2021年12月に大手建設会社より無償で市原市に譲渡された海保大塚古墳。

市が誇る姉崎古墳群の一つとされ、今後の調査に注目が集まります。

公開 2022/02/07(最終更新 2022/02/02)

ちいき新聞ライター

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実は円墳だった!ミステリアスな古墳

古墳とは、3世紀から7世紀ごろまで盛んに造られた盛り土の墓で、その土地の有力者が埋葬されているという説が有力です。

市原市には、1000基を超える古墳が現存。

特にJR姉ヶ崎駅周辺は、推定全長130mの姉崎天神山古墳をはじめ数々の大型古墳が集まり、「姉崎古墳群」と呼ばれています。

その一角を占めるのが、今回大手建設会社から譲り受けた海保大塚古墳(市原市海保)。

「海保大塚古墳」六角形の謎多き古墳
きれいな六角形の海保大塚古墳(市埋蔵文化財調査センター提供・1989年撮影)

古墳時代前期から中期のものと推定され、直径は約60m、姉崎台地北東に位置する高台にあり、六角形という珍しい形をしているのが特徴です。

産業用地として同社が購入した土地の一部でしたが、数年にわたり調査した結果、歴史的価値が高いと判断され、市で所有することになったといいます。

古墳には、丸い円墳、鍵穴のような形をした前方後円墳、前方後方墳など、さまざまな形(墳形)があります。

しかし、海保大塚古墳のような六角形墳は極めて少ない。

「実は調査の結果、もともとは円墳だったことが分かりました。おそらく江戸時代の頃に人の手によって削られ、今のような形になったと推測しています」と話すのは、市原市役所生涯学習部ふるさと文化課の職員。

江戸時代当時は、出羽三山信仰の場として使われていた可能性が高いと続けます。

「海保大塚古墳」六角形の謎多き古墳
高台にあり、見晴らしの良さも魅力(市埋蔵文化財調査センター提供・1989年撮影)

身近な信仰の場としても機能

出羽三山とは、山形県の羽黒山・月山・湯殿山の総称で、全国的にも有名な山岳信仰の霊場。

千葉県は昔から出羽三山への信仰が厚く、中でも市原市には、現在も習わしや文化が色濃く残ります。

近隣の住民は、海保大塚古墳を、親しみを込めて「お山様」と呼んでいるそうです。

「信仰のしるしである梵天を立てる塚として利用されたのでしょう。しかし六角形の供養塚というのは、あまりないんです。まだまだ分からない点が多い遺物といえますね」と同職員。

また、姉崎古墳群の系譜をたどると、海保大塚古墳は釈迦山古墳(4世紀後半)と二子塚古墳(5世紀前葉)の間の時代に造られたと考えられます。

いずれも前方後円墳なのに、突如円墳が出現している点も興味深いです。

秋には歴史博物館の開館を控える市原市。

「かつて上総国の中心地として、多くの人・モノが集まった市原市。今回譲渡された海保大塚古墳をはじめ、市の歴史的魅力を発信することで、開館の機運を高めたいですね」と期待を込めます。

※問い合わせ

電話/ 0436-23-853

市原市役所生涯学習部ふるさと文化課