街路樹や雑木林、畑と植生が多様な千葉県千葉市緑区。季節ごとに咲く花を⾒つめ、天気とミツバチの動向を読みながら、その年、その時期にしか採れない「花の蜜の個性」を⼤切に、 丁寧にはちみつを集めています。

公開 2026/03/17(最終更新 2026/03/09)

優

「ちいき新聞」で記事を書かせて頂ける幸運にとても感謝しています。取材で訪れた街でのカフェ巡りは私にとって楽しい至福の時間。プロフィールの写真は「南房総に咲く幸せを呼ぶ花」カレンデュラです。取材で一番好きな花に出会えたこと‥うれしいです。すべての記事に「ありがとう」の気持ちを込めて!

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きっかけはマーボー豆腐作りから

飯村養蜂 飯村養蜂の飯村和也さん
飯村養蜂の飯村和也さん

高校生の頃、テレビの情報番組で紹介されていた本格的なマーボー豆腐が食べたいという一念で、試行錯誤を繰り返したという飯村和也さん。

その結果、とてもおいしいマーボー豆腐が完成し、それをきっかけに料理への好奇心が広がっていきました。

今では書棚に、料理本が600冊以上。

特に魅力を感じているのが「郷土料理」です。

丁寧に手順を重ねることでありふれた素材でも深い味わいが生まれる、その料理工程が性格に合っていたといいます。

「ふなずし」では滋賀県の講習会に足を運び、「さばずし」に凝った時には新鮮なサバを仕入れに毎週市場に通ったそうです。

モットーは「ミツバチファースト」

飯村養蜂 約3年かけて選んだ、睦沢町と千葉市の養蜂場
約3年かけて選んだ、睦沢町と千葉市の養蜂場

大学卒業後は、IT企業に就職し、一人暮らしを始めます。

料理への好奇心は変わらず暮らしの中にあり、素材にも自然と目が向くように。

当時近所のスーパーで売られていた蜂蜜だけでは飽き足らなかったという飯村さん。

「蜂蜜って、もっとおいしいのでは?」と思うと、「探すより、自分で作った方が手っ取り早い」と養蜂を始めました。

「おいしさへの好奇心」を原動力に、興味を持ったら一直線に進みます。

飯村さんの養蜂家としてのモットーは「ミツバチファースト」。

ミツバチにとって最適な環境づくりを心がけているとのこと。

「蜂蜜はあくまでミツバチの食料」。

飯村さんが採蜜するのはミツバチが集め過ぎて余った分のみ。

採り過ぎてしまうとミツバチが飢えてしまうため、群れを大きくするのに必要な早春の蜜は採りません。

商品にする蜜の味わいや香りにもこだわり、季節ごとに花の咲くタイミングを見極めて、採蜜を行っています。

そうして出来上がる蜂蜜には、積み重ねた手間が表れています。

甘い蜂蜜が時間をかけて、優しいお酢へ変化

飯村養蜂 自家製の蜂蜜を発酵させて造る「はちみつのお酢」
自家製の蜂蜜を発酵させて造る「はちみつのお酢」

飯村さんの養蜂技術は年々向上し、蜂蜜の採蜜量は養蜂を始めた頃の10倍以上に。

この蜂蜜を生かす新たな挑戦として選んだのがお酢造りです。

県内の醸造所で研修を受け、「もろみ製造免許」を取得。

自家醸造ができるようになりました。

そうして誕生したのが、「はちみつのお酢」。

お酢に蜂蜜を混ぜたものと勘違いされることが多いですが、甘い蜂蜜を発酵させることでお酢そのものに変化させた商品です。

ただそれには、蜂蜜をアルコール発酵と酢酸発酵させる2段階の工程が必要となります。

飯村養蜂 試験管から酵母を少しずつ増やし、タンクでアルコール発酵へ。その後、酢酸発酵を経て澄んだお酢へと仕上げる
試験管から酵母を少しずつ増やし、タンクでアルコール発酵へ。その後、酢酸発酵を経て澄んだお酢へと仕上げる

お酢の醸造方法には、空気を強制的に送り込み、数日で発酵させる方法もありますが、飯村さんは2~4カ月かけて自然に発酵させ、醸造。

手間暇かけて造られた「はちみつのお酢」は甘酸っぱいおいしさが際立ちます。

ドレッシングやピクルスにぴったりで、豆乳に混ぜればとろりとしたスムージーの出来上がり。

炭酸やジュースで割るのもおすすめ。

お酢や蜂蜜好きな人、手間を惜しまない味わいを選ぶ人にぜひ贈りたい一品。

蜜源の花々の華やかな香りがいつもの朝を彩ります。

養蜂もお酢造りも自然相手で、思い通りにはいきません。

「逆に初めからうまくいき過ぎてしまうのはつまらないと思います」と飯村さん。

今はミツバチとの生活とお酢の醸造の試行錯誤が楽しくて仕方ないのだそうです。

飯村養蜂 工程の一つ一つを丁寧に説明してくれる飯村さん
工程の一つ一つを丁寧に説明してくれる飯村さん