訪れた国や地域90以上、海外への旅は233回。旅行作家の秋山秀一さんが、自身で撮影した写真とともに、世界の街を歩いた思い出をつづります。

旅行作家、元東京成徳大学教授、NHK文化センター講師。日本エッセイスト・クラブ常務理事、日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。『鎌ケ谷 まち歩きの楽しみ』『世界観光事情 まち歩きの楽しみ』『ウクライナとモルドバ』『旅にでる、エッセイを書く』など著書多数。鎌ケ谷市在住。鎌ケ谷市国際交流協会(KIFA)会長、鎌ケ谷市都市計画審議会会長。
公開 2025/10/25(最終更新 2025/10/03)
アウグスト強王の栄華が感じられる街
ドイツ東部の古都ドレスデンは、旧ザクセン王国の首都だった。
17世紀末に即位したフリードリヒ・アウグスト1世(アウグスト強王)の時代には芸術や文化の都として、ヨーロッパ全土にその名を轟かせていた。

エルベ川のほとりに立つ騎馬像、102mもの壁画「君主の行列」に登場するマイセン磁器で作られたタイル絵の騎馬像、今でもアウグスト強王の存在感には大きなものがある。



エルベ川左岸に広がる塔のある建物や宮殿のある旧市街を歩いていると、まるで中世の時代に迷い込んでしまったかのような気持ちになる。
しかし今この街で見られるこれらの建物の大部分は、第二次世界大戦末期の英米軍によって実施された大空襲により破壊され、戦後に再建されたものなのである。
ドレスデンの遺構 再建の歴史
ツヴィンガー宮殿は戦後間もなく再建され、その後ゼンパーオペラ、三位一体大聖堂(カトリック旧宮廷教会)などが再建された。



しかし、市の中心部にあって、ドイツ有数の規模のプロテスタント教会だったフラウエン教会の再建に着手したのは、東西ドイツ統一後の1994年5月になってからのこと。

11年の年月を経て完成した教会を外から見ると、外壁に使用された石の色に違いがあるのがわかる。

白い石の間に点在する黒い石は、破壊される前のオリジナルの石だ。
トラムに乗り、川辺のブリュールのテラスを歩き、180年以上にわたって運行している、世界最古の蒸気観光遊覧船にも乗った。





(文・写真/秋山秀一)