市川市出身のバイオリニスト岡本誠司さんが2021年9 月、ドイツのARD ミュンヘン国際音楽コンクールで1位入賞を果たしました。
音楽の深い魅力を伝えるために活動し続ける岡本さんの原点と「これから」とは?
※オンライン取材写真以外、©Daniel Delang

公開 2021/11/23(最終更新 2022/02/28)

トムケ
市川市在住。音楽学修士号と学芸員資格保有。学生時代からちいきライターとしてお世話になっています。2008年からピアノ教室を主宰、オンラインレッスンにも対応中。入試時期はたまに小論文添削も引き受けています。note/https://note.com/u_tmk エムジック音楽教室/https://msikmusicclass.lsv.jp/
記事一覧へ弾き姿に魅せられて、楽器と出合い触れる

意外にも、岡本さんとバイオリンとの出合いは「音」ではありませんでした。
「友達が弾くまねをしているのを見て、直感的に『かっこいい!』と思いました。楽器を手にした時も、恥ずかしがりながらもうれしかったのを覚えています」。
音を出す、曲を弾きこなすといったことを楽しんでいましたが、上達すると立ち止まる時もあったそうです。
「練習が嫌だなと感じた時期は何度もありました。でもそのたびに、鍛錬を重ねて音楽を伝えたいという気持ちが勝ったので、今に至っています」。
音楽を好きでい続けられる環境への感謝を口にする岡本さんは、現在拠点としているドイツでもストイックに音楽表現を追求しています。
拠点のドイツからコロナ禍で描く今後
岡本さんが1位入賞を果たしたのは、世界的な演奏家の登竜門とされるARDミュンヘン国際音楽コンクール。
国際大会で結果を残すことはヨーロッパで活躍を続けるための大きな一歩ですが、現在は世界的なパンデミックにより、さまざまな制約を余儀なくされています。
「演奏会のオンライン配信など、広がった可能性は大事にしていきたいと思います。ただ、ヨーロッパと日本で演奏活動を展開していこうとすると、隔離期間の調整など課題も少なくありませんね。日本はホール環境が整っているので、来日できないことを残念がっている海外の演奏家も多いですよ」と岡本さん。
音楽の核を見据えて内省的な作家を思う
「音楽の核となる部分を見据えていきたい」と真摯な姿勢でバイオリンに向き合う岡本さん。
特に好きな作曲家として、自身の構築した精神世界をピアノ曲、歌曲、バイオリン曲などに反映させたロベルト・シューマンを挙げました。
好きな曲は?という質問には、かなり悩みながらも、弦楽合奏「メタモルフォーゼン」(1945)を選んでくれました。
リヒャルト・シュトラウスが自国ドイツの敗戦を悟りつつ作り上げた作品というチョイスに、音楽の「響きの奥」を見据える姿勢が浮かび上がります。