
【習志野市】老舗酒屋「張替酒店」で軍の街・大久保の面影を見る。貴重な昭和初期の建築も見学!
かつて「騎兵の街」としてその名を響かせた千葉県習志野市大久保。
その歴史を今も感じられる老舗酒店があるのをご存じでしょうか?
創業115年の「張替酒店」には習志野騎兵隊の御用達だったことを物語る貴重な品が残っています。
今回は特別に、普段は見ることができない住居部分も見学してきました!
公開 2021/01/25(最終更新 2021/01/27)

明里
女子大生。レトロな商店街や遊廓史などに興味があり、千葉県を中心に日々各地を探索しています。ブログ「Deepランド」で地域の小さな歴史や建物などを紹介中。https://deepland.blog/
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初めまして、大学生の明里(あけさと)です。私は幼いころから歴史が好きでした。普段はカメラを持って街歩きをしながら、地域の魅力を見つけることが趣味です。よろしくお願いいたします!
さて、今回ご紹介する「張替酒店」があるのは、千葉県習志野市大久保。現在は大学や高校があり、学生の街として発展しています。メイン通りである京成大久保商店街から少し離れた東金街道沿いに、ひときわ目立つ木造2階建ての建築。
これが「張替酒店」の店舗です。
張替酒店は、明治38年(1905)に創業した酒屋。115年以上続く老舗です。現在の店舗は昭和6年(1931)に建てられたもので、まるでタイムスリップしたかのような懐かしい佇まいに惹かれます。
そんな張替酒店は軍の町・大久保の歴史を語る上で、欠かせない存在です。戦前、大久保の町には日本陸軍の関連施設が多数あり、明治34年(1901)には騎兵旅団が設置されました。
明治37年~38年の日露戦争では、日本騎兵の父として知られる秋山好古率いる習志野騎兵旅団が活躍。秋山好古は、司馬遼太郎の小説『坂の上の雲』の主人公の一人です。大久保の商店街には関連する碑も設置されています。
張替酒店を訪れた際は、ぜひ併せて立ち寄ってみてください。
日露戦争終結後に創業した張替酒店は、第二次世界大戦中に習志野騎兵隊の軍人との交流が深かったそうです。
習志野騎兵隊の最後の戦いは、昭和20年、太平洋戦争で激戦の舞台となった硫黄島。その死闘を指揮し、映画『硫黄島からの手紙』で渡辺謙さんが熱演したことでも知られる栗林忠道も、張替酒店を訪れています。
こちらはなんと栗林忠道直筆の掛け軸。店舗奥に今も残る和室でさまざまな人が酒を飲み、そのお礼として一筆残していったといいます。
習志野騎兵隊御用達のお店は、張替酒店をはじめとして時計屋、旅館などさまざまありました。しかし、現在も営業しているのは数えるほどに。
張替酒店は、掛け軸のほか、当時使われていた机なども残っており、大久保の歴史を間近で感じることができる貴重なお店なのです。
貴重な張替酒店の建物を特別に見学!
今回は特別に店舗だけでなく、現在は住居となっている奥の和室や洋風応接間、土蔵などを見学させていただきました。
普段は見ることができない、とても貴重な空間にテンションが上がります!
