介護のきっかけにもなり得る膝の痛み。今からできる対策を一緒に考えてみませんか?
※この記事は船橋市立医療センター・船橋市西図書館共催による医療講座「膝と股関節の痛みと治療」(講師/同センター整形外科 矢野斉氏)を参考に作成しました。
公開 2026/01/02(最終更新 2025/12/22)
介護が始まる原因にもなる関節痛
65歳以上の人が自覚症状を持つ最も多い疾患は腰痛ですが、手足の関節痛も男性で4位、女性では2位となっており、無視できない存在です。(※1)
要支援・要介護の原因といえば骨折、転倒などが思い浮かびますが、関節疾患も10%程度を占めるといわれています。(※1)
膝の痛みの主な原因として挙げられるのが変形性膝関節症( 図1)。

これは加齢や長年の負荷によって、関節のクッション役である半月板が劣化し、軟骨がすり減ることで発症します。
日本人はO脚の人が多いため、特に内側の軟骨が摩耗しやすい傾向が。
軟骨には神経がないので初期段階では痛みを感じませんが、軟骨が完全にすり減ると骨同士が直接触れ合い、炎症を起こしたり、膝に水が溜まったりします。
日本には約2530万人の変形性膝関節症の患者がいると推計されますが、痛みを自覚しているのは3、4人に1人といわれています。
患者は女性に多く、40代〜50代から増加。
80歳以上では男性も半数以上が変形性膝関節症に該当するとされています。

保存療法と人工膝関節置換術
膝関節症の治療は、手術とそれ以外の治療(保存療法)に分類されます(表1)。
【表1】
■保存療法
体重管理
運動療法
•ウオーキングや、座った状態で膝を伸ばす運動も有効装具療法
装具療法
•サポーターで変形を矯正・膝を安定化
•O脚の人は外側を高くしたインソールを使用
投薬
•消炎鎮痛薬、外用薬(湿布、塗り薬)で症状を緩和
関節内注射(ヒアルロン酸・PRP療法)
•ヒアルロン酸…関節の潤滑を助け、摩耗した部分に油をさすイメージ
•PRP療法…血小板を濃縮して患部に注入。再生医療の一種で現時点では自由診療
■手術
人工膝関節置換術、骨切り術など
保存療法を試しても痛みが改善しない場合、人工膝関節置換術などの手術療法が選択肢となります(図2)。

保存療法では膝への負担を減らすための体重管理が基本。
最近の研究では、脂肪の組織から軟骨を傷める物質が分泌されているという報告もあります。
運動療法では大腿四頭筋(太ももの前面にある筋肉)を鍛えるのがお薦め。

周りの筋肉がしっかりしていれば、軟骨への負荷を減らすことができます。膝の安定性を補うサポーターやインソールを使用した装具療法、消炎鎮痛薬などの薬物療法も有効。
関節内注射はヒアルロン酸補充の他、自由診療のPRP(再生医療)療法も注目されています。
以前は人工関節の寿命は10〜15年とされていましたが、耐久性の向上により、現在は20〜30年持つケースがほとんど。
50〜60代で手術しても、一生そのまま過ごせる可能性が高くなっています。
日本での手術件数は年間10万件以上。
ロボット支援手術も普及してきており、より正確な手術が可能になりました。
※1…厚生労働省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況