千葉県船橋市の北東部に位置する坪井地区。
大規模開発により住宅地へと整備されたこの地域に、かつて自然生息していたヘイケボタルを復活させる取り組みが進んでいます。

公開 2021/09/04(最終更新 2022/03/08)

薄闇の中を舞う小さくも力強い光
7月半ば、蒸し暑さの残る日没後、街灯の明かりがかろうじて届く薄暗闇の草の間に小さく見え隠れする光。
ゆったりと舞うように飛び交う光。
思わず歓声を上げました。
ヘイケボタルです。
印旛沼水系桑納川の支流・坪井川が流れ、かつては里山と湿地が広がる自然豊かな土地であった坪井。
平成の時代に入り、大規模で急速な住宅開発が進んだことによる環境変化の中で、多くの生き物や植物が減少したといいます。
中でも、絶滅の危機にひんしたのがヘイケボタルです。
「自分たちが住むことでホタルがすめなくなるのは申し訳ない」と話すのは、「坪井湿地を復活する会」の代表、江口章さん。
当時、未開発のまま残されていた同地区のはずれでわずかに自生するヘイケボタルを発見。
ホタル復活を目指して同会を設立し、成虫を採集、人工育成に取り組みました。
3年後の2014(平成26)年には、飼育した幼虫の一部を坪井湿地に放流。
以来、飼育と放流をくり返し、今年その活動は10周年を迎えます。

地域一体となってホタル復活を目指す
船橋市の協力の下、坪井近隣公園内に設置された坪井湿地。
ホタル育成や環境整備には、近隣の高校や大学からの指導を仰きます。
昨年と今年はコロナ禍のため中止となりましたが、講演会や幼虫の放流式、ホタル観賞会など、自治会や子ども会を中心に住民の参加機会をつくってきました。
自宅の水槽で幼虫を育成するホタルサポーターも常時募集中です。
「ホタルを通じて地域の交流を育めたら」と江口さんが話すように、ホタル復活はまさに地域ぐるみの活動となっています。
いずれは、坪井固有種のヘイケボタルが公園内の湿地などで自然発生することを目指して活動を続けていくと話す江口さん。
この新聞が配布される9月には、新しく幼虫が誕生し、湿地では草刈りや、ホタルのすむ水たまりの整備が行われる頃だといいます。
坪井の自然を守りホタルの光を後世に残していく取り組みに、今後も注目していきたいです。

つぼいホタルプロジェクト
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