1. 和室
和室へと向かう廊下は、一枚の木でつくられている豪華なつくり。
庭を見渡すことができる8帖の和室へ案内していただきました。
和室には先ほど紹介した、栗林忠道の直筆の額が飾られています。
中には伊藤博文の直筆の掛け軸も…
刀を掛けるための鹿の置物にはびっくり。
貴重なお宝がたくさんで目が輝きます。
激動の時代を駆け抜けた人々の憩いの場であった張替酒店。指定文化財になってもおかしくないほどの貴重な建物です。これからも残って欲しい、往時を偲ばせるお部屋でした。
2. 洋風応接間
和室と店舗の間にある「洋風応接間」。応接間の外観は、とてもきれいに整備されており、当時の色を再現した赤と青の屋根が目立ちます。
千葉県でも数軒、洋風応接間が残っている場所がありますが建物の色がしっかりと残っている建物はあまり見たことがありません。
昭和初期に流行した「和洋折衷住宅」。和風住宅の一部に、洋風応接間を取り入れる中流家庭が多かったそうです。しかし、つくられたのは昭和30年代頃まで。現在もこうして残っている建物はとても貴重なものです。
丸い真珠のような照明も当時からのもの。以前は大人向けの麻雀をする部屋だったそうです。
3. 日本庭園
和室からの眺めも素晴らしい庭園には、かつては大きな池があったそうです。
第二次世界大戦中に、防空壕を築くために池は埋められてしまいましたが、現在も灯篭や築山などその名残を見ることができます。東日本大震災で灯篭が倒壊するなどの被害を受けながらも、昔と変わらぬ景色を見せてくれる庭園。特に秋の紅葉は美しいそうです。そんな庭園を眺めながら嗜むお酒は、さぞおいしかったことでしょう。
4. 土蔵
庭園の奥にあるのは2階建ての土蔵です。千葉県船橋市の成田街道沿い、薬円台宿の本陣に存在していた土蔵をこの場所に移築してきたものだそうです。
当時のまま残っている建物を維持するということはとても大変なことです。立派な土蔵造りの蔵から洋風応接間まで、きれいに保存されていてとても素晴らしいですね。
貴重な場所を見学させていただき、ありがとうございました。
古い魅力を生かした売り場の工夫
30年以上前までは、ごく一般的な酒屋として営業をしていたという張替酒店。しかし、このままではダメだと思った現在の4代目店主・張替正信さんが、心機一転、売り場や販売の仕方を変えたそうです。
その際に、あえて昭和初期の建築を生かした売り場を考え、歴史を感じる佇まいの酒の専門店に変化しました。
昔は樽で量り売りをしていたため、水を流すために床が斜めになっていたのだそう。そのつくりがそのまま残っているのは珍しいですね。
店内には、火鉢が置かれていて冬でも暖かく感じます。電気ストーブでは感じることができない温もりがあるような気がします。火鉢の暖かい炎を眺めているとなんだか心までポカポカしますね。
昔使われていた家財道具なども売り場に溶け込んでおり、古い物と新しい物が融合しています。そのため、どこか懐かしいのに新鮮さを感じるのかもしれません。
初心者の方でも気軽に立ち寄ることができる老舗酒屋
近隣の飲食店にもお酒を卸している張替酒店。新型コロナウイルスの影響で多くの飲食店が時短営業を余儀なくされているために、張替酒店も打撃は大きく、頭を悩ませているとのこと。
張替酒店に訪れる客のほとんどが、地元の方だそうです。通信販売などは行っておらず、店頭でのみ販売しています。現在は新型コロナウイルスの影響でお酒の試飲ができませんが、説明上手な店主が相談に乗ってくださるのでお酒に詳しくない方も安心です。
私は普段あまりお酒を飲まないので、そんな私にもおススメのお酒を伺ってみたところ、「あらごし みかん」(梅乃宿/720ml 1,540円)を勧められました。みかんの粒が入ったジュースのようなリキュールです。他にも日本酒から焼酎、ワインまで豊富にそろっています。
正直、今まで酒屋に入ることは身の丈に合わないと感じていました。しかし、張替酒店では店主手描きのPOPや、プレゼント用のラッピングも充実しています。そのため、張替酒店は若い人にとっても居心地がよく、買い物がしやすいお店だと感じました。
張替酒店では、創業115年を超える老舗にしか提供できない価値を大事にしています。過去にここでお酒を楽しんだ人たちに思いをはせながら、張替酒店で、おいしいお酒を探してみてはいかがでしょうか。
張替酒店
住所/千葉県習志野市大久保1-9-8
営業時間/9時30分~20時
定休日/火曜日
駐車場/店舗向かいに2台ほど
アクセス/京成大久保駅から徒歩10分
問い合わせ/ 047-472-0018