元気に年を重ねることは、多くの人たちの願い。そのためにポイントとなるのが免疫の働きです。

お話を聞いたのは…

シニア世代こそストレスが大敵なワケ 奥村 康さん
順天堂大学医学部特任教授/アトピー研究所所長 奥村 康(こう)さん
1942年生まれ。千葉大学大学院医学研究科修了。医学博士。サプレッサーT細胞の発見者として知られる免疫学の国際的権威。『免疫力こそすべて!「不良老人」のススメ』(ワック刊/1,100円)など著書多数。

公開 2025/09/10(最終更新 2025/09/05)

編集部 モティ

編集部 モティ

編集/ライター。千葉市生まれ、千葉市在住。甘い物とパンと漫画が大好き。土偶を愛でてます。私生活では5歳違いの姉妹育児に奮闘中。★Twitter★ https://twitter.com/NHeRl8rwLT1PRLB

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体を健康に保つ大切な細胞たち

免疫とは、体を健康に保つシステムのこと。

人間の体には、異物から体を守る仕組みがもともと備わっています。

その機能を持つのが白血球で、白血球の中でも外から侵入したウイルスや細菌などと戦うのがリンパ球。

さらにリンパ球のうち、T細胞とB細胞と呼ばれるものは、いわば体という「国」を守る「軍隊」のような存在です。

平熱時は活動しませんが、いざ、ウイルスに感染すると、T細胞とB細胞が敵を攻撃して排除。

風邪の時に熱が出るのは、彼ら「軍隊」が戦っている証拠なのです。

T細胞とB細胞は加齢の影響を受けづらく、いくつになってもしっかりと働いてくれます。

リンパ球にはもう一つ、大切な役割を担うNK(ナチュラルキラー)細胞があります。

T細胞とB細胞が「軍隊」なら、NK細胞は「おまわりさん」。

常に異変はないかと目を光らせて、体内の治安を守っています。

「ほとんど風邪をひかない」という人は、NK細胞の力が強い=NK活性が高いといえるでしょう。

それだけではありません。

体内では、1日1兆個もの細胞が作られ、そのうち5000個程度は不良品、要するにがん細胞のもととなる異型細胞です。

この不良品を見つけてやっつけるのも、NK細胞の大事な仕事です。

そんな頼もしい「おまわりさん」ですが、T細胞やB細胞とは異なり、加齢の影響を受けます。

60歳を過ぎるとその活性が低下します。加えて、ネガティブなストレスにさらされることでも元気を失います。

NK活性が高い高校生でさえ、定期テストの前はそのストレスにより数値が下がるほど。裏を返せば、ストレスを抱え過ぎないことが、免疫力を高めるこつなのです。

NK活性のためにすぐできること

年齢とともに活性が低下するNK細胞も、声を出して笑うだけで回復することが分かっています。

大声で笑うのに抵抗があるなら、クスクス笑いでも問題なし。

普段から、お笑い番組を見たり、落語を聞いたりして笑顔でいることを意識しましょう。

また、NK細胞は日中に活性化するので、昼夜逆転の生活や極端な夜更かしも厳禁。

最近では、乳酸菌が免疫に良い作用をもたらすことが分かっています。

仕事柄、生活が不規則になりがちな人は、乳酸菌飲料などを積極的に摂取するといいでしょう。

運動も大切ですが、大きな負荷とストレスがかかるハードな運動は逆効果です。

おすすめは、1日3000〜5000歩程度の適度なウオーキング。

森の中を歩く森林浴なら、リラックス効果やストレス解消も期待できます。

NK細胞は体を守るおまわりさん

体内をパトロールして異変(がん細胞やウイルス)を察知。早期に攻撃・排除します。

シニア世代こそストレスが大敵なワケ

NK活性を高める6つの習慣

その1. 能天気に構える
その2. 1日1回は「わはは」と笑う
その3. 家族や仲間を大事にする
その4. 夜更かしをしない
その5. 軽い運動をする
その6. 乳酸菌を摂取する

我慢しないで笑って過ごそう

ここまで述べたように、ストレスは免疫力低下の大きな原因となります。

とにかく、怒りや悲しみといった感情をため込むのは良くありません。

親しい友人や家族と愚痴や本音を言い合う時間も、NK活性のためには必要です。

気兼ねなく自分の気持ちを吐き出せる関係性を、身近な人と築いておきたいもの。

免疫力アップの観点からいえば、「いい人」でいようとあれこれ我慢するよりも、多少いい加減で能天気でいる方がちょうどいいのです。