【佐倉市】国立歴史民俗博物館の特集展示「アイヌ文化へのまなざしーN・Gマンローの写真コレクションを中心にー」

スコットランド出身の医師N・G・マンロー(Neil Gordon Munro 1863-1942)が残した写真と映像をもとにアイヌ文化を紹介します。

歴博-①北海道沙流川アイヌ風俗写真「踊る人びとを撮影する映画カメラマン」
▲北海道沙流川アイヌ風俗写真「踊る人びとを撮影する映画カメラマン」 1930年 国立歴史民俗博物館蔵

公開 2021/03/04(最終更新 2021/03/12)

ちいき新聞ライター

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写真と映像で伝えるアイヌ文化

歴博-③北海道沙流川アイヌ風俗写真「ござ編みの様子」
▲北海道沙流川アイヌ風俗写真「ござ編みの様子」 1930年代 国立歴史民俗博物館蔵

展示されたアイヌの風俗写真は1930年代に北海道沙流郡平取町の二風谷で撮影されたものです。

写真に写る祭祀用道具や織物、狩猟具などの大きさや素材の質感が伝わるようにと展示された館蔵のアイヌ資料が、写真にリアリティーを与えます。

歴博-④北海道沙流川アイヌ風俗写真「ござ」
▲北海道沙流川アイヌ風俗写真「ござ」 1930年代 国立歴史民俗博物館蔵

展示室内ではマンローが編集した映画「The KAMUI IOMANDE(カムイ・イヨマンテ)」の短編映像も上映されています。

クマの魂を神の国に送る儀式「イヨマンテ」の撮影が行われたのは極寒の12月のこと。

屋内での撮影には採光のために屋根や壁の一部が取り外された撮影用家屋が使われました。

二風谷出身でアイヌ民族初の国会議員となった萱野茂氏はこの時のことを覚えていて「皆とても寒そうだった」と語ったといいます。

アイヌの人々と文化への理解を願う

歴博-②北海道沙流川アイヌ風俗写真「アットゥシ(樹皮製の織物)の様子」
▲北海道沙流川アイヌ風俗写真「アットゥシ(樹皮製の織物)の様子」 1930年代 国立歴史民俗博物館蔵

当時の欧米ではヨーロッパ人とアイヌ民族の先祖はつながりがあると考えられ、アイヌ文化への関心も高く、資料の収集も積極的に行われていました。

短期滞在で資料収集する研究手法が主流だった時代に、マンローは二風谷の住民として定住しながらアイヌ文化の研究を進めました。

歴博-⑤北海道沙流川アイヌ風俗写真「仕掛け弓」
▲北海道沙流川アイヌ風俗写真「仕掛け弓」 1930年代 国立歴史民俗博物館蔵

研究の傍ら無償で医療を提供したマンローが人々から感謝と尊敬の念をもって受け入れられたことは、二風谷に今も大切に保存されている旧マンロー邸が物語っています。

マンローは書簡の中で「カムイ・イヨマンテ」を作った目的は「教育映画として、人類学の専門家ではなく、むしろ一般の人々に儀式の背景にあるアイヌの精神などを伝えるため」だと述べています。

アイヌの人々と文化が正しく理解されることを願ったマンローの思いは、無声であるにもかかわらず、歌声や踏み鳴らす足音までもが伝わってくる、臨場感あふれる映像の中に生きています。(取材・執筆/明石鯛)

アイヌ文化へのまなざし-N・Gマンローの写真コレクションを中心に-

会期/~5月9日(日)

開館時間/午前9時30分~午後5時

※入館は閉館30分前まで

月曜休館(休日の場合は開館し、翌平日休館)

場所/国立歴史民俗博物館 第4展示室 特集展示室(佐倉市城内町117)

料金/一般600円、大学生250円、高校生以下無料
※総合展示も観覧可

問い合わせ/ 050-5541-8600 ハローダイヤル

HP/https://www.rekihaku.ac.jp