JR我孫子駅南口、けやきプラザ2階にある、「ふれあいホール」。最大席数551にもなるこのホールは、コンサート、講演会、発表会、式典、上映会、スポーツイベントまでと、さまざまな催しが行われています。
基本は貸館業務のため、ホール側では音響や照明などのオペレーション(操作)はしませんが、利用者の多くは音響や照明など舞台についての知識はない、一般の人たち。そのため、フォローが必要になります。ここで以前、コンサートを開いた知人が、こんな言葉をくれました。
「あのホールは、スタッフさんが親身になって寄り添ってくれるんだ」
その後、私もこのホールで行われた上映会に携わることになり、その言葉の意味がよく分かりました。舞台の裏には、やさしく、そして確かな技術を持つプロたちがいました。
今回は年に一度の自主事業イベントの舞台裏にお邪魔し、普段の貸館業務では行わないようなオペレーション作業も見せていただきながら、音響映像担当の二上さんと、照明を担当する三枝さんにお話しを伺いました。

公開 2026/04/05(最終更新 2026/04/03)
野中真規子
人・土地・物語をつなぐ 文化プロデューサー/編集者 イベントやメディアなどのプロデュース、ディレクション、制作を行い、これまで1,500人以上の「豊かで楽しく生きる人」に取材。自己探究の過程で見えてきた、暮らしや意識が変わる瞬間について発信中。https://www.instagram.com/teganumakki/
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「音の良さ」に人生を動かされた——二上さん(音響映像)

松戸市に住む二上さんは、祖父が童謡『里の秋』の歌詞を手がけた斎藤信夫さんであったこともあり、幼い頃から家でレコードに親しんできました。音が、暮らしの中にずっとあったのです。
音響関係の仕事を志したきっかけは、中学2年のころでした。
「友人から借りたTM NETWORKの「キャロル」のCDの音の良さに、衝撃を受けたんです。その感覚が、今の仕事の基礎にもなっています」
高校では天文部でプラネタリウムの活動に関わり、ナレーション録りや効果音づくりも経験。短大卒業後は、音響効果の技術者を目指して専門学校へ進み、テレビ業界に就職しました。撮影後に音を整え、番組として放送できる状態に仕上げるMA(音のポストプロダクション)の仕事についたものの、当時は三日徹夜も珍しくないようなハードな現場で、体も心も壊しかけたといいます。
その後、イベント会社に転職し、モーターショーや東証の式典などの映像や照明も担当しますが、一方で、父の影響からシステムエンジニアになりたいという別の道もずっと心の中にあり、「チャレンジしてみたい」とシステム系の会社に転職。コピー取りからはじめて独学でプログラミングも習得しました。
結婚・出産を機に退職すると、子どもの幼稚園探しの過程で「本物の音を聴かせたい」と園内の音響にこだわる園長との出会いで、再び自分の原点を見つめ直します。
「その幼稚園で人形劇の音響を手伝ったことがきっかけで、音の仕事への情熱を再確認したんです。その後もアルバイトで披露宴の音響映像などをしましたが、コロナ禍で仕事が減り、全国的にもエンタメの催しが消えかける中で『今こそイベントをなくしちゃいけない』という思いにかられていました」

そんなとき、たまたま見ていた求人情報サイトで、ふれあいホールの求人を見つけました。
「高齢のベテランスタッフが退職するということで、何人かの募集がありました。実はもうその時、求人の締め切りは過ぎていたんです。でも幅広いステージが行われるふれあいホールでなら、自分のこれまでの音響映像やイベント、パソコンの扱いなど自分の経歴がすべて生かせるという確信があって『話だけでも聞いてください』とお願いし、面接していただきました」
そうして現在、ホールでの勤務4年目になる二上さんは「この仕事が自分の集大成」だといいます。いちばん大切にしているのは、出演者とお客さん、その間に立つことでした。
「音をスピーカーで拡声するのか、それとも生音を響かせたいのかでは、必要な知識も全く違います。「主催者や出演者との会話からどんな催し物を目指しているのかを感じ取り、可能な限り寄り添いたいです」と二上さん。
その技術は、主役をとことん引き立てるためにありました。
役者より裏方にやりがいを感じた——三枝さん(照明、他)

