江戸から明治初期にかけて交通の要所だった船橋市本町界隈。
かつては宿場としてにぎわっていましたが、明治27年の鉄道開通で商店街へと変貌しました。
現在ビル群の中にありながら、明治・大正の建築当時の姿が感じられる3店を紹介します。
(取材/ショー)
船橋本町通りの歴史:中央図書館に写真展示あり
昭和30年代には宿場の名残がある商家が約200軒近く存在していましたが、その後多くの商店が耐火構造のビルになりました。
昭和30年代撮影の商家の写真76枚が船橋市中央図書館の3階展示コーナーに展示されています。
本町通りにある「明治天皇行在所跡」の石碑、案内板は、明治天皇が大和田原の近衛兵演習を統監した際、この地にあった桜屋という旅館に立ち寄ったことを示しています。
県内で最も多く訪れた場所だということです。
(掲載記事の一部は平成13年船橋市発行の「船橋市史」を参考にしています)
▲【船橋市の景観に対する取り組み】市では景観計画を平成22年に施行。景観法に基づいて景観上重要な建造物を指定し、良好な景観の形成に活かしています。
紹介する3店はいずれも江戸時代創業、店舗は明治~大正期の建築物です。
①つるや伊藤:手ぬぐいから舞台設備まで扱う船橋の老舗
▲住所/本町4-31-25(MAP)
安政元年に創業し166年。
現在の建物は江戸時代建築の平屋を大正期に2階を増築したもの。
江戸時代の染めの技法「注染本染め」を今に伝えています。
印染めを主として手拭い、祭り用品、山車幕、校旗、緞帳などを制作しており、ふなばしアンデルセン公園の手拭いが人気です。
祭礼で使う100~200年前の「のぼり」「山車の飾り幕」の復元新調も手掛けています。
▲注染本染めの江戸小紋、 柄物の手拭い。中央下は「ふなばしアンデルセン公園・花と緑の手拭い」
②森田呉服店:船橋本町通りにある明治5年建築の老舗
▲住所/本町4-35-14(MAP)
江戸時代末期、本町通りに面した場所で、本家から分家して創業しました。
今の建物は明治5年建築、外観も店内も明治の2階建て商家の様式が感じられます。
戦前はきもの全般を販売。
戦後、本町通りは大神宮参拝者でにぎわい、店は夜遅くまで営業していました。
現在は浴衣、手拭い、和装小物、バッグなどを販売していて、若い来店客も増えています。
▲森田呉服店の店内
③廣瀬直船堂:船橋市の景観重要建造物に指定されている老舗和菓子店
▲住所/本町3-6-1(MAP)
安政年間創業の和菓子店で、現在の店舗は大正7年建築の2階建て出し桁造り。
船橋市の「景観重要建造物」に指定されています(平成28年)。
江戸時代は「成田街道名所せんべい」が人気商品で、成田詣での旅人がよく立ち寄ったとのこと。
大正から昭和にかけては「真中まんじゅう」を売り出し、名物の土産としても買い求められました。
▲廣瀬直船堂店内。奥の店看板は明治期に使われていました