんが活躍するInstagramでの発信、事務のシステム化などを一手に引き受けています。
バラエティーピーナッツの小袋は、若い女性を意識した信子さんの提案とのこと。
父の健一さんの思いがこもった商品を、新しい客層に届けています。
地元の人にもっと落花生のおいしさを知ってもらいたい
最後に、信子さんにお店のこれからについて聞いてみました。
「若い人にももっと、落花生を気軽に手に取ってもらえるようにしたいです。意外と地元・千葉の人って落花生を食べないんですよね。これからも両親と力を合わせて、おいしい落花生をどんどん知ってもらえるようにしたいと思っています」