照明のほか、受付、事務も担当している三枝さんは柏市出身。
児童センター主催の子どもミュージカルに参加したことがきっかけで、舞台に興味を持ちました。
高校でも演劇部に入り、役者もしながら音響や照明も経験すると「自分の仕事一つで役者の魅力が何倍にもなる」という裏方の面白さに気づいたといいます。
「たとえば主人公が泣いているシーンで、悲しい音楽をベストなタイミングで入れたり、アンニュイなライトを入れることで、見ている人の悲しさが10倍ぐらい上がります。夕日がなくても夕日が見えたり、空が見えたりとか‥そういうところが面白いと思いました」
短大でも演劇や演出を学んだものの、その時は仕事にすることは難しいと判断し、20代は飲食や受付の仕事をしていました。
転機は、コロナ禍でエンタメのイベントが消えかけたときでした。
「これまで当たり前に、土日は必ずどこかでライブや舞台、イベントなどが開催されていたのが、急に何もなくなってしまったじゃないですか。私たちが楽しみにしていたことが全部なくなるんじゃないかっていう危機感を初めて覚えて、『エンタメの仕事がなくなる前に携わりたい』と思ったんです」

そしてコロナ禍が明ける頃、ちいき新聞でふれあいホールの求人情報を見つけ、すぐに応募しました。
「入社当初は照明の知識がほぼゼロ。退職間近のベテラン照明さんに基礎を叩き込まれました。照明は視覚情報なので、ごまかしが効かないんです。打ち合わせの時に、利用者さんから要望を聞き出して仕込みをしますね。たとえばピアノの鍵盤に影が落ちないよう光の角度を変えるとか、出演者の顔色がきれいに見えるようライトを調整したり。本番前に、調整室から何度も舞台を確認して、違和感やノイズのない照明を目指しています」
何より重視するのは安全でした。
「照明の吊り物は落ちれば命に関わります。だから操作はスタッフが行い、基本ホール側が責任を持つことにしています」。
舞台裏の緊張は、観客の安心のためにありました。
主婦だからこその柔軟性と、若い感覚が、ステージを作る

ふれあいホールのスタッフ13人のうち、3人が男性で、30代前半の三枝さん以外は全員家庭を持つ主婦だそうです。
「みんな対等な立場で話し合える雰囲気。それぞれが担当外の仕事についても把握しつつ、引き継ぎもきちんとしながら、うまく連携プレーができています」と三枝さん。
多彩なプログラムを行われるホールで、スタッフ側では毎回まったく違う準備が必要になるといいます。

「難しいけれど、だからこそやりがいがあって面白い」とも2人は口を揃えます。
「主婦ならではの、あるものでどうにかする力も役立っていると思います」と二上さん。
たとえば看板の高さを急きょ変えるとか、踊りの台を少し高くするなど、当日の“想定外”にもみんなで知恵を出し合いながら、柔軟に対応しているそうです。
若い三枝さんの感覚、流行りのエンタメ情報などを得ることが、ステージ作りに反映されることも。若い感覚とベテランの経験、主婦の柔軟さが混ざり合い、現場は回っていました。
最高のステージにするためのメッセージ

最後に、二人は同じ言葉をくれました。
「わからないことは、遠慮なく相談してくださいね」
「私たちは毎週でも、利用者の皆さんにとっては一度しかないステージ。その一回が最高な時間になるようにサポートしたいと思っています」と二上さん。
「リハーサルで希望を伝えるほど本番が良くなります。安全にも配慮してほしいですね。照明などの吊り物が動くときは下に入らないように。段差や階段に注意してください」(三枝さん)
この日も開演前、舞台袖では静かな準備が続いていました。
観客の拍手が響くそのとき、音と光を整えたやさしいプロたちの気配も、会場いっぱいに満ちていくのが感じられました。

ふれあいホール
住所/ 千葉県我孫子市本町3-1-2
開館時間 9:00〜21:30(予約受付は19:00まで)
休館日 月曜日(祝日の場合は火曜日)、年末年始(12月29日〜1月3日)、施設点検日
料金/内容により異なる
駐車場/あり(99台)
アクセス/JR我孫子駅南口より徒歩1分
電話番号/04-7165-2883
ホームページ/https://www.furepla.jp/hall/